十八歳
七月十九日、俺は朝から機嫌が悪かった……。
この日、俺は十八歳になったのだが、十五歳からの三年間を振り替えって、俺の青春っていったい何だったんだろうって考えていた。
その内の二年間は中に入っていたし、彼女もいないし、未だに周りにはついていけないわで、自己嫌悪に陥っていたのだ……。
夕方、上尾駅前を一人で歩いていると、青ギャングのメンバーが四人駆け寄ってきた。
「お疲れ様です!」
と挨拶してきた。
俺は青ギャングのメンバーじゃないので、勘違いしたのか、それとも分かってて挨拶してきたのかは分からない……。
一人、小学校が一緒だった男がいたので元西中の一つ下だと分かった。
「先輩!喧嘩しに行きましょうよ!」
と言って来た。
この日じゃなければ断ったかもしれないが、この日は機嫌が悪かったので
「いいぜ!」
と言ってしまった……。
俺達は上尾の東口に渡った。
どうせなら強そうな奴と喧嘩しないと面白くないので、まずはロータリーに停まっていたアメリカンの大型バイクに乗った奴を指さして
「あいつにしようぜ!」
と俺が言った。
「い、いや、あれはさすがに……」
と青ギャングの後輩の一人が言ったが関係なかった。
だが、近寄ろうとしたら
「ドドドドド……」
と大きな音を出して走って行ってしまったので諦めた……。
今度は改札口に行ってみると、よさげな二十五歳くらいの二人組の男達がいた。
一人は細身で弱そうだったが、もう一人は体格のいい坊主の男だったので、俺はそいつらに的を絞った。
「おい!あいつらにしようぜ!あいつらに声を掛けてきてくれ!」
「分かりました!」
と四人で向かっていった。
俺は少し離れた所で様子を見ていた。
だが四人して弱そうな方に声を掛けに行ったので、おい!
って思った……。
喧嘩の売り方も
「ちょっと悪いけど来てくれ!」
という謎の喧嘩の売り方だった。
当然、強そうな坊主な方にすぐに気付かれ
「なんだ、てめえら!」
と怒鳴られた。
青ギャングの四人はビビってしまったようで固まってしまった……。
やれやれ!
と思って俺が坊主頭の前に立ち
「喧嘩売ってんだよ!」
と言うと坊主頭が
「おまえ、いくつだよ?」
と聞いてきたので、本当は今日で十八歳だが
「二十歳だよ!」
と答えた。
坊主頭はなぜかふっと笑ってから大きな声で
「なめてんのか!てめ……」
言い終わる前に俺は右ストレートで口の辺りを思いっきり殴ってやった……。
「ガス!」
坊主の男はひるまず俺の胸ぐらを掴んできた。
俺は残念、ハズレだと思った。
力はあるが喧嘩慣れしていないタイプだと瞬時に分かったからだ。
もう一発顔面を殴った……。
一発目はしゃべってる途中で殴ったからか、坊主の男の口が歯で切れたらしく、血がけっこう出ていた。
すごい力で押されて俺はもつれて壁によりかかるように低い体勢になった。
上から胸ぐらを捕まれてる体勢なので、ボタボタとなかなかの量の血が俺のシャツに垂れてきた。
「俺の血だよぉ……」
と言ってきて、なかなか乗れる男ではあったが、殴って来ないのでつまらないと思った。
ふと周りを見渡すと、改札口の所なのでびっくりする程の野次馬に囲まれていた。
だが血がすごかったせいか、誰も止めて来るものはいなかった。
俺はまずい!
これは警察が来るのは時間の問題だと思った……。
交番がすぐ近くにあるからだ……。
案の定、警察数人がすぐにやってきた。
警察が来たからか、坊主の男が俺を離したので俺は走って逃げ出した。
青ギャングの後輩達は、なぜか誰も逃げようとしなかったので、これはまずいかもと思った。
人混みの中を走ったが、追いかけてくる様子はなかった……。歩いてる二人組の背中ごしに
「さっきの喧嘩すごかったなあ……」
と話している二人組の声が聞こえた。
そいつらを追い抜いたので、これじゃあ、俺が喧嘩に負けて逃げてるみたいに思われるじゃないか!
と思ったが仕方ないと思った……。
駅前の商店街の方へ行くと、青ギャングの格好をした、元西中生の俺と同じ歳のまさやに会った。
まさやは俺の返り血を見て驚いた様子で
「どうしたの?」
と聞いて来たので軽く事情を話した。
「警察が来たら俺が止めとくから早く逃げて!」
ってまさやが言ってきたので、俺は本当かよ?
って思ったのと、そんな事したら捕まるよ!
って思ったが、もうどうせ追っては来ないと思ったのでかまわず逃げた……。
まさやがみんなに話したようで、この事は問題になった。
結局、四人は警察に俺の事を話した為、怒った元西中の頭の銀林が四人をぶっ飛ばしたらしい……。
元太平中のとも先輩からケジメは取っといたから!
って言われたけど、ケジメなんか取っても警察に言われたから俺はいずれ捕まるので意味がないな!
って思った……。
約二年前の強盗の時のようにすぐ捕まえに来るかと思ったが、警察はこの件では俺を捕まえには来なかった……。




