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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
ユリウスとカエサルの年
29/68

カピトリヌス動く

新時代派による農地法の実現により衝撃を受けた門閥派は対策を練るために会議を実施していた。

その一方で、新時代派を抑えるために、カエサルの娘ユリアが狙われているという情報を得たカエサルは門閥派にゆさぶりをかける。

カピトリヌスは門閥派の議員たちと会議を開いていた。

貴族たちや金持ちが軒を連ねるカピトリヌスの丘を自費で整備して、”カピトリヌス”の異名をもらってから、カピトリヌスは特にこの高級住宅街が好きになっていた。

整備上の細かな馬車専用道路の整備や歩道の再整備、階段、街路の木の設置、古くなり持ち主不明の邸宅の整備などありとあらゆることを行った。

整備が終わったことで、高級住宅街には一般市民はあまり足を踏み入れなくなり、貴族の余裕のある造りの邸宅、大金持ちが持つ広大で趣向を凝らした建築物と庭が、十分な空間を持って存在していた。


会議室から外を見ても、大都市ローマの喧騒は感じられない。

カピトリヌスは、元老院を主体とした大人の荘厳な感じをもって市民を圧倒し、慈悲を持って統治すべきだと思っていた。

だが、現実は、市民の喧騒がこの会議室にまで響いてきていた。

未だに、ポンペイオス、クラッスス、カエサルの三者連合に対抗する術を見いだせないで喧々諤々と言い合いを繰り返しているだけなのだ。

そして、ルクルスやキケロのように一旦冷却期間を置きたいとする議員も出る始末。

若きカトーを中心とした一部の議員とカルビエンヌのような荒事も辞さないとする者たちが中心となって議論が進む。

私の考える威厳のある元老院ではない、と思ったが彼らの暴発を防ぐためにもカピトリヌスは門閥派の舵取りを取り続ける必要があった。


そこへ、情報屋のインゴドが来た、という連絡を受けて進まない会議の席を一旦外した。

自前の情報網を持つカピトリヌスだったが、この浅黒い男は独自の情報網を持っており、長きにわたって情報を提供してもらうことにしていた。

本心を見せないこの男だったが、カピトリヌスがもつ先祖から受け継いだ情報網では手に入らない情報をいくつも持っていることが大切だった。長い年月にかけてカピトリヌスとインゴドの関係は変わらなかった。今回カピトリヌスはインゴドに、カエサル近辺の情報を探るように依頼したばかりだった。

そのインゴドが会議なのに連絡をよこしたということは何か自分の耳にいれるべき情報があるということだった。迷走気味の門閥派の会議から気分転換を図るにもちょうど良いと思って席を外した。

そして、時々頼ることがある腕の良い情報屋の待つ個室に向かう。

「カピトリヌスの旦那、お久しぶり。今日は重要な情報をお持ちしたよ。」

「どのようなことかな?」

と情報を集めるプロであるインゴドに問いかけた。

「カエサルの腰巾着アントニウスがキケロ邸に仲間を連れて押しかけてきてる。カエサルを襲うものは許さないと暴れている。」

一瞬、驚きの表情を見せたカピトリヌスはインゴドを見てすぐに切り替えた。

「アントニウス。カエサルの子飼いの剣闘士みたいなやつか。それはきっとカエサルが指示したに違いない。一市民が武力を背景に元老院議員に脅しをかけるようなことあってはならない。」

そういうと少しだけ考えてからさらに言う。

「よし、カエサルは最高神祇官の邸宅にいるのであろう、そこに、門閥派の仲間たちを派遣し、言論統制は許さない、そして元老院議員の身の安全を執政官として守るように要求させよう。その間にお前はカエサルがアントニウスに指示したとされる証拠を手に入れれられないか。」

「良い案ですね。ただ難しい。カエサルは口頭で指示したと思う。だが多くの情報を集めよう。ところで邸宅には誰を向かわせる?相手はカエサル。生半可な相手では相手にならない。」

「そうだな、ルクルスが動いてくれると心強いが彼は今や表舞台に立つ気がなさそうだ。そうだ、カトーに言ってもらおう。カトーと合わせてキケロにフォローに動いてもらえばカエサルも市民も無視はできないし議論においても遅れはとらないはずだ。彼らが先頭に立つと目立つだろう。」

「カトー。ちょっとやかましいがカエサルに対抗できるね。カトーたちへどうやって連絡をとるか?」

「今日の集会にもカトーはいるから私が直接言っておこう。それから、キケロは小心者だ。彼を守る屈強な仲間を集められるか?アントニウスが出てくるとキケロも怯んでしまいかねない。」

「わかった。キケロの補佐ができそうな屈強な男たちを集めておく。それから、最高神祇官の邸宅に向かわせよう。あなたのところの従者もお借りして良いか?」

「ああ、そうだな。顔が割れないように彼らが一番表に出ないようにだけは気を付けてくれ。」

「わかった。」

そこまで話をすると、インゴドはカピトリヌスの邸宅を取り仕切る執事長のところに向かい話をしにいった。カピトリヌスの家中には何人もの屈強な男たちがいる。彼らはローマとカピトリヌスに絶対の忠誠を誓ってくれている。カピトリヌスの命であれば必死に動いてくれるだろう。

インゴドが動くのを見て、カピトリヌスも考えを改めて整理する。

カトーとキケロを向かわせるよう説得しなければならない。カトーは良いとしてキケロはこの場に来ていないから探して説得しなければならない。面倒なことだ、と思った。

すべてカエサルが新時代派として活動しはじめてから上手くいかない。

なんとかあいつを止める必要があると思っていたが、強硬手段に出てでもこれ以上好き勝手にされても困ると思った。カルビエンヌにも伝えて、早く例の計画を実施するように促す必要もあった。

カピトリヌスは使いを呼んでカルビエンヌのもとに向かうように伝えた。


門閥派も動き始めていた。

その門閥派にインゴドはアントニウスの情報をもちよる。

門閥派はどう動くのだろうか。



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