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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
北伊三州総督ユリウス・カエサル
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アオスタの街

アオスタの町に到着したカエサルたちだったが、町に入ることができずに苦労することになった。

「前はこれで通してもらっていました。これ以上はご勘弁ください。」

門番に頭を下げて頼み込むビチウだった。

数人いる門番の中で一番体格もよく大きな髭を蓄えたリーダー格の門番が、ビチウの細い身体の前にきて、頭を下げた商人の頭を押し返して

「そりゃあできん。お前さんの言い分はまかりとおらんわ。」と威圧するように言う。ビチウが後ろに押し返されて周りの行商の一団がざわめいた。

「ですが」さらに言い寄るビチウだったが、リーダー格の門番は、首を左右に振って聞く耳を持たない。だが、リーダー格の門番が特別な要求をしている風もなく、門番たち全体が納得している風だった。

ビチウは金貨2枚、最悪でも3枚はあるかもと思っていたが、それでは足りなそうである。さらに話し合いで調整できそうな相手でもないのだ。

ざわめき、隊商が動かないことで、ビチウに交渉を任せていたカエサルたちも門番とビチウのところに来る。

門番の中のリーダー格の大きな髭面を蓄えた男は、増えたギャラリーに向かってしかめ面をして見せて、

「こんだけの運搬量だ、金貨10枚にはなんだろ。」と言ってみせた。

「金貨10枚?」ビチウの顔が蒼くなった。

そんな金を今すぐに出せるはずもない。積み荷を少しわたすべきか。蒼くなりながら商人は必死にこの場を抜ける方法を考える。

「早くせえ。出せんならひきかえしてもらってもかまわんのだぞ。」髭面の門番が圧力をかけてきた。

青ざめた商人のところに、フートで頭を覆った痩身の商人仲間が近づいてきてビチウの前で門番に意見をした。

「門番殿、はじめまして。この商人の連れです。よろしく。だが、あまり旅の商人を急かしてはいけない。以前は金貨1枚だったというじゃないか。いきなり10枚となると商人殿も困るものさ。」

「ふん、仕方ねえもんは仕方ねえさ。」と言い返してきた。

「そこだよ、門番殿。あなたは優れた戦士でもあるように見える。そんな門番殿が一商人を迷わすような高い交通量をもとめるってのはどういうわけだい。」痩身の商人仲間は、軽い感じで体格の良い門番に聞き返した。

門番は難しそうな顔をして返事をする。

「そりゃ言えねえ。」

「うーん、だけど、理由が明白なら我々も仕方なくとも出すことを工面できるかもしれない。だけど理由がないと我々商人だって素直に金を出すのは難しいですよ。ここは隊長さんに男気を見せてくれてもいいんじゃないだろうか?もちろん、私と商人殿だけの心に閉まっておくさ。」

その後も説得が続き、髭面の門番は、痩身の商人の言葉についつい流されてしまった。

「おりゃあ、高い税を取るのは良くないとおもうんじゃけど、上からの命令だけん。」

「それじゃあ理由もなしに値上げをしてるわけですか?」と痩身の商人が聞き返した。

「偉い人の考えることはようわからん。じゃが、わしが感じるだけなんじゃが、この交易路を偉い人たちはあまり活用したくないらしい。」

「ガリアとローマを結ぶ重要な交易路なのに?」と痩身の商人が門番に聞き返した。

どうもこの商人に言われると、答えるしかない感じになり門番もやりづらそうである。そんなやりとりをビチウはハラハラしながら横で聞いていた。

「その辺の事情はわからんが、交易路を貧乏人に使用させないようにしているように感じとる。じゃから通行料も値上げをするように指示が出たんじゃ。」

「ところで指示を出した偉い人って誰かご存じですかね?」

「街の徴税役人であるべセル様っていう人なんじゃ。4年位前にべセル様になってからどんどん通行人が減ってきてはいるんじゃ。」

「はあ、しかし不思議ですね。交易の街であるアオスタの街で交易をさせにくくするとそりゃ街の景気もどんどん悪くなるでしょうに。」と呆けた感じで質問をする。

「わしもそう思うんよ。じゃが命令にしたがわにゃあ、わしも子供がおる身じゃけえ、首になるわけにはいかん。」

現実を見て働く門番に同情したくなった。ほかに仕事も多くはなさそうなアオスタの町で交易路を守る門番をやっているのだ。ほかに代わる仕事はなかなかないだろう。

痩身の商人は門番の気持ちを理解して、回答した。

「わかりました。我々、門番の方の苦労も理解できたので、金10枚分を工面いたしましょう。」

そう言ってビチウと実際の支払いについての話をした。結局ビチウが5枚、カエサルが5枚を出すことで決着した。


髭面の門番長は金貨10枚を受け取って、

「すまねえなあ。あんたらの旅がうまくいってよい商いができることを祈っておるよ。」と言った。

溜息をついて、なんとか高い交通料を払わせることができて安心したのだろう。

こうしてアオスタの街に入ることができた。



隊商はアオスタの街に入り、宿で休みを取る。宿も人影はほぼおらずまばらだった。町が交易で成り立っているだけに、交易が少ないと干からびる。久しぶりに来た大荷物の商人に街は歓迎ムードになり、宿の主人は大きな隊商の宿泊に大喜びで宿と食事の準備をしてくれた。

そこで主人の準備した豪華な夕食をいただきながら、カエサルたちはアオスタの街の状況についてより詳しく知ることができた。

宿の主人によると、徴税役人のべセルがアオスタの街を管理するようになり、通行税だけが大きく値上がりしたとのこと。その結果、アオスタを通り抜ける人たちが減り、交易で成り立っている街の人たちは一人、また一人とアオスタを後にしていき出しているという。

ある程度飲み食いをしたところで先行きに不安があるビチウたちが部屋に戻り、最後はカエサルとその関係者たちだけで飲むことになった。

「しかし、本当にわけがわかりませんね。交易の通行税を増やしたら交易の街が廃れるのは想像できそうなもんですけど。」と酒を口にしながらダインが言った。

「そうですね。他の狙いがあると見ていいでしょうね。」と言ったのはジジだった。

「私もそう考えている。そんなに複雑なからくりでもないだろうからこれを機にいろんな問題を解決できるかもしれないね。」と笑いながら言った。

何か主人が考えるところがあることを理解したダインとジジは頷いて後は酒を飲むことを楽しんだ。

その後部屋に戻りながらカエサルはザハに街に残って調査をするように指示した。


無事アオスタの町に入ったカエサルたちは一時の休息をとる。

そしてその間もアオスタのg行政が不敗していることを感じたカエサルはザハに内定を依頼した。

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