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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
北伊三州総督ユリウス・カエサル
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アクソナ川の戦い

アクソナ川を面して北ガリアの連合軍と対峙したローマ軍。

戦うしかない状態だが、敵はローマ軍の6倍の大軍。

カエサルはどのように対峙するのだろうか?

澄んだ青空が広がる。

深い森のなかを通る大きな河を渡った先に、簡易的に作った砦は気が付けば立派な要塞となっていた。

だが、その要塞に閉じこもるのではなく越えてカエサルは陣を構えた。

自陣で司令官たちを集めて総司令官は笑いながら

「ガリア中でも最強と言われる北ガリアの兵士たちの実力を見てみよう。哨戒部隊で戦って見たところ、敵は皆も知っているとおり、でかくて大きく早い。しかし、勇敢な仲間たちは十分に戦える、と報告してきた。だから今度はより大きな規模で戦ってどの程度戦えるのか試したい。我こそはという部隊があるかな?」

珍しくカエサルが皆の意見を求める。

すぐに何人もの軍団司令官が手を上げた。

「皆ありがとう。しかし、今回は規模を拡大した中隊レベルで敵の実力を測ってみたいんだ。」

「であれば我が軍団の中からベテランを行かせるのでお任せ下さい。」そう言ったのはラビエヌスだった。同じ年齢の副司令官は、カエサルの意図をしっかりと汲み取って手を上げた。

「よし、任せよう。」

カエサルはそれ以上細かな指示は出さなかった。他の軍団長は反応が遅れたことを残念に思い、しかし全面的な戦いが近いとしてすぐに戦える準備をし始めた。


ラビエヌスは総司令官の信頼に確実に答えてみせた。

突然攻めてきたローマ軍に対してガリア軍もすぐに応戦してみせる。ラビエヌスが敵の数を見ながら交代で中隊を繰り出して、ガリア軍を押しのけようとする。だがガリア軍も勢いがあり、小規模なローマ軍の意図をつかみ切れないなりに善戦していた。

その様子を遠くから見ながらラビエヌスはガリア軍の実力をしっかりと測っていた。そしてカエサル自身は互角に戦えることをさっと確認すると城塞を作り上げた部隊に、細やかな注文を付けながら更なる仕事を指示した。



「川沿いの砦から打って出る。」

様子見の戦いでガリア軍と十分戦えるとみたカエサルはせっかく作った川沿いの砦から打って出て30万の敵と相対する道を選んだ。

「もちろん敵は大規模だ。我らより遥かに多い兵力を誇る。5倍はいる。だが、その敵が一辺に襲いかかってくれば苦戦もするだろうが、バラバラと攻めて来るなら戦いようもある。その内容を君たちに説明しよう。」

そう言ってカエサルは軍団長たちに説明をはじめた。

軍団長たちは説明前、大いに迷いが見られたが、カエサルの説明が終わると皆、総司令官が勝てる、と判断した理由までをしっかりと理解して迷いのない顔つきになっていた。そしてそれぞれの役割をこなすべく準備にむかっていった。

「よし、全軍団それぞれの役割を果たしてくれ。行こう。」

全員が気持ちを一つにしてガリア軍に対峙する準備を開始した。



「ローマ軍が打って出てきた?」

ガリア軍の各部族に伝達が届いた。

伝達が届くと各部族の部隊を率いる者たちは考えた。

要塞に籠られると厄介だが、自分達から要塞を捨ててせめて来るとは・・・。


勝てる。

各部族のまとめ役である将軍たちと共にその周りの者たちも、多くのガリアの将兵たちはそう思った。

あの強固な要塞に閉じこもっていればこそ、ローマ軍に手を出し損ねていたのだ。

それが勝手にでてきてくれたのだ、ガリアの軍勢は敵を打つべく部族ごとに準備を始めた。


「良くねえ。ローマに連られえ動くのは良くねえよ。」

勇猛で名を響かせた北ガリア連合軍のとりまとめ役であり、総大将を務めるガルバはそう言って各部族に持ち場に戻るようにすぐに伝令を飛ばした。

しかし、敵が攻めづらい要塞から打って出るという暴挙に出たのだ。

誰もガルバの言葉を真に受け止めはしなかった。

「そりゃあそうな、ローマ軍が自滅したようにしかみえん。これがその通りであることを祈るか、ローマ側の罠かもしれん。があそれをうちやぶりゃええんじゃ。こっちゃが組織だってローマを打つ兵たちをもってるけえな。」

バラバラと動く他部族を尻目にガルバも自分の部族に急いで準備をするように指示を出した。

一人、その様子を見ていたのはオーベルニュの若者だった。

「敵は5万程度、半分にも満たない。しかも勇猛なるガリアの戦士でもない。蹴散らしてやる、なんて思ってたらゲルマニアの二の舞を演じることになる。」

冷たくガマガエルを想像させる総大将に良い放った。

「若僧がっ。」

ガルバは若者を睨んで言った。

「オーベルニュ族はガリアの戦いを高みの見物か?」と嘲笑う。

「北ガリアの勇猛なる戦士たちの戦いを見せて貰うつもりだ。もちろんローマを倒すために戦士とし剣を振るうさ。」

「上等じゃあ。わしが真のガリアの戦士をみせたらあ。」

ニヤリと笑ってオーベルニュ族の若者の肩を叩くと、そのガマガエルのような横に大きな身体を信じられない速さで動かして木の幹のような大剣を持ち上げると兵士たちを大声で呼びつけた。

「ガリアが真にまとまりきりゃあ敵などおらん、な。」そうオーベルニュの若者に言ってからくるりと向きを変えて兵士たちを鼓舞した。言い聞かされたオーベルニュの若者は、自分の部族、そしてローマに媚びへつらうへドゥイ族の欲まみれの族長の顔を思い出して眼を閉じた。そうだ、ガマガエルのような男の言うとおり、オーベルニュとへドゥイが立てば、ローマ軍はここに立っていることすら出来なかったのだ。

自分の部族の不明を悔しく思いながら、若者は先に行く男を必死に追いかけた。


ガリア軍はばらばらに準備をはじめたとはいえ、情報を得た時点から動き出した時間が同じく、さらにガルバの特徴的な声と存在感は各部族を越えて統制されはじめた。結果としてしっかりと規律を保って兵たちはローマ軍に向かって動くことができた。

視界の果てまで広がり、台地を揺るがすかのような咆哮をあげながら北ガリア連合軍は規律を保ちつつローマ軍と野戦を開始しようと全面に広がりながら台地を埋め尽くすように向かって行った。


ローマ軍が要塞を超えて出てきたことを知ったガリア軍は受けて立つことになった。

ガルバの指揮で体勢を整えつつあるガリアの大軍をカエサルはどのようにむかえうつのであろうか?

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