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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
ユリウスとカエサルの年
32/68

事件のあと

婚姻を前にして忙しさを増しているユリアを狙うゾヌリ。

身を守ることはできるだろうか。

ポンペイオスとカエサルの間で結婚が具体的になってきている。

特に隠し事をしない両者だったため、そのうわさはローマ中に広がっていった。

そして、一躍、時の人のようになったユリアだったがいつもと行動は変わらなかった。

周りについてれている女の召使、奴隷にも丁寧に対応し、お互いに良い関係を築けていた。

召使、奴隷ともに、自分たちが以前より見てきたお嬢様が英雄ポンペイオスに嫁ぐのだ。気合も入っていた。

「お嬢様が美しいのはわかっていますが、磨きをかけましょうね。」

「カエサルの娘として、周囲を驚かせたいです。」

「ありがとう。でもほどほどでいいわ。」

そんな会話がなされるほどに仲良く、今までと同じように召使、奴隷と接し、ポンペイオスのつけた護衛ともいつものように接した。

ただし周りの人々の好奇心は高まるばかりだった。


以前は道を歩いても混雑した道でもユリアの周りに人だかりができたことなど一度もなかった。ユリアの美貌を見て振り返る男たちがいる程度だった。

だが、話題に上ってからは護衛たちが周りを固めていて召使もいるのに、かなり近い距離まで人々が近寄ってくるようになる。


ゾヌリは静かにその時期が来るのを待っていた。

ユリアに近づこうとする者たちは、男が多いが、好奇心に寄せられて女たちも一目見て話かけてみようと寄ってくることがあった。男に対しては護衛が近づかせないようにしていたが、女たちを力で押し返すわけにもいかずユリアの近くまで近寄っている。

遠くからその姿を見ていたゾヌリは襲撃の計画を決めた。



ユリアは自分が騒ぎの中心にいることに気が付いて、父であるカエサルに言って護衛を増やすように依頼した。さらに外出する予定を減らして襲われたりするリスクを回避しだした。

カエサルはすぐに手配して、護衛は5名にふくれあがった。召使と奴隷は今まで通りだった。

周りを抑える護衛は増えたが、人々の関心も高まったし5人も大の男を連れて回れば自然と眼がいってしまう。


人々はユリアに接したいのだ。

接する機会を減らせば、自ずと人だかりは増える。

だからそこそこ人前に出ておいたほうが混乱を招かなくてすむ。

ユリアはそう思った。


その日、ユリアは朝早くから家を出ることを決意。

まだ街が朝の準備でざわついているうちに服と化粧品を買いに行こうとした。そして、明日行われるポンペイオス邸への訪問を前に髪の毛をきれいにしておきたい、という希望もあった。


そうしてユリアが護衛たちも連れて家を出たところで、街は沸いた。

噂になっているカエサルの娘が今日も出てきた。

最近頻繁に見るユリアを見て、ああ、準備なんだな、と思う市民も増えてきたがローマの人口は多い。ポンペイオスとカエサルの縁がつながるということで特に民衆派でカエサルの帰国事業で帰ってきた人たちは、今後の安定を祈ってユリアを見たいと思うようにもなっていた。

そのため、全体としてユリアを見ようとする人だかりは増えつつあった。


今までと同じように護衛が男たちを撃退する。

一人のやせた老婆が近づいてきた。細い老婆を見て護衛たちは力強くあしらえずついついユリアの近くまで来させてしまった。


その時、老婆のぼさぼさの髪のまま身体が宙に舞った。


ゾヌリは、毒の付いた短剣をユリアの左腕のあたり、身体にまで切り込みを入れた。

切った感じは柔らかい。男とは違うなと思ったゾヌリだったが、明らかにユリアの服から血が出ている。

切って一瞬の間を置いて血が吹き出す。そこまで確認すると老婆と思われた小柄な男は身体を翻して逃げようとした。

護衛たちが声をあげて、小柄な男を止めようとしたが、すぐに近寄った2人が短剣で切りつけられて、男を逃した。


その場は地獄のようになった。

小柄な男に切り付けられた護衛たちはひくひくとなっている。

毒だ。

周りにいた観衆もざわつき、残った護衛たちがかけよってきて一人が街中の衛兵を呼びに行く。

そして、ユリアは、左脇のあたりから血を流しながら倒れていた。


「カエサルの娘、ユリア倒れる。」

その一報はローマ中にすぐに広まっていった。



事件を聞いたカエサルは顔を真っ青にして、ユリアが担ぎ込まれた実家に戻っていった。

「ユリアは?ユリアはどうだ?」

母であるアウレリアがカエサルを出迎えた。顔はカエサルと同じく真っ青だった。

「ユリアは奥よ。カエサル以外の誰もいれないで。」

そう指示されたダインとジジは他の者たちとともに居間で待つことにした。


倒れたユリアは奥の間で綺麗にされて寝ていた。

眼を瞑ったまま、ただ寝ているように見える。

そして、左に切られたと思われる傷が・・・。

カエサルはユリアの身体を泣きながら触って泣いた・・・。


カエサルのすすり泣きが落ち着いてから少しして、奥の間には引き続き誰もいれないように言われた。

カエサルが出てきてポンペイオス邸に向かうと言い出した。

「ポンペイオスに今起きていることを伝えにいかねば。」

カエサル家の者たちも同調した。


ゾヌリの毒牙にかかったユリア。

カエサルとポンペイオスの関係はどうなっていくのだろうか?

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