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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
北伊三州総督ユリウス・カエサル
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戦争への準備

ローマ軍、ガリア軍ともに戦端を開く準備を開始していた。

カエサルに街を守るための遊撃を任された任された傭兵たちは十分に役割を果たし、後にカエサルから多くの報奨を得た。

活躍した者は誰であれ素直に、より前を向けるように褒め、報奨を弾むのはカエサルの長所でもあった。

さらにカエサルは傭兵団には前に出ずに休養を取るように促したが、2人の傭兵団の長は戦いで活躍の場を貰えるようカエサルに頼み込んだ。

「我らを呼んで使わないなんて、無駄金使いも良いところだ。ぜひぜひ使ってくだされ。」

「我らの力をカエサルはご存知だろう。敵は大軍。こんなときこそ我らよりの力を必要としているはずだ。何より、大軍を倒す楽しみを分けて欲しい。」

2人の反応に笑顔をみせる。

「そこまで言うなら君たちの活躍の場を作ろう。大言を吐いたからには、騎馬が疲れきるまで、投げる武器がなくなるまで働いて貰うおう。」

カエサルは傭兵団たちの気持ちを歓迎した。

素直に喜びを見せられて2人の勇猛な団長は更なる活躍を見せるとカエサルに誓った。



ガルバ率いる北ガリアの連合軍の本隊は街を襲った別動隊が撤退したことを聞いて、残念に思うもガリア軍の本質は野戦であるとして全体に激を飛ばした。

「要塞都市であったろうが、十分な大軍をむこわせて、落とせないとは。」

「ローマ軍が支援に来たそうな。」

「というちゅうても、少数なんだろが。」

「正規軍ですらなかったゆう話もあるで。」

「どういうこった?」

「ローマの傭兵団が支援に回っただけ。現にローマの旗はほぼ見当たらん。」

首脳たちに焦りが走る。ローマの本隊ですらない部隊にガリア連合軍は攻めあぐねていたのか、という疑問が涌いてくる。

連合軍の仕入れた断片的な情報が、彼ら自身の戦意を喪失させつつあった。

ガマガエルのような体躯の大男は、両手を叩きながら、まとまりを欠きつつあった同胞たちをなだめた。

「街を守る小手先の技にゃあローマがうえだっつうこったな。じゃあけど、野戦でぶつかったあ小手先の技は通じん。ガリアの力を見せたろう。」

この言葉で少し気落ち気味だったガリア軍の闘志に火がつく。

「ガルバ殿のいう通り、小せえ戦いの結果を気にしていても仕方ねえだろう。なあ。」

「よおし!今度こそやったろう。」

「森や原っぱでぇ、敵の策をくだいてやあ。」

北ガリアの緒部族の者達はその声に力を感じて呼応した。ガリアの男たちの叫びが森林にまで響き渡った。


森に響き渡るガリア軍の叫び声が深い森のなかを響き渡り、ローマの新しい兵士たちは気圧され気味になっていた。

そんな中でもローマ軍はベテランを中心に淡々と食事の準備をして休息をとり、総督にして総司令官の戦いの合図だけを待っていた。


その総督は自分の軍勢を見て回った後で自分の天幕に戻った。

しっかりと兵士たちが総督の天幕を守っていたが、夜になってそこには何人かの者が訪れた。


それから翌日からローマ軍は慌ただしく動き出す。

森林を跨ぐ大河を一軍が渡りきり、すかさず陣地を作り始めた。

半日が過ぎる頃にはしっかりとした土台が渡河した先に出来ており、さらにガリア人からすると要塞と言って良い形に整い始めた。

工兵部隊を中心にされた軍団を率いるのは、軍団長サビウス。丸い身体をしており俊敏には見えないが汗水たらして働く実直なところと見た目は柔和であるが、経験豊富で戦場や指揮経験も豊富で工兵部隊の扱いも手慣れたものだった。しっかりと休むところは休ませて効率的に仕事を進めさせていった。


サビウスの指揮と工兵部隊の手際の良さ、それ以外の物資の送付も優れていたためガリア側の哨戒兵たちが気づいた時にはすでに川の手前に要塞がある程度出来てしまっていた。

ガリアの兵士たちは、突如自分たちの近く側に要塞が出来上がっていたのを見て、慌てて本隊のガルバに報告を行う。

浮き足立ったガリア軍が川縁の要塞に突撃してきた。ガルバが自制を促したが、焦りを感じた一部の部隊が突撃を開始した。

しかし、すでに迎撃の準備が出来ていたローマ軍は簡単に敵を撃退する。

こうして川向こうでガリア連合軍の本隊と川縁の要塞に籠ったローマ軍が対峙することになった。


「これで戦いの準備は整った。相手が蛮勇だけを誇るのであれば我らは要塞を守り切ることで勝てるな。」サビウスから報告を受けたカエサルは自分でも川の中ほどまで進み状況を見て笑って言った。

「もし、相手が攻めてこなかったらどうなるんでしょうか?」

「もちろんそれなら要塞に籠っていれば怪我もしないし領土も守れるね。」

カエサルは質問してきたアントニウスにそう言った。

アントニウスにとって戦いは重要なもので、剣をぶつけ合って雌雄を決するべきものなのだろう。


だが、

私は違う。


カエサルは口にはしないがそう思った。

勝てばいい。

いや、その戦士的な考えを首を振って否定した。

ガリア人がローマの覇権を認めざるを得ない状態にすればいい。

戦いでも、弁舌でもなんでもいいのだ。


だが、そう思うカエサルの気持ちを汲み取れる将校は周りにはいなかった。

皆が戦えば勝ち続けるカエサルの戦略と戦術に全面的に信頼を置きつつあることについて、少し寂しい気持ちになっていた。


カエサルは一人、目の前の戦いではなく、先のことを見据えて動き続けていた。

だが、そんななかでも目の前の戦いをさけることはできない状況にあった。

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