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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
北伊三州総督ユリウス・カエサル
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要塞都市、陥落

撤退するガリア軍、その間にもカエサルは次の手を打っていた。

敗走する敵本軍にどのような対応をするのだろうか?

プブルに大洋沿岸の部族の制圧を指示したカエサルは北ガリア連合軍に参加した各部族の制圧に乗り出した。

カエサルが真っ先に向かったのは総大将であるガルバのいるスエシオス族だった。

できるだけ時を置かずに北ガリアをまとめあげる力を持つガルバを抑えたかったのだ。


スエシオス族の軍勢は逃走するガリア軍の最後尾にありながら、数日の追撃を受けながら軍をまとめて都に戻ることが出来た。

ガルバはすぐにスエシオス族の長老達を召集して顛末を報告する。ローマ軍が来るまでにガルバを捕虜としてローマ軍に渡し降伏するか、戦うかを選ぶように頼んだ。

ガルバの疲れきった顔を見た長老達は、勇者であったとガルバを称えた。その上でスエシオス族の誇る要塞都市で雌雄を決しよう、と言った。

「ガルバ様、まだ我らにはこの要害の街がある。ローマ軍をここまでおびき出してこれたのは、ここで決戦をすべし、という精霊の思し召しだと思います。」

そのような長老の進言を耳にしてもガルバは首を縦に振らなかった。

「わしゃあ敗軍の将だきぃ、もう兵を率いるこたあできん。」

ガルバはそういって長老達の慰めも受け入れず降伏をしようとしたが、オーベルニュの若き偉丈夫、ヴェルチンが長老たちの支援に動いた。

「ガルバ王は悪くねえ。他の部族の者達がローマ軍をちょいと攻めあぐねて、へドゥイ族に自分達の町を裏から襲われたから逃げ出しただけだ。後2日も戦い続けていたら勝利していた。」

ガルバを正面に見ながらそう言った。

「兵力も戦闘力も全ての面において、ローマ軍を凌駕していたんだ。」

そのオーベルニュの若者の雄々しさに力強さは長老たちをローマにも勝てると思わせる気持ちにさせた。

こうして長老達はガルバに、徹底抗戦をすべき、と進言した。

そこまで言われてガルバは、目を閉じて、わかった、と言った。

残ったすべての覇気を持ってローマを撃つと誓う。

スエシオス族の兵士たちはガルバの前で喜びを見せた。


それでも一部でガルバの無責任を攻める声もあった。そのためガルバは城に鎮座して、迎撃の将軍にはスエシオス族の中からガルバと勢力を争っていた名門で、身分も高く体格に恵まれて賢さを持ち合わせた若者スベラニが選ばれた。そこまで決まるとすぐにローマの軍勢を迎え撃つことに集中することになった。

ガルバは町の中にドシンと構えて、若く闊達なリーダーが前線に立つことで気持ちを切り替えることに成功したスエシオス族の軍勢はローマに相対することに着手する。

「ローマ軍が来たぞ。」

翌日にはローマ軍が追撃してきたことが情報として手に入る。さらにローマ軍は降伏勧告の使者を送ってきた。


城塞都市に入り、迎撃体制を整えることに成功したスエシオス族はすぐに追いかけてきたローマ軍に降伏することは選ばなかった。

スベラニはローマ軍の使者を貶して見せ、さら使者が戻るときには矢を打って威嚇をして見せた。この行為にスエシオス族の兵士達のモチベーションは高まる。

ローマ軍の使者は、怒りを圧し殺してカエサルに自分がやられたことを正確に伝えた。


地の利はスエシオス族のほうにある。

しかもローマ軍は全軍が追いかけてきたわけではなかった。逃げて再編したスエシオス族と同じかそれよりも少なく見えた。

城塞都市に閉じこもり背後から責めれば、数日もすれば敗走する。

ガルバのやり方は古い。あいつはこの戦いが終わったら失脚するしかない。俺が新しい時代のスエシオス族の王になってやる。スエシオス族だけではない、ガルバと同じく近隣の逃げ帰った部族の長を廃して俺と志を共にする若者を支援して新しいガリアを作るんだ。そう考えていた若きリーダーは鼻息も荒く仲間達に呼び掛けた。

「ローマ軍をここで一掃する。それからすぐに反撃だ。ガリア軍の力を、知恵を見せつけてやろう。」

勢いの上がるスエシオス族の軍。兵士たちは勢いのある指揮官の言葉を歓迎した。

やはりガルバは古い時代の王であった。

新しい時代は俺と共にある。

身体中にやる気が漲ってきていた。


だが、その気持ちも長くは続かなかった。


城壁からローマ軍が陣を作り上げるのを呑気に見ていたはずの兵士達が、ざわめき出した。若きリーダー、スベオニははじめ、兵士達がふざけあっているのだろう、と思っていた。しかし、そのうちざわめきが大きくなり、兵士達の一部が恐れるような動きを見せ、逃げ回り出したところで城壁の縁に走って登った。

「なんだあれは?」

「壁だ。ローマ軍が動く壁を作り出した。」兵士の叫び声が聞こえる。

「何をバカな。」

そういって城壁を見たスベオニはローマ軍の陣を見て目を見開いた。

「なんだあれは?」

この城壁と同じほどの高さの壁が迫ってきていた。さらに地上には、スエシオス族の自慢の要塞を叩き壊そうとするローマの兵器達が要塞の前の広大な台地を埋め尽くすようにどんどん作られていくのが見えた。

「なんだ、これは?」

スベオニの知識にない巨大な兵器がどんどんとローマ人の手によって作られていく。

そして自分の方に向かって要塞に並ぶほどに巨大な塔がスベオニの前に向かってきた。

そして塔はさらに高さを増してそこから鎧をまとった兵士たちがさらに見たこともないような巨大な弓を準備し出した。

逃げる場所がない!

「スベオニ様、やつらは悪魔の兵器を持ち出したに違いねえ。」

側近の声が聞こえた。

ローマ軍がこの都市に到着してまだ1日も経っていないのに、このような巨大な兵器を持ち込むとは。

要塞都市は瞬く間に攻めいられてしまう。

今度こそスエシオス族はローマに蹂躙される。

そう思ったスベオニが回りを見るとその時にはスエシオス族の兵士たちは狂乱の域に達して逃げ回っていた。

一人残されたスベオニも慌てて塔をかけ降りてガルバの元に向かった。

「ローマ兵達が瞬く間に塔を作って我らの街を包囲してきた。駄目だ、あんなやつらと戦えねえ。」

腰砕けになったスエシオス族の若きリーダーは戦意を喪失してガルバにしがみつく。

「見てみい、やつらは俺らの城壁を越えるもんを作りあげてる!」

「ローマの技術を軽く見ようたからじゃ。」

それだけ言うとやる気を失ったガスベオニをけり飛ばして長老たちを集めた。

「もうわかったろう、ローマには勝てん。兵士の質よりも兵器を使った戦いでは太刀打ちできん。」

長老たちもローマの巨大兵器の話を実際に見て絶望していた。

「降伏じゃ。」

「ガルバ!まだ諦めるには早いだろう。」

そう言ったのは客として受け入れてもらっていたヴェルチンだった。偉丈夫は立ち上がりすぐにガルバの近くに来ていう。

「森だ。森で野戦になればローマ軍は兵器が使えねえ。敵は消耗するはずだ。」

「若いの、そりゃあお前がやればええ。都市まで誘い込んで要塞を盾に戦うつもりが、要塞を破壊されそうじゃけんってえ住民はどうするんじゃ?」

「住民はも散り散りに逃げればいいだろ。」

「さして勝うて、人のおらんな街に戻ってくるゆうんか?」

ガルバはヴェルチンの回答を待つ。だが、回答はなく固まったままのオーベルニュの若者に対して小さな声で言った。

「わしらのスエシオス族の戦いはここでしまいじゃ。若いリーダーも戦意を喪失しておる。外の若者たちもおなじじゃろう。」

先程のガルバの言葉に返せずとも気概を失わずヴェルチンは唾を吐くように言い返した。

「情けねえこと言うんじゃねえ。ローマのやつらにどこまででかい顔をさせるんだ!」

ガルバの腕にしがみついた若者をガルバは弾き飛ばして言った。

「北ガリアじゃあだめじゃった。スエシオス族の王として、ローマ側に使者を出し降伏するように伝えよ。」

気がつけば周りのすべての者がガルバとヴェルチンを見ている。

「それからスベオニ、兵たちに降伏することをガルバが決定したことを伝ええ。ローマ軍が来る前にわけえ衆をまとめい。ローマの兵士らあに醜態をさらすんじゃなあ。」

そう言うとスベラニは頷いて若者たちを連れて外に向かった。

「ローマが略奪するかもしれん。隠せるものは隠し、出してかまわんもんは献上しよう。」

そう言われて多くの長老たちも動き出した。

ガルバの側にいるものが減ったところでオーベルニュの若者の頭を叩く。

若者は、苛立ちガマガエルのような男の身体に向き合って相手の眼を睨み付けた。

「ふっふ、まだ闘志を失うておらんな。ヴェルチン、おめえがそれでもローマに頭をさげとうないなら、オーベルニュに戻りゃあええ。オーベルニュをまとめて、ガリアをまとめるんじゃ。全ガリアじゃったらローマ軍に勝てるかもしれん。それはお前の自由じゃ。だが、今はこここら去りゃあええ。」

ガルバはそう言うと向きを変えて残った側仕えの者に指示を出してローマ軍を迎え入れる準備を始める。ヴェルチンは一人とり残され、ガルバの背中をじっと見ていた。


北ガリアをまとめていたスエシオス族、そして王であるガルバを抑えたカエサル。

ガルバはそれでもオーベルニュの若者にガリアの未来を託していた。

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