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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
ユリウスとカエサルの年
27/68

ユリア襲撃作戦

カエサルの情報部エピステラはどのような情報を持ってきたのだろうか。

執政官になり忙しいカエサルは、情報部の集めた情報に改めて大きな価値を感じていた。

カエサルの娘ユリアとポンペイオスの婚姻は、双方の合意があり、順調に進む予定だった。

これこそ、新時代派の結束を示す証になるはずなため、カエサルもユリアの前向きな気持ちを受けて盛大に開催したいと考えていたところだった。

ポンペイオスもユリアの美貌と気性を好ましく思い、二人は結婚前にもかかわらず理由をつけて会うほどになっていた。

互いにの気持ちが盛り上がっているところだ。男女の想いについては玄人であると自他ともに認めるカエサルは、この気持ちを大切にしたいと思った。

「婚姻を急がなければ。」

最近では口癖のようになっていた。

カエサルの側仕えが長い者たちは、娘を嫁にやるなら将来有望か著名な人物で、娘を心底愛してくれるであろう者にしかあげない、と豪語していたカエサルを思い出しては笑っていた。


側仕えの者たちの笑いを笑顔で返しながら、カエサルは考え続ける。

肝いりの法案、農地法が成立し、新時代派がお披露目された。そして完璧な形で成立させることができた。それによってカエサルの政治的な強敵である門閥派に大きなダメージを与えることができた。

この間に、ポンペイオスとユリアの婚姻を成立させたい。

ポンペイオスはユリアを気に入ってくれている。ユリアは政略結婚であり、父であるカエサルより年上のポンペイオス個人を気に入ってくれている。

最高の結婚相手と最高の結婚式のタイミングだ。

そう思っていた。


日程についても調整できつつある。後2カ月後。6月に実施する予定だ。

問題は、ポンペイオスの家に娘が嫁ぐことになるが、権勢を示すためにも多くの持参金を示したい。しかし、カエサルには借金しかななかった。

ポンペイオスもカエサルの借金の話は知っているだろうから多くは求めないだろうが、世間体というのもある。クラッススに借りるか・・・


そんなことを考えていたところに情報部(エピステラ)から緊急の連絡が来た。


インゴドはがカエサルの下に遣わせたのは、少女だった。

12,3歳だろうか。よく見ると綺麗な顔立ちをしているが、薄汚れた髪をぼざぼざにして隠していることと、薄い上着を着ているが最下層の子供にしか見えない。

その少女はギリシャ人で父母を早くに無くして、叔父が家を乗っ取っろうとして殺されかけているところを情報部一の使い手ザハに助けられたという話を聞いていた。

「どうしたんだい、シェリア?」

少女は膝を付けてカエサルのほうを向いて、一度頭を下げてから再び頭をあげる。

強い意志の力を感じるその瞳は主人をしっかりと見据えていた。

「インゴドよりの伝言です。門閥派の一部が活動を活発化しています。巨大な力を持つ新時代派に対抗するためにさまざまな人たちと接触している模様。そして一部に暴力に訴える可能性もあり、婚姻前のユリア様が狙われる可能性が出てきています。」

インゴドからのメッセージをしっかりと受け取ったカエサルは、顔を真っ赤にして珍しく声を荒げる。

「ユリアを狙う、だと?」

少女は、その声に驚き、動揺する。

何度も会っている主君は常に気さくで、自分のようなものにすら寛容だった。

それでも動揺しながらも必要なことを伝えようと口を開く。

「はい。」

「情報はどこから出ているんだ?」

「門閥派のメンバーの話の幾つかの情報をもとに推測したものですが、門閥派のなかでも強硬な者たちの案だと思われます。」

「カピトリヌスではないな。過激な者たち、カトーでもないか。あいつは荒事で物事を解決しようとはしないだろう。」

「はい、門閥派のなかで今まで主要だったカピトリヌス、ルクルス、キケロが新時代派を抑えられなかったとして、今まで表にあまり出てなかったカルビエンヌ、エノバルブスたちが幅を利かせるようになってきています。」

「なるほどね。私を嫌う者も多いだろうからな。門閥派も人材がいろいろいるからな。しかし、娘を襲う計画を立てるのは許せないな。」

「インゴドより、まずは一報を、と言う話でした。エピステラでも人員を割いてじょうほうを収集し続けます。もしカエサルご自身が動かれるのであれば動き方など教えてください。」

「わかった。インゴドに伝えてくれ、こちらは目立つ人員を表立って門閥派に対して動かす。その動きを見て詳細を把握するようにと言ってくれ。」

「わかりました。お伝えします。」

「ああ、それからシェリア、君は可愛いらしさを隠そうと薄汚れた感じにしているのかい?もし、そうでないなら我が家で風呂に入り身ぎれいにしていくといい。」

「ありがとうございます。ただまだやることがあるのでまずは役目を果たさせていただきます。」

少女はそういってカエサルに一礼して公邸を出ていった。


少女が去っていったあと、シェリアは良くやってくれている。インゴドに年頃の少女の取り扱いをもっとちゃんとすべきだと指摘しようと考えた。

それから、本来の問題、門閥派がユリアを狙っているということについて対策を考えることにした。

ひととおり考えをまとめると、カエサルはジジとダインに言って、アントニウスとラビエヌスを呼んでくるように言った。

ラビエヌスはこの数年付き合いが深くなっている元護民官。もともとポンペイオスの部下でありカエサル本人はポンペイオスの部下時代に彼を見ていたが、優秀だが実直なところが好感の持てる男だった。今は元老院議員入りしてポンペイオスよりもカエサルよりの議員として活躍している。

アントニウスはカエサルに近い親族の若者だったが、圧倒的な戦闘力を持つことで小さな頃から有名だった。カエサルの部下としてずっと荒事をこなしたりしてローマでも有名になっていた。現役の剣闘士にも勝つほどの対人戦の強さを持っており、戦闘においてはカエサルも頼れる若者だった。

2人を呼んで、門閥派にこちらから攻勢をかけてやろう。

先手必勝がカエサルの流儀だった。

ユリアを襲う、という腹立たしくも効果的な案を検討しだした門閥派。

それを事前にふせぐべくカエサルは仲間を呼ぶことにした。

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