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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
ガイウス・ユリウス・カエサル初の執政官へ
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ユリウス判例法の始動

通達で元老院議事録を発布してから、

その効果を見ながら、カエサルは自分の行いたかった

政治を開始しだした。


元老院議事録が開始されてから、元老院での議論は前よりも慎重に話をされるようになった。

しかし、今まで数あわせのように居るだけで、発言を控えていた一部の議員からも意見が出るようになる。

自分がどれだけ意見を出し、どのように活動したか見られるようになった。

目ざとい支援者たちは自分の関わりのある議員がどれだけ活動しているかを確認しプレッシャーをかけることができるようになった。

議員たちは議会での自分の対応に追われることになった。


そして市民たちが酒場や公共の風呂やトイレでその結果を見て笑いあうようになった。

「俺が懇意にしていた議員だが、全然意見を通せていなかった。今までは見栄をはっていただけなんだとわかったぜ。」

「大抵の議員はそうらしいぜ。自分がいかにも元老院の中で大きな役割を担っているように言っていたが、そうでもないというのがわかって大慌てだそうだ。」

これは市内のさまざまなところで笑い話になっていた。

少し賢い者たちは訳知り顔で

「そもそも数百人もいる議員のなかで、全体をリードして話ができるのは、各派のリーダー的な存在でしょう。元執政官である門閥派のカピトリヌス、キケロ、ホルテンシウス、商人たちを代表するクラッスス、そして今や才能を見せつつある民衆派のカエサルなど。そのあたりの者とただの議員は一線を画していると考えるべきですね。」

うすうすと感じていた流れをあらためてまとめられて市民たちも納得していった。


執政官通達で大きな印象を与えたカエサルは翌日から、法律の制定を提案する。

内容は属州も含む国家公務員法の制定だった。


提案の段階でカエサルはその必要性をしっかりと説明する。

ローマの版図が大きくなるにつれて巨大化した属州の統治に目が行き届いていないこと、それによって裁判の増加、属州の貧しさの増加など。

これらの現状認識について、穏健派が強く同調してきて、門閥派のなかでも真面目な者たちも同調した。

一部、属州を統治する側で搾取していた議員たちは厳しい顔になったが、表だって批判することはできない。なぜなら元老院議事録に残るからだ。

強い反発に合うことなく、カエサルの提案による国家公務員法の検討されることになった。



「ローマの国領を治める属州総督が非道なふるまいをするとは思っていません。ですが万が一出た時に律するために、この条文を入れておく必要があるのです。」

すました顔で言うカエサルに対して反対派は強く意見を言えなかった。

「しかし、あまりにも厳しすぎるのではないか?」

「私もそう思う。」

「カピトリヌス、長年ローマを支えてきたあなたはいかがお考えでしょうか?」カエサルが仇敵を名指しして聞いた。

「カエサル、私個人は属州統治に誠意をもって努めてきた。だからこそ非道なふるまいは許されないと感じている。だがもしかすると属州総督が知らないうちに悪いことを行う部下がいるかもしれん。そういった者のために元老院議員の権利を失うのはあまりにもむごいことだと思う。」

突然の指名に対して、カピトリヌスはしっかりと意見をかえした。

カエサルは心の底で、さすがに手ごわいかと思いながらもさらに言葉を続ける。

「もちろん、そういった可能性はあります。しかし部下をまとめるのも属州総督の仕事。それができないのであれば反省する機会を持つべきだと思います。また裁判で抗弁もできるでしょう。」


彼らが議論しているのは、属州統治の最高責任者、総督が公務員法に違反した時の罰則の規定だった。

最も重い、元老院からの除名をカエサルが提案し、さすがに除名は厳しいと弱い反論がされていた。

反論がそもそもしずらい形に持っていかれたのだ。


カエサルの公務員法の案は、現実的であり、厳しいものではなかった。そして属州で好き放題する官吏かを多いことを問題視していた穏健派や良識ある元老院議員たちの多くはこれに最初から賛成を表明する。それ以外でも門閥派も含めて議事録に残ることを意識して、ローマへの忠誠と自身の正義を見せようとする発言も多く、前向きだった。

その流れでローマ本国、属州でのいわゆる公務員に当たる者たちへのルールが決まっていく。市民からの寄付なども高額でなければ認めたちめ、細かな議論をしつつもこの法案群は時間をかけて法案はまとまりを見せる。

皆、前向きに検討できてきた後半部分で、高位の役職者、元法務官や執政官にもかかわる部分になって怪訝な顔をする者たちが増えたが、それでも飲み込んだ。


しかし、最後にその罰則規定の最も重いものは元老院からの除名。

ここで今までは理解を示していた者たちが反論をしだしたのだ。


そこでカエサルは自分が執政官で議事進行をまとめる権利を使って、敵の攻めてをなくしながら、ユリウス判例法とされる国家公務員のルールを決定させた。


しかし、さすがに1週間以上の議論を経て、最終案をとりまとめることになった。

内容はほぼ初期のカエサルの案で、吟味しただけに終わった。

明日、最終案の確認と決定を行うという段階になった。


属州における国家公務員法は、何を狙いにしているのか。

元老院の者たちの多くはまだカエサルの人気取りだと思っていた。

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