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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
北伊三州総督ユリウス・カエサル
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対ゲルマニア戦後処理

アリオヴィストスの軍隊を撃退するこに成功したカエサルは次を見据えて動き出した。

ゲルマニア王アリオヴィストス敗れる


この報告は、驚きを持ってガリアの諸部族、ゲルマニアの諸部族、ローマ、そして、アルメニアなどに至る近隣の全ての部族、国々に波のように伝わっていった。

アリオヴィストス自身が自分の強大さを見せつけようとさまざまな近隣諸国、諸民族に外交的な展開をして来たことが仇となった。


ゲルマニアのアリオヴィストスの勢いは止められない


それがゲルマン人もガリア人も思っていたことだった。そのため、ゲルマン人に近い距離のガリア人であるセクアニ族たちは危機感とともにあきらめに近い心境もあった。

ゲルマン人の多くの部族は、アリオヴィストスの力を信じて早くに集結してその一翼を担い自分たちの利益を得ようという動きが加速していたところだった。

だれもが、ゲルマニア、ガリアにまたがる巨大な征服国家ができるのではないか、と考えていた。


そのアリオヴィストスの敗北で、ゲルマン人のうちでこれからアリオヴィストスに合流する予定だった諸部族はライン川を渡る前で引き返していった。

一部の部族はアリオヴィストスの敗北が信じられない、という気持ちであり、もう一つはローマがそこまで強大な兵力を持っていたのか、という驚きだった。

人口が増加しつつあったゲルマニアにおいて、新たなる土地を求めてガリアへの侵略は、諸部族にとっても期待が大きかったが、半分にも満たない兵力でアリオヴィストスの軍を破ったカエサル率いるローマ軍に脅威を感じたのだ。

多くの者が家族を連れてガリアへの侵略を夢見ていた。

実際、アリオヴィストスの妻や子供は1人だけ生きて奴隷になったが後は全て殺されていた。

ゲルマン人は略奪にあわせて家族を率いるのが常だったが、家族が殺され、奴隷になる可能性があるような危険な侵攻はできない、と反対も強くなった。


総司令官の天幕で、左右に側仕えを置いた簡素な状態で、司令官は前をしっかりと見ながら質問した。

「君がアリオヴィストスの娘、アリアで間違えていないかな?」

強く責めるわけでもなく、痩身の総司令官は、すらっとした背のある淡い髪の少女を見る。

「そうよ。ゲルマニアの王アリオヴィストスの娘アリアよ。ローマ人。」痩身の総司令官を値踏みするように見て言った。

カエサルはローマ人にしては長身だったがゲルマン人のアリアと目の高さがちょうど会う位置になる。

少女の瞳を見つめながら、

「そうか、これからの君の処遇について話をしておこう。君は奴隷として捕まった。そこで私の優秀な部下が君の存在を私に教えてくれたんだ。」

「ゲルマニアの人たちの不利になるようならここで死んでやるわ。」睨みつけながらアリアは総司令官に対して吐き出すように言った。その両手はダインに完全に押さえつけられている。

「君の知るアリオヴィストスと王国はすでに散っていった。君には帰る場所はない。」

「そんことはない。」

「多くの人が亡くなった。これもアリオヴィストスが引かなかったからだ。」

「ローマが、あなたが父の行動を妨げたのが原因でしょ!?」怒りを込めてアリアが叫ぶ。

「君の父アリオヴィストスは、私に依頼をして「ローマの友」という名称をもらいたいと依頼してきた。その際、どれだけローマの友となることでどれだけゲルマニアがローマの助けとなるか、を提示した。だが、名称をもらうと態度を翻しローマの支配権が及ぶガリアに手を出したことが悪いんだ。」

痩身の総司令官は悲しそうな顔をしてアリアを見る。だが少女は以前としてローマの総司令官を厳しく見て言う。

「だってガリアはローマの支配権じゃないでしょ?」

「ガリアは、ローマの許可を持って自由な土地になっているだけでローマの監視下になってすでに50年が経過している。」

「そんなことはない。父はゲルマニアもガリアも強い者がとる、と言っていたわ。」

そう反論した大人になりつつある少女を見てカエサルは笑って、

「強い者がとる、ということであれば今回の戦闘の結果でも、過去の経緯からも、ローマが支配権を持つ、ということで良いね。」と言った。

それに対してアリオヴィストスの娘は返す言葉を持たなかった。

「それから、君自身の身の振り方だが、どうしたいかい?」決着のついた話を置いて、切り替えてカエサルは彼女自身について質問した。

「私に選択権なんてないわ。」

「いや、もし君が私に忠誠を誓うのであれば、私の専属奴隷にならないかい?」

「は?」

「君がゲルマン人の女性にしては若く知識深く、さまざまなものに興味を持っていることは知っている。だからそれを私の下で生かしてみないか、と言っているんだ。」

「わた、私が、家族を、仲間を殺したあなたに従えというの?」

「アリオヴィストスは死んではいない。彼は逃亡したんだ。妻や子を捨てて逃げ出した男だ。それでも父のために生きるというのかい?」

「父を裏切ることはできないです。」

「だが、君が私の側に仕えていればアリオヴィストスの動向なども知れるかもしれない。少なくとも他で奴隷になるよりも百倍ましだろう。」

沈黙が流れる。

「少しだけ時間をください。」

それだけ返事をしたアリアは、ダインに連れられて簡易の牢に閉じ込められた。


アリアと話をしたカエサルのところにプブリヌスとバルブスもかけよってきた。

「あの子がかわいいのはわかりますが、カエサル。あなたならローマに戻れでいくらでも女性がいるでしょうに?」

と下衆な勘ぐりをしてきた2人の反応を笑いながら、

「ゲルマンのことを良く知る秘書も欲しかったんだ。女性だからってわけじゃないさ。」

「はいはい。わかっております。」とビブルスが笑って総司令官の反論を無視してプブリヌスは困った顔をした。

「本当だよ。彼女は美人だし、これからもっと美人になるだろうけど、だから私に付け、と言ったんじゃないんだよ。」

「まあまあ、カエサル。あなたがどんな女性を侍らせようと誰も気にしませんよ。」と笑いながらダインがフォローする。

「それはフォローでもなんでもないよ。」と言ってあきらめ口調になった。

「アリアが美人ってのは間違いがない。だがゲルマニアの文化とローマの文化の違いを一緒に話せる相手が欲しかったのが本音だよ。」

その後もカエサルがアリアを奴隷にしようとした理由について主従での言い合いは繰り返されていった。


数日後、カエサルの部下であったビブルスはローマにもどっていくことが決まる。ローマのカエサル家とポンペイオス、クラッススとの連絡役などを務めることになる。

そしてプブリヌス、ダイン、ジジとあわせて総司令官の身の回りの世話をする奴隷としてアリアが仕えることが決定した。

アリオヴィストスの娘アリアを奴隷兼側仕えとしたカエサル。

次は何をしていくのだろうか?

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