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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
二回目の少年院を出て
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丸くなったね

 

 上尾に戻ってくると、青ギャングは仁村先輩率いる脱退派と残留派に分かれており、非常に面倒くさい状態になっていた。


 脱退派は仁村先輩を筆頭に元石南の先輩達と西中の銀林、竜、秋森など三十人くらいいただろうか……。


 残留派は元西中生を中心に、タリやとも先輩達がいて、四、五十人は残っていたと思われるが桶川の人間や後輩もいたりして、ほとんど俺の知らない人間ばかりだった……。


 面倒くさい時に帰って来たとは思ったが、元々青ギャングではない俺には関係ないと思った……。

 青ギャングなんて入らなくて本当によかったと思った……。


 

 コンビニに俺と銀林、竜、焼きそば頭、秋森などと溜まっていたら、たまたま青ギャングの頭の守さんが通りかかった……。

 仕事着だったので、本当にたまたま通りかかったようだった。

 仕事着姿を初めて見たが、けっこういい体格をしていたので驚いた。

 全員、脱退派だったので、やべえ!

 という雰囲気になった。

 みんな立ち上がって固まっていたが、焼きそば頭だけ原付バイクに座ったままだったので

 「おめえ!何座ってんだよ!」

 と殴られた。


 次に竜が下腹部に思いっきり前蹴りされた。


 銀林の存在に気付き

 「特におまえだよ!銀林!」

 とまた下腹部に前蹴りされた。

 俺にも来るかと思ったが、それだけやったらなぜか不思議と去って行った……。

 俺は頭だけあって、守さんはけっこう強いんだな……という印象だった。

 ちなみに竜と銀林は急所に当てられたらしく、守さんが去った後、悶絶していた……。



 別の日、コンビニに行ったら、たまたま同級生のフスマと会った。

 「おお!久しぶり!」

 なんて言ってたら青ギャングの頭の守さんがたまたま車で通りかかって現れた。

 俺はまたかよ!

 って思った。

 守さんがフスマに

 「おまえ!青ギャングにいたよな?」

 と声を掛けた。

 フスマが

 「はい……」

 と言ったので驚いた。

 え?

 フスマも青ギャング入ってたの?

 フスマは守さんの車に乗せられた……。


 まあいいや!

 俺には関係ない……と思ってたら、守さんが俺に気付き

 「おお!三頭脳じゃねえか!おまえも乗れ!」

 とまさかの俺まで乗せられた。

 「やっちまーズ」

 時代にいたから俺の事は知っていたのだ……。


 俺まで乗せられ、何でやねん!

 と思ったが、フスマを見捨てるのも可哀想なので仕方なく車に乗った。


 上尾の駅前の青ギャングが溜まっている場所まで連れていかれ、俺達二人は降ろされた。

 守さんは

 「こいつら捕まえてきたから!」

 と青ギャングの主要メンバーに伝えてどこかに行ってしまった……。

 

 主要メンバーはとも先輩、とも先輩と仲のいい元西中の一個上の浜田先輩、同じ歳のタリ、元西中の同じ歳のまさや、とし、りょうへい、デラマンなど知り合いばかりだったので普通に話していた。

 なんかみんな勘違いしているが、俺は青ギャングに入った覚えがないので、それは切り札として使おうと思っていた。

 なぜ切り札にするかと言うと、それを言うとこの難は逃れられるが、青ギャングに入る流れになるのが目に見えていたからだ……。

 

 そう思っていたら浜田先輩が

 「おまえら、守さんにやれって言われたら悪いけどやっちまうからな!」

 と言ってきたので、俺はキレた。

 「あ?」

 と言って浜田先輩を睨みつけた。

 この先輩は嫌いではなかったが、一気にムカついた。

 最悪、青ギャングに入ってもいいからこいつだけはぶっ飛ばしてやろうと思った。

 この頃いきがっていたが、俺は負ける気がまるでしなかった……。

 反抗して来るとは思っていなかったのか、俺が睨みつけたらあきらかに怯んで浜田先輩は無言になった……。


 守さんが戻ってきて、俺達は向かい合うようにフスマと並んで立っていた。

 

 守さんは俺達をどうするか考えてるようだった。

 

 俺の目付きが気に入らなかったのか、守さんが突然吸ってたタバコを指で回転させながら俺の顔に投げてきた。

 目に当たれば怯んだだろうが、根性焼きが三十五個ある俺にはタバコの火など全然恐くなかったので全く動じなかった……。


 その時、俺のポケットベルが鳴った。

 そのままにしていたら、守さんが大物ぶってか

 「ポケベル鳴ってるぞ!見てみろよ!」

 と言ってきたので見てみた。

 兄からで

 「連絡しろ!」

 という内容だった……。

 

 「誰から?」

 と守さんが聞いてきたので

 「兄です!」

 と言うと

 「お兄ちゃん?……連絡してきていいよ!」

 と言ってきた。

 この人はいったい何を考えてるのか全く分からなかったが、言われたとおりに近くの公衆電話まで行って兄に連絡した。

 兄はすぐ出て

 「何してるんだ?」

 と聞いてきたので今の状況を説明した。

 「おまえがやられたら守は俺がやってやるから安心しろよ!」

 やられてからじゃ遅いと思って、何も安心出来なかったが、俺には

 「青ギャングに入っていない」

 という切り札があるので別に兄に頼る気はなかった……。

 兄もこの流れなら青ギャングに入っても仕方がないと思うだろう……。


 守さんの所に戻ると

 「お兄ちゃん何だって?」

 と聞いてきたので

 「いや、何してるのか聞いてきただけで、別に大した用じゃなかったです。」

 と言うと、しばらく守さんは考え込んだ……。


 突然

 「送るから乗れよ!」

 と言い出した……。

 その場にいた人間は、え?

 じゃあ、なんで連れて来たの?

 と思った事だろう……。


 俺とフスマは再び守さんの車に乗った。

 「なあ?俺って恐いか?」

 と運転しながらフスマに聞いた……。

 フスマは

 「恐いです!」

 と答えた。

 守さんは次に俺に

 「三頭脳は俺の事恐くないよな?」

 と聞いてきたので、実際は

 「やっちまーズ」

 から知ってるので恐くなかったが面倒なので

 「いや恐いです!」

 と言っといた。

 「そうか……」

 なんだか守さんは寂しげだった……。

 本当に普通に元いたコンビニに俺とフスマを送ってくれたので、いったい何だったんだ?

 と思ったが何もなかったならよかった。

 フスマともすぐに別れた。


 兄はその後、駅前に現れたらしいが俺がいないのですぐに帰って行ったと、後でタリから聞いた……。

 

 


 別の日、秋森と銀林と三人で遊んでいたら、秋森が

 「俺ら帰るから送るよ!」

 と言ってきたのでそのつもりでいた。


 ところが時間差で銀林が

 「この後、女の子達と遊ぶけど三頭脳はどうする?」

 と聞いてきたので、俺は秋森の野郎!

 と思った。

 正直に言ってくれれば普通に帰ったのに、のけ者にされた事に腹が立って仕方がなかった……。

 怒って

 「ふざけんなよ!」

 と秋森にキレて帰った……。


 後日、竜にその話をしたら

 「丸くなったね、前の三頭脳だったら間違いなくぶっ飛ばしてたのに……」

 と言われたが、喜連川少年院に入れば誰でも丸くなるわ!

 と思って、この時はあまり気にしなかった……。

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