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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
ガイウス・ユリウス・カエサル初の執政官へ
20/68

親愛なるプブルへ

内政、外政にさまざまなことを実施しているカエサルをサポートしていくプブルこと、プブリウス・リキニウス・クラッススという存在がいた。

泥が口に入り、膝からは血が出て、鉄の錆びたような味がする。

周りでは自分の仲間たちが簡単にひねられていた。

殴り飛ばされて、地面に倒れている自分に気がついた。

ローマにこの人ありと言われた父を持ち、好き放題に生きてきたプブルは、その日、道端で女と歩いていた瘦身の男に食ってかかった。


それが、プブルとカエサルの出会いだった。

プブルというのはカエサルが名付けた愛称だ。

かわいらしい名前で反発したかったが、一方的に因縁をつけて、簡単にあしらわれ、地面に寝転がされた手前、何も言い返すこともできずに受け入れるしかなかった。

それでも最初は素直に従うことはなく、憮然とした態度をしていた。


予想外だったが瘦身の男は喧嘩にも慣れているようで、その周りの男たちも恐ろしいくらいに手練れだった。自分も自分の仲間たちも反撃をする間もなくのされたのだ。

さらに、相手は喧嘩をふっかけてきた自分たちを縛っておくわけでもなく、過度に痛めつけることもせずに簡単に自由にした。


仲間たちのリーダーである自分に対してはいくつか質問はしてきたが。


驚いたことに自分の出自を知っているようだった。

「クラッススの息子がこんなにやんちゃだとは、かわいいね。」

からかっている感じでもなく、単なる感想としてカエサルはそう言った。

「悪いか?」

そうぶっきらぼうにいうと、カエサルは笑って

「やりたいことをするのは悪いことではないよ。相手はしっかり選ばないとね。」

と言ってきた。

何も言い返せなかった。

そして、父のことを知られているとなると、父に告げ口をされたりして厄介だ、と怒りよりも焦る気持ちが高くなる。

父の名は、ローマ一の金持ちマルクス・リキニウス・クラッスス。

その血を次ぐ息子としてプブリウス・リキニウス・クラッススは20代を超えるまで好き放題に生きていた。だが、好き放題といっても、家庭教師を付けられて学問を学ぶこともあったので所詮は父の手のひらの中での好き放題だったのだが。

父には頭があがらず、自分に許された、と思っているローマ市内で好き放題をしていた。


その日はたまたま気分が良くなかった。何か面白いことを探して街を歩いているとへ女連れで歩いていた有名な借金王をからかおうと思ったのだ。

借金王の最大の債権者は父だ。絶対に下手に出るだろう。

そう思ってつっかかってみたところ反撃された。言い訳を考える必要があると思った。


そのあとはもう予想外だった。

父の名をだしても、借金を二度としないと言っても気にした風もなく、

「私の邪魔は誰にもできないよ。」

そう笑いながら言うカエサルに威圧されてしまっていた。


そして気が付けば殴られたまま居酒屋に連れていかれて、色街に連れていかれとローマ市内の自分の知らないところに一緒にいくことになって、プブルは、なんて勝手な男だ、と思った。そして、酒と女か。行くところは結局他の男たちと同じじゃないか、とも。


だが、その勝手な行動は1日で終わるものではなかった。

その翌日には学者とむつかしい哲学の議論をした。近隣の農家を回って農家の手伝いをしながらパンをもらう日もある。

元兵士で建築士になった男と建築用式についての意見を交わす。

占星術師と天空の星空について意見をする。

酒屋のマスターと旨い料理と酒の組み合わせを語る。

その行動範囲は広くローマの市街地にとどまらず、気が付けば街道を馬で駆け抜け隣街くらいは平気でいき、オスティアの港から船にのっていたこともあった。

その幅の広い自由さにいつしかプブルは憧れようになっていった。


それから数年が経ち、プブルは、カエサルの知識の幅や交友関係を知り、次第に心酔するようになっていった。そして、カエサルはいつも自由にふるまっていたので、元老院議員になっても、そんなに今までの付き合いを変える必要はなかった。

カエサルはすこしずつ偉くなっていき、それはカエサルからも、父のクラッススからも聞いていたがカエサルのプブルへの態度は変わらなかった。

プブルもすっかり大人になってきて、父から仕事を任されるようにもなってきた。カエサルも忙しくなり、気軽に会うことはすくなくなっていった。


そして、カエサルがついに執政官になる。

プブルはちょうどその時は商売で南イタリアにいっていてお祝いを伝えるのがせいいっぱいだった。それでも、プブルも元老院の前段階の年齢になり、ローマの政治を考える年頃になってきて変わらずカエサルに心酔していた。


気がつけば、ローマ市内でクラッススの名で好き勝手をすることも全くなくなり、父よりも分別があると評されるようにもなっていた。

自分の足で立ち、自分で考え行動することを身につけたと思う。

カエサルに会って自分は道を見いだした。

そう思っていた。


そのカエサルから連絡が来た。


すでにその時、執政官としてのカエサルの評判は市内でうなぎ登りだった。

次にカエサルは何をするのか?

そんな期待がローマ市内に流れている時に、カエサルから連絡がきたのだ。

カエサルからの伝言は一つ。


「プブルへ

ローマを変える施策を議題にあげる。君のすべての味方を民会の開催時に集めれるように準備してほしい。民会は次月の後半を予定している。」

手紙を読みながら、身体の震えが止まらなかった。

カエサルが今以上に何かをしようとしている。そしてそれに俺の助力を必要としているのだ。


プブルにも手伝いを頼んだカエサルは何を実施しようとしているのだろうか。

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