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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
北伊三州総督ユリウス・カエサル
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北部ガリアの集結、そして

北部ガリアが反ローマにたった。

ガリアの軍勢は兵をまとめ始めて攻撃準備をしだしていた。

スエシオス族の族長「大ガマのガルバ」の声がけにより、北部ガリアに住む多くの民族が同調した。

「まわりんもんは、みな支配がきらいと思うとうたが、そのとおりじゃったんのう。」

そう笑みを浮かべたガルバを見て、見目麗しいオーベルニュの若き偉丈夫ヴェルチンは圧倒的な兵たちの数に驚きを隠せなかった。

目の前にはすでに何万もの兵たちが集まってきている。

「すげえ、ガルバ殿、これだけもの兵力があればローマ軍を撃退できるでしょう!」

自分が前に傭兵で加わったゲルマン軍のさらに上をいく兵力である。

各民族ごとに分かれているが、ガリアの総力をあげればこれはゲルマン以上の力になる。ヴェルチンはそう思った。


現時点での総兵力は30万人を越えると見られている。数字の苦手なガルバの代わりに側近がまとめた数字であるがそれでもカエサルが去年撃退したゲルマニアの軍隊の倍に及んだ。

大兵力を持つことになったガルバはガマガエルの顔を笑顔で緩めながら、大軍隊を揃える。それからブザンソンに連絡を取り、ローマ軍を供に撃退しようと秘密裏に連絡をした。ガリア全土に張り巡らされた森林を神と精霊を奉るドルイド達もガルバに正義があるとした。


ドルイドはガリアの森林信仰の象徴的な存在であり、各部族、民族の決定にも大きな影響力を及ぼしていた。今まで大きな方向性を示すことはなかったのだが、今回はっきりとガルバを支持した。

これによって反ローマに主要な部族だけでもが12もの部族が賛同をする。皆、ゲルマニアの敗北とブザンソンにローマ軍がとどまっていることに危機感を抱いてきていた。多くの勇敢な部族が我先にと集まってきた。そしてさらに多くの兵力が合流する見込みとなる。

「40万人越えるかもなあ。四方向からローマ軍を一斉に攻めえばひとたまりもなきよ。」

「南の腰抜けたちと俺らを同じようにかんがえてもらっちゃあ困るわな。」

「チビのローマ人たちなんぞ斧で全員吹き飛ばしたろ。」

勇猛な戦士達は集い、雄叫びをあげ、これから行われるローマとの戦いに吠えた。

集まった族長クラスの者達は笑いながら酒を汲み交わす。


一人、ヴェルチンは不安を感じてもいた。

北部ガリアの勇猛な戦士たちが集まったのだ。ゲルマン人を超える大軍で。

さしものローマ軍も太刀打ちできないだろう。

そう思っていたが、眼をつぶると思い出させるのは、あのローマの司令官の姿だった。

ガイウス・ユリウス・カエサル。

細身で俺の剣の一振りで倒すことができそうな男だった。

ガルバがやってもおなじだろう。

だが、体躯でガリア人に勝るゲルマン人たちが大挙して攻め入った時だって同じだった。

嫌な予感がする。

やつには何かあるのではないか。


この不安はどこから来るのだろう。

不安を抱えている間に、ガリアの仲間たちがすでにローマ軍を駆逐した気分で酔っ払っているのが聞こえてきた。

「ローマ軍なんぞ、簡単につぶしてやる。」

「このまま勢いに乗って南下して、ローマの街を襲い掛かるのもありだな。」

「ああ、弱い軍隊に守られているつもりのやつらからうばってやろうぜ。」

ローマ軍を甘く見るな、ゲルマニアの軍隊も十分に勇猛だったが1日で敗北したのだ。そう言いたそうにしていたヴェルチンだった。

おかしい。なぜ俺がローマの肩を持つんだ?

自分でもわからない気持ちに駆られて、ヴェルチンはもっと強い酒を飲むことにした。

軍勢を整えている間、族長たちからも、オーベルニュの若頭として少し下に見られ続けていたちめ、腰抜けと言われたくなく心に思いを秘めながら日々を過ごした。共に過ごす勇猛な北部の男たちに混じることでその心配ごとも吹き飛び、ローマ軍を駆逐することを信じるようになっていた

部族長達の気持ちが高まってきているところに早馬が駆けてきた。

「レミ族はローマの友となった。」



レミ族の長、ユグニは勇敢で才覚もある中部ガリアでも有力な族長だった。

「なぜだ?」

短い疑問には、いくつものクエスチョンがあった。ガルバに呼応して反ローマに立とうと部族のもの達に兵を集めさせ、決起集会をしようとしたその時、レミ族の都市の回りをローマの軍勢が見たこともない兵器を持ち囲い、自分の前にローマ総督ユリウス・カエサルを名乗る者が立っていたのだ。

痩身の総督はいかにも親しげな様子で笑顔でユグニの前に現れた。

「やあ、ユグニ、久しぶりだね。会えて嬉しいよ。」

「こちらこそカエサル様。お元気そうで何よりです。」親密そうに近づいてくる総督は一見害が無さそうだがユグニには彼の放つ圧倒的なオーラが見えていた。同じほどのオーラを持っていたのはローマの生ける軍神と言われるポンペイオスだけだった。だが、ポンペイオスと違いカエサルのオーラは優しく暖かかった。

ゲルマニアの軍を撃退するためにローマに頭を下げてお願いした一人がユグニだった。共倒れしてくれればと思った総督は何倍もの敵を蹴散らして笑顔で帰ってきたのだ。

この男には敵わない。

ユグニはそう思った。

集められた兵士たちにどのような演説をするのかカエサルは大胆にも横に立って聞いていた。

カエサルには敵わないと思ったユグニは我らは北の馬鹿で野蛮な者たちとは違う。ローマの友となりガリアにその存在感を示すのだ、と言い放った。

カエサルは笑顔でユグニの演説を聞いていた。

まばらな拍手が上がったが中部ガリアでも有数の有力部族は首根っこを捕まれた感じでローマとカエサルに尽くすことを誓った。

カエサルとローマ軍団はそれを歓迎する。


すでに、北部ガリアの反ローマを知っていたカエサルは先手を打って

レミ族の動きを止めた。

だが、レミ族をとめても大軍を擁するガリアにどのように対応するのだろうか?

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