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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
北伊三州総督ユリウス・カエサル
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ブザンソン、セクアニ族

カエサルはローマ軍の士気が下がっていることを理解しながら、セクアニ族の都、ブザンソンに向かった。そこには何が待っているのだろうか。

セクアニ族の族長は驚きを隠せないでいた。

しかし、ローマの最高司令官カエサルは目の前で笑顔を見せている。

「どうした、族長。ビブラクテで会ってから日も経っていないが私を忘れたのかい?」

そう言って笑顔をみせるカエサルに対して、うやうやしく頭を下げながら取り繕った声を絞り出す。

「いえ、よくぞブザンソンまで来られましたローマのカエサル。歓迎いたします。ゲルマン人とのやりとりで何か進展があったのでしょうか?」

「あった。」ぶっきらぼうに痩身の指揮官は言った。

痩身の司令官の表情から何も読み取れず、族長はさらに質問をする。

「ほう、それは良い方向にでしょうかな?」

「そうだね。」ふたたび一言ですませた。

セクアニ族の族長はローマの陽気な最高司令官の意図を全く図ることができずにいた。困った表情で慈悲を乞う。

「どのような状態でしょうか。私どももできる限りの手助けをしたいと思っておりますが。」

「もちろんセクアニ族の支援を期待しているよ。今はゲルマン人たちと交渉をしている。とりあえずは我らの食糧と休憩場所の確保をお願いしたい。」

「かしこまりました。お安い御用でございます。」

こうしてカエサルとローマ軍はセクアニ族の都ブザンソンを制圧するように囲い、堂々と陣を構えた。


数日の休憩の間に族長は部族の会議にカエサルを招待した。

カエサルは軍団長たちを引き連れて参加し、現状を部族の会議の前で説明した。

「ゲルマン人たちとはまだ話をしているところだが彼らは引き下がろうとしていない。さらに悪いことにゲルマニアから大軍がこちらに向かってくる可能性が高い。その数30万と予想される。」

「なんと、30万ですか。」

「そうだ、だが皆さん、安心してほしい、我がローマ軍がセクアニ族を守り通してみせましょう。」

「ははあ、ありがとうございます。」族長はそう答えた。周りの者たちはうなって聞いている。

「だた、そのためにもセクアニ族の皆さんには引き続き食糧の確保を何卒お願いします。」

そう言って族長を見て言った。

「かしこまりました。」恭しく族長は頭を下げた。

そこに一人のセクアニ族の将軍らしき大男がカエサルに質問をした。

「我らはゲルマン人に対抗するためにローマ軍に加わりましょうか?」

「いや、大丈夫です。」

「カエサル殿、無理をなさらないで良い。ゲルマン人は我ら以上に大きな身体をしている。彼らからするとローマ軍など子供のようなものだ。必要とあれば我らセクアニ族が助けることができます。ぜひお声がけください。」セクアニ族の将軍は自分たちが守られていることが気に食わないのだろう。ゲルマン人に同調する感じもない。それは悪いことではないな、とカエサルは思ってうなずいた。

「わかりました。その時はぜひ力をお借りしましょう。ですが将軍、初戦は我らローマ軍でのみ戦いたいと思います。万が一負けた時にこのブザンソンに敵が来ないよう将軍の兵士たちにも戦える準備をお願いできますか。」と答えた。

「なるほど。わかりました。我ら後ろでローマ軍の皆さんが心置きなく戦えるように準備しましょう。よろしいかな、族長?」

族長は将軍の真っすぐな眼とその後ろからカエサルが自分を見ていることに気が付いた。

そして、焦る気持ちをおいて、

「もちろんだとも。素晴らしい考えだ。」と言った。

将軍は素直に自分たちも対ゲルマン人の戦いの役割を得たことを喜び、族長とカエサルに礼を言ったところで会議は終了となった。


「ブザンソンに来るまで強行軍で来る必要はなかったんじゃないですか?」と会議が終了してカエサルのために準備された天幕のなかで、ダインが寛いでいる風の主人に質問をした。横にいたプブルも興味深く耳を傾けた。

だが痩身の総司令官は、セクアニ族から準備された葡萄酒を口にしながら、

「いや、もう少し遅かったらアリオヴィストスと敵の軍勢がこのブザンソンでセクアニ族と合流してしまっていただろう。そうすると士気も高くゲルマンの大軍とセクアニ族が合流しそのうえで強固な防御拠点でもあり交通の要衝をゲルマン人側に明け渡すことになっていただろう。そうなるとさすがに私も苦戦しただろうからね。無駄な戦闘をしないためにも強行軍は重要だったんだよ。」

「なるほど。」と主人の意見に納得した。他の者たちもその言葉を聞き、強行軍でブザンソンに着た理由に納得し、セクアニ族の離反を防げたことにほっとした。

「ダインたちも見ただろう、到着した時の族長の驚いた顔を。」

「ええ、びっくりしてましたね。あれだけ表情に出るとわかりやすい。」と言って笑う。

「彼はローマ側に付かざるを得なくなったわけだ。」と言ってカエサルも笑った。

「速攻の妙ですね。感服しました。」とプブルが関心しながら言った。

「あとは部族会議の時に素直にローマ軍に助力を申し出てきた将軍がいたな。セクアニ族も一枚岩ではないようだということがわかった。彼の功名心をうまく利用したつもりだが、彼が兵士たちを準備して対ゲルマン人のためにブザンソンにいることでセクアニ族全体を抑えることができるだろう。」

「確かに、セクアニ族がいつ離反するか怪しかったですが、今後は族長とは別に将軍にも情報を流して周りの警戒をしてもらえば、離反はできないでしょうね。」とジジが言った。

「そうだね。離反する隙を作らなければいい。ジジ、将軍に連絡を取っておいてくれ。」と言ってカエサルは笑った。

こうして微妙な位置にいたセクアニ族をしっかりと味方につけておいて、ゲルマニアの軍勢と対峙する準備ができていった。


セクアニ族とその拠点をしっかりと抑えて食糧を確保したカエサル。

アリオヴィストスと対決する時が迫ってきていた。

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