表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
北伊三州総督ユリウス・カエサル
72/78

アクソナの要塞とカエサルの判断

アクソナ川で、ついにローマ軍と北ガリアの連合軍が激突した。

30万以上もの大連合軍はローマ軍を粉砕しようと一挙に攻勢にでた。

ローマの兵士たちは、静かにガリアの津波のように押し寄せる大軍を見ていた。

カエサルから各軍団長に話のあった内容は、各軍団で上層部から一般の兵士に徐々に伝わっていった。

説明を受けたやり方で戦えば勝てる。

そう思える兵士たちもいれば、そう思えない兵士たちもいた。

だが、カエサルが考えを整理して全部隊に共有したため、兵士たちからは信頼をする、と言う声が大きくなっていた。

カエサル自身がすでにガリア軍に大きな勝利をしていることも要因のひとつだが、兵士たちを信頼しようとする行動が兵士たちの心を捉えていた。

それでも、カエサルから直接に話を聞いていた将校たちでさえ机上の空論になるのでは?と思えるほど台地を覆いつくすように迫ってくるガリアの軍勢の迫力を見て、焦りを感じていた。

それくらいガルバは短い時間で軍勢の流れを統制してきて、かつ勢いがあった。


遠くに見えていた敵を視界にいれるとローマ軍は前進を止めて少しだけ後退する。それを大きく飲み込むように早くなったガリア軍の勢いのついた一群がローマ軍と完全にぶつかる。

そして周りを囲うようにガリア軍の全軍がローマ軍を飲み込んでいく。


そうなるはずだった。


しかし、実際にはガリア軍はローマ軍と対峙しつつ敵を押し込むこともできず囲いこむこともできずにいた。

「ローマのちびどもを蹴散らせ。」

「ローマ軍を潰せ。ガリアから追い出せ。」

叫び声、怒号が響き渡るが、ガリア軍は戦いはじめた時からローマ軍に対して全く優位に立ててはいなかった。

大軍を擁して動けなくなっていたガルバが前線が何とか見えるまで近づけた頃にはガリアの連合軍は順番にローマ軍と戦い、その都度蹴散らされてきていた。勇猛なガリアの底力を発揮することなく打ちのめされることが何度も起きていた。

「なぜじゃあ?」

ガルバも、他民族の首領たちも納得できなかった。

ガルバがガリア軍の勢いを削がずに、少しだけ制御することで連合軍は統制をとってローマ軍に襲い掛かった。

誰もがそう思っていた。

だが事実として少数のはずのローマ軍を囲いこむことができずに、ガリア軍は逐次投入した兵力でローマ軍を襲うことだけしかできていなかった。


ガリア軍とローマ軍がぶつかりあい、激しく戦いがはじまった。大軍を持っての戦争なので動きに問題が生じることは想像されていた。

そして、ローマ軍を囲いこめないでいるガリアの大軍は、それでもローマ軍を相手にしっかりと戦いをしつづけていた。

同じ勢いでぶつかれば兵力が多いほうが勝つ。

兵力においては圧倒的なのはガリア軍である。ローマ軍が最大で5万程度に対して30万を越えたガリアの血気盛んな兵士達が押し寄せているのだ。

このまま押し続けても、ローマ軍は最後には疲れ切る。疲れきって腕も上がらなくなったローマ軍を背後に控えたガルバの部隊が襲いかかれば、兵力は消耗するがローマ軍は壊滅的な打撃を受ける。

属州総督はローマに戻され、元老院に言い訳をしなければならなくなるだろう。総督が口にするのはガリアの野蛮で未知なる力だ。そうするとローマは次に兵を寄越すことさえ二の足を踏むにちがいない。

そう思ったガルバは、遠目に少しずつローマ軍を消耗させていることを確認すると戦力の逐次投入を続けることを決めた。その一方でローマ軍を包囲できない状況を確認するようにした。


「ローマ軍は川沿いの要塞から、杭を打ち付けており、戦場を回り込めないようにしているようです。」

ある程度戦ってわかったのは、ローマ軍はこざかしいことに要塞の遥か手前からガリア軍が取り囲めないように、場所によっては高低差を利用し、場所によっては川沿いの浅瀬から陸に至るまで低い壁のように見える柵を打っている、とのことだった。

ガリア軍が全軍をあげてローマ軍を包囲できないよう柵を土の深いところまで打ち込んでおり、簡単に引き抜くこともできず、軍を持って抜こうとするとローマ軍が襲いかかってくるという寸法だった。

何度かのチャレンジでローマの狙いははっきりしていた。

このわかりずらい柵を使ってガリア軍を分断しながら叩き続けるのだ。

「耐ええや、ガリアの兵士たちよ。敵の策はわかっちょう。我らは力で敵をねじ伏せからな。せめつづけるよう。余った兵の一軍はローマの要塞を裏から攻めれえ。」

そうガルバが言ったことでガリア軍の士気は大きく上がった。

5倍以上の兵力があるのだ。さらにローマの要塞を別動隊が攻めれば必ずうまく行くはずだ。

「しゃあ川を渡りい、要塞を裏から攻めえ。」

ガルバの選択は間違えていなかった。しかし、その行動もカエサルは読んでいた。


夜になってもガリア軍は交代でローマ軍を攻め続けた。

川を渡って反対側から要塞を攻める手を打ったガリア軍だったが、その動きは完全に読まれており、要塞と要塞の奥に隠れたローマの別動隊によって挟まれて壊滅的な打撃を受けて敗退した。


背後からの強襲に失敗したガルバは、正面作戦のみに集中することにする。

正面からぶつかり合ったガリア軍とローマ軍だったが、当初は互角に動いてた戦場だったが、少しずつローマ軍は後退し始める。

それでもローマ軍は粘りを見せて、両軍の戦いはその後膠着していった。

ガリア軍は、このまま行けば勝てる。

ローマは何もすることができない。その思いが強くなっていた。


総兵力の圧倒的な差でもカエサルは全く慌てていなかった。

どのように戦力を使い分けるのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ