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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
二回目の少年院を出て
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島流し

 

 種子島に住む父方のじいちゃんが亡くなった……。

 父と母が種子島に行くと言い出したので、俺は迷ったがちょうど通信制高校も夏休みだしついて行く事にした。

 兄は仕事があるので来なかった。

 仕事がなくても来なそうだったが……。


 父から一応大検の勉強道具を持っていくように言われたので不思議に思ったが、確かに暇になったら困るので持っていった。

 あと、買ったばかりの

 「Charaのやさしい気持ち」

 という曲がどうしても聞きたかったので、このシングルCDとCDラジカセを持って行った……。


 種子島には飛行機で行った。

 鹿児島で乗り換えて二回飛行機に乗ったが、滅多に乗れるものではなかったので楽しかった。


 種子島と言っても、ばあちゃんちは森の中にあるので、海まで行くには車がないと行けなかった……。

 それに今回は遊びで来たわけではないので退屈だった。

 葬式は自宅で行い簡素なものだった。

 当たり前だが来訪者は知らない人ばかりだし、同世代の人間はいなかった……。


 三日目の朝、起きたら両親はいなかった。

 ばあちゃんに両親はどこに行ったのか聞くと、まさかの一言を言われた。

 「帰ったよ!あんたはここで勉強しろってお父さんが言い残してったよ!」

 本当はばあちゃんは種子島弁だったが、よく憶えてないので真似する事は出来ない……。

 

 俺はやられた!

 と思った。

 この時代に

 「島流し」

 にあったのだ。


 こうして、ばあちゃんとの二人暮らしを余儀無くする事になった……。

 ばあちゃんは喜んでいたが、俺は毎日暇で仕方がなかった……。

 テレビは電波が悪いし見れるチャンネルが元々少なかった。

 父の目論見どおりにするのも癪だったが、やる事がなさ過ぎて俺は大検の勉強をひたすらやった。

 CDは一枚しか持ってきてないので

 「Charaのやさしい気持ち」

 をひたすらリピートして聴き続けた。

 種子島にいる間に千回以上は確実に聴いたので、種子島を思い出すと自動的に

 「Charaのやさしい気持ち」

 が頭の中に流れてくる……。


 ばあちゃんが知り合いに頼んで二回ほど海に連れてってくれた。

 島なので貸し切り状態の海だったが、一人で泳いでもあまり楽しくはなかった……。

 

 風呂は薪で炊く五右衛門風呂だった。

 風呂はばあちゃんが炊いてくれるのでよかったが、一番きつかったのはトイレだった……。

 トイレは離れにあるのだが、水洗ではなく、いわゆるボットン便所だったので虫が凄かった……。

 殺虫スプレーを沢山撒いて事を済ませるのだが、小便はともかく大便はきつかった。

 トイレに関係なく、森の中に家があるので夏だった事もあり、家の中も外も虫だらけだった……。

 デカいムカデが出た時はさすがに驚いたが、ばあちゃんがハエタタキで倒してくれた。

 ゴキブリもなんだか地元で見るよりサイズがデカくて、しょっちょう出てきた。

 だが慣れというのは恐いもので、しばらく経つと大して虫も気にならなくなっていった……。


 唯一の楽しみはタバコだけだった。

 タバコはやめていたが、暇すぎて吸わずにはいられなかった……。

 森の道を五百メートルくらい進んで道路に出ると、そこにタバコやら雑貨類が売ってる店があったのでそこで買っていた。

 森の道は蛇とか出そうなので怖かったが、ちょっとした散歩になるので気晴らしにはちょうどいい距離だった。

 

 島というだけあって、店は不用心だった。

 声を掛けないと店の人は出てこないので、盗もうと思えば色々盗めたが、さすがにやめといた……。

 以前の俺ならきっと盗んでいただろう……。


 

 一ヶ月くらい勉強したので、もう百パーセントと言っていいほど大検の化学と地学は受かる自信がついた。


 やる事もなくなったので家に電話して帰る事になった。

 ばあちゃんは寂しがっていたが、ずっといるわけにもいかないので仕方がなかった……。

 

 ばあちゃんに飛行機代をもらって、俺は地元へと戻った。


 ついでに言っとくと、この後、中学の同級生のボコボコが高校を中退したから大検を受けるというので、一緒に受けに行った。

 俺は両方とも受かったが、ボコボコは一科目だけ受からなかったので来年も一科目だけ受けると言っていた。


 これによって俺は、通信制高校の二年生課程を終えれば大検合格となるので、ボコボコは追い抜き、他のみんなにも追い付ける状態にまでなった……。

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