表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
北伊三州総督ユリウス・カエサル
54/68

オクセンフェルトの戦い

アリオヴィストスとの話し合いは、物別れに終わった。

互いにそうなるだろうと予想していた通りに。

力こそが、互いの主張を進める時がきた。

すでに戦争を見越して陣を築いていたカエサルは不慣れな騎兵をやった第10軍団の兵士たちと急いで陣に戻った。

第10軍団の兵士たちは自分たちが近衛兵であり騎兵としてカエサルの護衛をしたことを心の底から誇り、カエサルに感謝と完全なる忠誠、そしてさらなる武勲を示すことを約束した。

痩身の総司令官は、心底嬉しそうに笑顔を見せて彼らの言葉を受け止める。

「戦友諸君の剣と私の指揮でゲルマン人を蹴散らせてみせよう。」

その言葉でまた第10軍団の兵士たちは気持ちを燃え上がらせた。


その話はローマの全軍団に伝わり、第10軍団以外のすべての軍団が嫉妬とやる気を漲らせて、アリオヴィストスたちゲルマン軍の攻撃を迎え撃つ準備を行った。

しかし、アリオヴィストスも大したものでローマ軍の迎撃が予想されるところを避けながら騎兵による奇襲を行ってきた。

カエサルは「やるな、アリオヴィストスめ。」と思ったが、口にはせず、余裕の表情を浮かべる。

「もっと蛮勇を持って攻めてくると思ったんですけどね。」とは一緒に歩いたジジだった。

「ゲルマンの多くの部族を力で抑えているから、いろいろと戦い方を持っているのだろう。だが、ゲルマンには私がいないから勝ち続けられたんだ、ということを教えてあげなければね。」と余裕を見せる。

カエサルは兵士たちに、

「恐れ知らずの大きなゲルマン人は、我らの結束を前に臆しているようだ。」と笑ってみせると、周りの兵士たちも気持ちが大きくなり総司令官と共に笑った。

「だが、こういった戦いでは仕掛けるタイミングも大切だ。君たちが勇敢に戦ってくれることは知っている。だが私からの指示を忍耐強く待っていてくれ。」と笑っていうと周りの兵士たちは笑顔を見せながら、眼は真剣に頷いていた。


一方のアリオヴィストスは味方の前で豪気さを見せながら笑って、

「カエサルめ、予想通り陣を作って我々を迎え撃とうとしていた。準備万端というわけだな。」

と言い、ゲルマン諸部族の族長たちに敵が手ごわい可能性を示す。

だが、引き締めた空気をすぐに緩めて豪快に笑いながら、すぐ近くの族長の肩を叩き言った。

「ローマ軍が作る、子供の遊びのような柵で我らの進軍を止められるはずもない。しかし、奴らの戦い安い場所で戦うなどはせぬ。ガリア全土を、そしてローマもこれを機に蹂躙してくれよう。先は長い。慌てる必要はないさ。」と言い、カエサルがおびき寄せて反撃しようとする陣地に突撃したり、不用意な攻撃は控えるように指示した。

血気盛んなゲルマン人の兵士たちもその指示に従い、積極的な攻勢はかけなかった。

それは、ゲルマン人の多くがアリオヴィストスの力を認め、恐れている証拠でもあった。


結局、両軍は騎兵による様子見を行い、たまに騎兵同士が近づきすぎて小さな斬りあいが発生する程度で留まり数日が経過した。

「カエサル、陣で待っていますが敵は来ません。こちらから敵をおびき出すためにより深く敵を叩きましょう。」

カエサルは敵を誘うための遊軍的な視察を何度も出したが、予想外にアリオヴィストスとゲルマン軍は軍を出して応戦はするものの、全軍をあげて追撃してローマ軍を襲うようなことはしてこなかった。

敵を吊り出せないでいるままで兵士たちのやる気がなくなることを懸念したカエサルは数日の小競り合いを経て、カエサル軍はゲルマン人達とも渡り合える、ということを兵士たちが感じていることも確認していた。

カエサルは同じ世代の信頼できる副官の提言を受け入れて、陣から出て敵兵を攻めることを決定する。


翌日朝、ローマ軍は強固に築いた陣を打って出て、合戦に討ってでる。

全軍団が並列に並び、規則正しく進んでいく。

痩身の総司令官は、ローマ兵たちがやる気をさらに高めるために策を講じる。

「第10軍団のように、私はゲルマン人に対峙するお前たちの忠誠心、奮闘ぶりを目に焼き付けると約束しよう。そして私の眼が届かない状態になっても、軍団長が私の代わりに君たちの活躍を見て、私に報告をくれるだろう。さあ、第10軍団に続く、栄誉を受けるのは誰だ?」

そう言って全軍団の軍団長にも自分の部隊をよく見て誰が活躍しているかを見つけろ、と指示した。

その一方でプブル率いる騎兵隊には、予備兵力として後ろに詰めさせて、状況に応じて味方の支援をするように指示した。


ローマ軍が全軍で動いたとの報を受けてゲルマン軍も動き出し、両軍は森の間の広くなっている草原で対峙することになった。ローマ軍は少し高いところからはじめは早く動いていたが徐々にスピードを落として気持ち高くなっている場所でゲルマン軍とほぼ並列の形でぶつかりあった。

数の上で圧倒的なゲルマン人はさらに、正面からの当たりに強い集合隊形でローマ軍に激突してきた。平原の中でも少し高い位置からローマ軍はその突撃を正面から受け止める。

互いの叫び声と剣や盾で斬りあう声が広くなっている平原全体に響き渡る。

ローマ軍は崩されそうなところは他の隊が補佐することで、ゲルマン人の最初の突撃を抑えこんだ。だが、効果的な攻撃を与えきれずにいた。


一進一退の攻防が続く中で、戦況を見つめていたカエサルは、さらに兵士たちに近寄りやる気を出させ、傭兵隊を支援に送り込む采配をする。

ローマ軍の兵士たちの一人一人が死に物狂いで戦い続けたことで、場所によってローマ軍がゲルマン人を圧倒しはじめた。少し押し込み始めたことでローマ軍に勇気とさらなるやる気が漲った。勝てる。

そう思ったところで、敵の後ろから、大声で叫びながら襲い掛かってくる新たな敵の大軍がローマの兵士たちの目に入ってきた。


カエサルの戦略で敵を押し始めたローマ軍だったが、敵の増援が現われた。

ローマ軍はどう戦っていくのだろうか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ