冬営前
春を迎えて2度目のブリタンニア遠征を計画したカエサル。
そしてガリアに残ることになった軍団長たち。
それぞれに役割を果たそうとしていた。
春になり、改めてカエサルの再度のブリタンニア遠征とその詳細が決定した。
各軍団長はその間の役割を任される。サビヌス、トレボニウスは共にガリアに残りカエサル不在時のガリアを抑える役目を受けた。
ブリタンニアの遠征準備が進むなかで、カエサルはガリアを任せた軍団長たち、ラビエヌス、サビヌス、トレボニウスの前に現れて話をした。そして3人を中心にガリアを安定させることを頼んだ。
サビヌスは感激して、カエサルがガリアの王を目指しているという噂はやはり噂でしかなかったと思うようになった。
「秋にはブリタンニアの土産話を山のように持って戻ってくる。半年間の留守を頼む。」
「閣下が冬をブリタンニアで越しても大丈夫です。」
そんな軽口を真面目な顔でラビエヌスが言い、サビヌスとトレボニウスも頷く。
その軽口に満足しつつもカエサルは笑って
「越さない。少なくとも今はまだ。」
その回答に3人の軍団長も納得した。
さらに痩身の総司令官は言葉を続ける。
「クラッススたちの動向も気になるし、ローマの状況も気になるからね。」
はっとして3人は頷いた。
遠くでは幾つもの出来事が進んでいる。
カエサルは今までと同じ遠くまでを見据えている、いつものカエサルだった。
さらにカエサルはブリタンニアに発つ前に、反ローマの意思を持っていそうな部族の制圧を行った。
カエサル自身も参加し意見をすることも増えてきていたガリア部族長会議に参加をしないでいるいくつかの部族に対して軍団を向けてローマに従う意志があるかを確認した。どの部族も慌ててカエサルとローマに従うことを約束した。
最後に、部族長会議への欠席を貫いていた、北部でも有力な部族で騎馬ではガリア最強とされるトレヴェリ族に自ら赴き2つの族長家を訪れて恭順を約束させる。
ガリアの反ローマ分子は表向きなくなった。
背後の憂いを抑えたカエサルはブリタンニアへの遠征に向かった。
ここでの冒険憚は、自らの手によってローマ市民に向けて詳細が書かれることになる。
カエサルがブリタンニアに本格的な遠征に行っている間、ガリアは各軍団長とローマ寄りのガリア部族がしっかりと管理していたために何事も起きなかった。
サビヌスは自身が作ったカエサルを模倣した情報部隊を解散させていた。自分には情報部を作れてもうまく運用できないと考えたためである。サビヌス自身が情報部の長官ルクレイアに連絡をとり、自身の作った情報部の者たちをひきとってほしいと頼んでいた。ルクレイアはその依頼を受けて全員を快く引き受ける。ルクレイアはそれ以外では表に出ることもなかった。カエサル以外にローマやガリアの情報を伝えることもなかった。
ブリタンニアに再び渡ったカエサルは現地で手洗い歓迎を受けたりしながらも、自分の書を執筆する時間を確保してまとめあげていた。ローマ市民も初めてとなるブリタンニアの旅行記にもなると考え、時間を作って葡萄酒を片手に言葉をまとめあげる仕事も自然に筆が進んだようである。
船による大洋の旅とブリタンニア全体の地形など、情報部と斥候たちの活躍でカエサルはローマでは今までに知られていなかった多くの情報を持ち帰ることにも成功した。
特に北域に至ると夜が続き日が昇らない時期があったり、昼の時間が長いことを計測してみたり、ガリアとブリタンニアの植生の違いを比較したりとカエサルならではでの情報収集力で、興味と知識の視点で多くの情報を持ち帰った。
秋になり、ローマ軍は予定通りブリタンニアから帰還した。何人かの商魂逞しい商人たちはブリタンニアの民の元に留まり拠点を作ることになったが、ローマ軍の兵士たちは全員引き上げた。
カエサルはいつもと変わらない様子でガリアの地に戻ってきた。その頃にはブリタンニアの各種勢力を撃破したカエサルの武勇伝が広まり、ガリア全土も大人しいままである。
カエサルがブリタンニアから戻ってきたことを確認すると、すぐにガリアでは部族長会議が開催された。
多くの族長はその場でカエサルの武勇を褒め称えた。
だが、そこでへドゥイ族やレミ族からガリア全土が不作であったことの正式な報告を受ける。
そこでカエサルは冬営を細かく軍団ごとに分けて行うことをその場で決めた。
詳細は後にしたが、ローマ軍を軍団ごとに分散して冬を越すことを部族長たちに伝える。
部族長たちは、反抗もせずカエサルが必要とするのであれば受け入れると全員が商人した。
カエサルは人好きのする笑顔を見せて、
「各部族がローマ軍を受け入れてくれてありがたい。総司令官として感謝する。」
そう部族長たちの前で言って頭を下げて礼を伝えた。
「特に食糧が厳しい部族、疫病などがあって困っている部族は私に直接伝えてくれ。」
カエサルなりの配慮だった。以前よりカエサルと仲が良く縁の深い一部の部族からは困り事の相談がいく。それらを個別に聞きローマ軍団の配置には配慮を見せると約束した。
こうしてローマ軍はガリアの食糧事情も加味して初めて分散した形で冬営することになった。その配置は半日ほどでローマ軍の各軍団が互いに支援に行ける距離であり、絶妙な配置であった。
さらにカエサルは全軍団長に伝えた。
「もし敵が襲いかかって来ても陣地を守り、支援の連絡をしなさい。近隣の軍団が一両日中に支援に訪れるだろう。」
ダインがいつも以上に配慮を見せるカエサルに疑問をかけた。
「いつもより入念ですね?」
「嫌な予感がするんだ。今までに感じたことがないくらいにね。」
「そうですか。直感は大切にした方が良いですね。」
少し主人がナーバスになっているのかと気にしていたが、カエサルの予感は大きな出来事を当ててきたことを思いだし、優しい側使えは、あまり触れないでいることに決めた。
結局カエサルは全軍団の配置が終わり、冬がさしかかって来てアルプスを越えることが厳しくなる時期まで属州に行かずに、状況を見守っていた。
2度目のブリタンニア遠征をして、一定の成果をえたカエサルは
冬を超える準備を行った。
カエサルの胸騒ぎは、解消されるのだろうか。




