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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
二回目の少年院を出て
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優香ごめんよ……

 

 夏の終わり頃、青ギャングのメンバーが沢山逮捕された……。

 まだ青ギャングを脱退する前に、仁村先輩達が上尾の原市(はらいち)の人達と喧嘩になったらしく、金のネックレスを奪った為に強盗になって逮捕された……。

 後に分かった事だが、仁村先輩を含めたほとんどの人は鑑別所で出てこれたが、とも先輩は多摩少年院(長期)へ、浜田先輩は俺が最初に行った水府学院(短期)へ移送された……。


 逮捕された事件はもう一件あり、こちらは全て青ギャングのメンバーというわけではないが、俺の通っていた中学の一個下を中心とした集団リンチによる傷害致死事件だった。

 人が亡くなっている上に、俺は直接知り合いではので詳しくは分からないが、何人かは少年刑務所や少年院に入ったと聞いた……。


 俺は日本のギャングなんて!

 と馬鹿にしていたが、強盗に殺人まで犯しているので、れっきとしたギャングだったのかもしれない……。

 だが人が亡くなっているので、これ以上のコメントは控えさせていただく……。


 ちなみにこの日は、俺のポケットベルがやたらと鳴って、兄を含めた七人くらいが俺が関わってないか確認してきたのでうんざりした……。

 これも今までの行いが悪いせいなので仕方がないが……。


 その後、上尾の青ギャングは東京都内のどこだかのギャングに襲撃されて、その時いた主要メンバーのタリだけ車で拉致された。

 後で聞いたら裸にされて目隠しされたらしいが、結局その日の内に解放されたと聞いた……。


 それから青ギャングがどうなったのかは俺は知らない……。

 



 俺の住む団地の秋祭りに、俺と仲がいい橘高校の一年の女子グループが来ていた。


 「一緒に写真を撮ってください!」

 と優香と優香の友達が言ってきた。

 俺と一緒に写りたかったのは優香の友達の方だったので、残念ながら優香は撮る側にまわった。

 俺はどちらかと言うと優香と一緒に撮りたかったが、そんな失礼な事を言えるはずがなかった。

 でも優香と初めて少し話せたので俺は嬉しかった……。


 

 その二日後の夕方過ぎ、現役中学生のモヒカンのもつに会った。

 もつの同級生の理恵という女の子も一緒にいた。

 すごくボーイッシュな子で、この子の兄が俺と同級生なので、大分前から知っている子だった。

 

 俺ら三人は喉が渇いたので、飲み物を買いにコンビニに行った……。

 するとアウディのライトバンが停まっていたので

 「カッコいいな!」

 と俺は言ったが、正直全然カッコいいとは思っていなかった。

 色も白に茶色い線が入っててカッコよくないし、形もライトバンなので全然カッコよくなかった。

 ただ単に、外車で左ハンドルだからカッコいいと言っただけだった……。


 アウディはエンジンがついたままの状態で、中に人もいなかった……。

 広めの駐車場で、コンビニから少し離れた場所に停まっていた。

 なので俺は半分冗談でもつに

 「この車、盗もうぜ!おまえならイケる!」

 いったい何がイケるのかも分からないし、もつは中学生なので運転出来るわけはないが、もつを煽ってみた……。

 するともつは俺の言葉を鵜呑みにしたのか周りを見回すと、素早く運転席に乗り込んだ。

 おいおい!

 マジか、こいつ?

 と思ったが、俺と理恵は車から離れて様子を見守った……。

 

 もつはギアを入れると走り出した……。


 少し走った所で俺と理恵も車に乗り込んだ。

 「おまえ、何で運転出来んだよ?」

 まずはそこをはっきりさせたかった。

 「ゲームセンターで鍛えました!」

 それを聞いて今時のゲームはそんなにリアルなのか?

 と思ったが、そんなわけはなかった……。


 とりあえず、ライトの点け方がハイビームしか分からなくて困った。

 コンビニからはとりあえず離れなければならないので、落ち着いて停まる事が出来る所までハイビームで走った。

 この時、パトカーに見られたらまだ運転も慣れていないので、すぐに捕まった事だろう……。

 

 停まれる所まで行き、色々と操作の仕方を模索してライトの点け方も分かったので、もつの運転でドライブをした。

 もつは運転の才能があるらしく、全くぶつける事なく上達していった。

 俺ももつに変わって運転してみたが、ぶつけまくってあちこち凹ませてしまった……。


 夜通しドライブを楽しんだ俺らは、上尾市内の人気のない公園近くに車を停め、指紋を拭き取ってから放置した……。

 もつが明日も暇なので遊んでください!

 というので俺んちに来るように行った……。


 次の日の十月一日の夕方、もつは約束通り、俺んちにやってきた。

 もつは俺に会うなり

 「優香が三頭脳さんと付き合いたいって言ってましたよ!」

 と言い出した。

 え?

 おまえら知り合いだったの?

 とまずはそこに驚いたが、まじかよ!

 と思った。

 一瞬、嘘だと思ったが、俺が優香を気に入っている事は誰にも言っていないので、もつが俺に嘘をつくわけはないと思った……。

 俺は内心めちゃくちゃ嬉しかったがもつの手前

 「あっそうなんだ……」

 と精一杯平静を装った……。

 

 もつと二人で遊んでもする事が思い付かなかったので、親友エバの家に行った。

 エバは高校の時の友達と一緒にいた。


 もつが、昨日盗んだアウディの話をエバにするとエバが

 「その車、今から乗りに行こうぜ!」

 と言い出したので俺は

 「いや、もう捨ててきたしやめようぜ!」

 と反対した。

 本当に俺は嫌だった。

 まず第一に、昨日けっこう車をぶつけたので捕まったら弁償させられるので嫌だった……。

 第二に、優香と付き合いたかったので、捕まるような真似はもうしたくなかったのだ……。

 それに、なんだか中学の時の捕まる直前に雰囲気が似ていたので嫌な予感がしたのだ……。


 だがエバが、エバの友達を指さして

 「こいつは免許持ってるからこいつに運転させれば大丈夫だって!」

 と珍しく後へ引かなかった。

 歳的に車に興味を持っていたからだろう……。

 俺以外の三人は乗り気だったので渋々従った。

 こんな事なら昨日鍵を捨てておけばよかったと思った……。


 俺はなくなっている事を期待したが、昨日乗り捨てたアウディの場所に行くと、昨日の状態のまま鍵も刺さっていた……。

 

 エバは、まずアウディの荷台を模索しだした。

 「おっ!これ、シャネルのサングラスじゃん!」

 とめざとく見付けていた。

 「これ、もらっていいか?」

 と言うので俺はサングラスに興味がなかったのでエバにゆずった。


 エバの友達が運転すると、さすが免許を持っているだけあって安心感が違った。

 俺は後部座席の右側で、ずっと優香の事ばかり考えていた。

 優香に早く会いたくて仕方がなかった……。


 ずっと誰とも話さず考え込んでいると、いつの間にか、もつが運転していて、エバが

 「ほら!ギリギリで信号渡ったからだよ!」

 と言った時に、パトカーの赤灯が後ろで光ったので俺は我にかえった……。

 まじかよ!

 何やってんだよ!

 俺はもう捕まる予感しかしなかった……。

 優香……あと少しだったのにごめんよ……。


 パトカーは赤灯は光らせたが、サイレンを鳴らさずにずっとついてきた。

 つねは

 「どうしますか?逃げますか?」

 と迷っている様子だった……。

 とりあえず、様子を見る事にしたが、応援を呼んだのか、パトカーが二台になった時に二台共サイレンを鳴らしてきた。

 つねはスピードをあげて逃げ出した。

 けっこうパトカーと差をつけて細道に逃げたのだが、スピードを出していた為に、段差のある空き地のような所に乗り上げてしまいエンジンがストップしてしまった……。

 「車捨てて逃げるか!」

 と誰かが言ったが、全員再びエンジンがかかる方にかけた。

 つねが鍵を回し続けたがエンジンがかかる事はなかった……。

 この時は知らなかったが、ギアがドライブに入っていると絶対にエンジンはかからないのだ。

 ニュートラルかパーキングにしないといけなかったが、誰も気が付かず、追ってきた二台のパトカーから降りてきた警察達に囲まれて、俺達は全員捕まってしまった……。


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