表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
ガイウス・ユリウス・カエサル初の執政官へ
17/68

カエサル、夢を見る

執政官になりさまざまな取り組み開始しだしたカエサルのある日のこと

少年は、街中を歩いていた。

街は沈黙にあふれていた。


遊びたくて外を歩いていた少年は細い身体のため、近隣のやんちゃな若者からからかわれることも度々あった。

時には力で自分のいいなりにさせようとする者もいたが、日ごろから家庭教師にみっちりと鍛えられていた少年は相手をことごとく倒していた。

少年は街で強く賢く優しい少年として一目を置かれる存在になり、おしゃれや知識でも際立っていたため人気者は日々を楽しく過ごしていた。


あの日まで


ある日、突然市街に引かれた戒厳令だった。

それは唐突に発生し、市民は街を一時的に出歩けなくなり、多くの野蛮な男たちが見回りを始めて多くの市民が連れていかれた。

その中には少年の友達や知り合いもいた。

少年の叔父もいた。


彼らは殺されて市内に見せしめとして放置された。

許せない。

そう思った少年は、しかし圧倒的な力の前に抵抗することすらできないことを悟る。


叔父は権力を持つ元老院議員だったが、抵抗したあげく、簡単に殺されてしまった。

さらに見せしめのように切り殺され、さらし首にされて街中に放置された。

叔父とともに、仲良くしてくれていた大人たちの何人かが、少年にとっては最も力を持っていると思っていた人たちが全員簡単に捕まり殺された。

そして少年がいつも歩く街路に彼らの首がさらされた。


そのあとも残虐な見せしめは続き、戒厳令が解かれた後も、市内には見せしめの磔が、さらし首が毎日のように追加されてきた。


そして、市民が権力者に反逆しようという意思を砕かれた後には、権力者の支配下で、互いに監視し蜜国することが横行した。


そして日が経過したかわからない時間がたち、近隣の実直な商人が他人の嘘の密告で売られて殺されていくのを見る。

近隣でも有名な若い美しい女性が見回りをする無頼に手籠めにされそうになり抵抗したことで家族もろとも殺された。

家族のように付き合っていた貴族が、見回りの者たちの追跡をさけるため、最低限の荷物で逃げることを見送る。


それでも自分は何もできない。


一度だけ、知り合いの貴族が見回り組にひどい目に合わされているのを目のあたりにして、間に入って止めようとしたことがあった。

少年はその見回りの男に簡単に地面に転がされて殺されかけたところにウェスタの巫女が現れて見回りの男を止めた。

「その手を話しなさい。ウェスタ神殿の見習い神祇官である少年を手にかけることは許されません。」


そこで首に近づいていた刃物は遠くに行き、見回りの男は巫女のほうに向かう。

助かった。


気がゆるむと、意識が混濁していった。


混濁した意識のなかで、周りが移り変わっていく。


黒い影が見えた。

近づいてみるとそれは巨大すぎる何かの影。

いや生き物か。


その巨大すぎる生き物は息は苦しそうだった。

息ができなくて苦しんでいる様子が見て取れる。


巨大な身体は全身に血が届いていないのか、その巨大な身体の、遠くに見える手の部分も足の部分も腐っているように見えた。


これは何だ。

巨大な生物らしきものは、辺りに身体をぶつけてそれを吸収していく。

そして、さらに苦しむ。

息ができずもがいていく巨大な生物は、苦しみながらもがく。

あたりにさらに身体をぶつけて、全身を痛めつけていく。


ふと自分が冷静にその姿を見ているのに気が付いた。

ああ、これは生物であり、生物でないものかもしれない。


自分がユリウス・カエサルという人物だったことを思い出し、

あの巨大な生物はローマという国家ではないかと頭が動き出す。


気が付けば、自分は布団の中にいた。

カエサルは大きな息をしてさきほどの巨大な生物のことを思い返す。


巨大化したが小さな心臓しか持たないこの国は、近いうちに滅んでしまうだろう。

みじめに。

残酷に。

そして多くの人々がこの巨大化したローマの破壊で悲惨なことになるのだ。


だから私はひるむことなく先に進まなければいけない。

誰に理解されることもなくとも。


悲しい気持ちになったところで目が完全に覚めた。


「ふう嫌な夢だった。」

少し落ち着いて独り言を言う。

「私は孤独ではない。多くの人は私を支持してくれているし、理解してくれている。」


朝の準備ができたと侍女がカエサルを迎えにきた。

歩いて食事に向かう先には皆の笑顔が見えた。


おはよう。


カエサルが明るくいうと何人もが笑顔でおはようございます、と返してくる。

ジジが声をかけてきた。

「おはようございます。カエサル。何か疲れていませんか?」

「そんなことないさ。」

他にも気にかけてくれる人が何人もいる。

私は一人ではない。

カエサル家は奴隷も一緒にごはんを食べる風習があった。

これこそ、私の流儀だ。

奴隷も使用人も時間が合うものは一緒にごはんを食べる。

彼らとともにチーム・カエサルがローマを変える。

そうだ。


そう思いながら、焼き上がりのパンにチーズをはさんで口にした。


夢を見て、気持ちをあらたにしたカエサルはついに念願の取組に手を付けることを決めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ