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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
二回目の少年院を出て
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ピンク頭とモヒカン(後半)

 

 俺と仲の良かった橘高校の一年の女子高生グループの中に、優香という子がいて、一言も話した事はないが俺はこの子の事を気に入っていた。

 背が高くて、コインのネックレスを付けてて、気が強そうだが俺好みの顔の子だった……。

 

 

 

 上尾の駅前を歩いていたら、ピンク頭のハーフっぽい男が突然

 「三頭脳さんですよね?」

 と話しかけてきた。

 何だこいつは?

 と思ったが若そうなので高校一年生かと思ったら

 「自分、石南の三年で三頭脳さんの後輩です」

 と言ってきた。

 中学生だった……。

 俺とは入れ違いなので知らなかった。

 つまり、河童先輩の弟や俵の一個下という事になる。

 

 ピンク頭は

 「噂をずっと聞いてたから会いたかったんですよ!」

 と嬉しそうに言ってきた。

 俺は驚いたが、俺の後にも気合いの入ってる奴が出てきた事に、嬉しい気持ちもあったのは確かだ……。


 このピンク頭の友達三人(同じ中学)が、当時、全国的に流行っていた

 「親父狩り」

 という強盗行為を行い、二人は少年院に入り、一人だけ鑑別所で済んで出てきたと言い出した。

 我が後輩ながら、なんて悪い奴らなんだと思った。

 俺でさえ、この時期にはまだ少年院には入っていなかったからだ。

 

 さらに少年院に入った一人は、俺がかつて爆竹を投げ込んだ、団地に住む反社会勢力の人の息子だと言うから驚いた。

 爆竹の件は口が裂けても言えないな……って思った。

 


 運良く少年院に行かなかった男が、ピンク頭の代の頭だと言い、

 「今度連れてきますよ!」

 と言ってピンク頭は去って行った……。


 

 しばらくして、俺の住む団地内を歩いていると

 「三頭脳さん!」

 と、どこからともなくこないだのピンク頭が、見た事のないもう一人の男と一緒に現れた。

 「こいつがこないだ言ってたうちの頭です!」

 紹介された男が

 「どうも初めまして、もつと言います!」

 「もつ」

 と名乗ってきた男は確かに中学生にしては体格がよくて強そうだった。

 もつは髪の真ん中だけ二、三センチ残したモヒカン頭で気合いが入っていた。

ん?

 ピンク頭とモヒカン?

 どっかで聞いた事があるような……。

 

 

 ピンク頭はレストランのショーケースからケーキを大皿ごと盗んでくるような男で、もう一人のもつは、先輩関係なく誰とでも喧嘩してみたい!

 というタイプの男だった。

 中学時代の俺を二人に分離したような奴らだなって思った……。

 



 焼きそば頭と久しぶりに会うと、二年前から付き合ってる子とまだ付き合っていた……。


 こないだ康恵に助けを求められた話をすると、焼きそば頭は気に入らなかったみたいで

 「そいつら、どっちも呼び出そうぜ!」

 と言い出した。

 俺はなぜかこの時、親友エバが無駄に持っていた木刀の黒い物(黒刀と呼んでいた)を借りて持っていた。

 使用目的はなく、なんとなく持っていただけだった。

 エバは

 「俺は武器は使わない!」

 という割には昔からカイザーナックルを持っていたり、釘バットというバットに釘を大量に刺した物を作ってみたり、変わった面があった。

 

 「お疲れ様です!何してるんですか?」

 とピンク頭がどこからともなく現れた……。

 

 現れたピンク頭が、都合良く俺の一個下の原田の家を知っているというので、原田を呼ぶ役はピンク頭に任せた。

 原田と揉めてる上尾の東口の一個下の方は、焼きそば頭が連絡先を知っていたので、焼きそば頭が呼び出した。


 三十分くらい経った頃、遠くからバイクのエンジン音が聞こえてきた……。

 エンジン音はどんどん近付いてきた。

 近付いてくると、すごい数だと分かり、暴走族のようだった……。

 これはもしかして!

 と思っていたら、十台くらいのバイクが俺達の目の前にやってきて停まった……。

 リーダー格っぽい、体格がよく長髪を後ろで縛ってる男が焼きそば頭に挨拶し、俺にも

 「お久しぶりです!」

 と言ってきたが、正直全員見覚えがなかった……。

 黒刀を持ってる俺に驚いている様子だった……。

 

 程なくして、ピンク頭が原田を連れてきた。

 そこからは俺が仕切った。

 「何があったか知らないが、原田!この中から一人選んでそいつとタイマン張れ!」

 上尾の東口連中のリーダー格に

 「それでケリでいいな?」

 と聞くと

 「かまいません!」

 と言ってきた。

 俺はこないだ今町が一つ上のエバを選んだ件があったので

 「俺か藤井(焼きそば頭の事)でもいいぞ!」

 あと、これは冗談のつもりだったが

 「ピンク頭でもいいけど、こいつは中坊だから黒刀ありだからな!」

 って言ったら、原田はまさかの即答でピンク頭を指名した。

 中学生を指名するなんて、こいつにはプライドがないのかって思った……。


 原田は抵抗する様子がなく、ピンク頭に黒刀でボコボコにやられて終わった。

 せっかく俺がチャンスを作ってやったのに、原田は馬鹿だと思った。

 東口連中の弱そうな奴を指名して、勝てばそれで終わったのに、俺は残念だと思った……。

 みんな、これには興ざめっぽくなったが、解散した。

 焼きそば頭が

 「その黒刀貸してくれ!」

 というので貸したら木に叩きつけた。

 「バキ!」

  と音がして簡単に折れた。

 「ごめん!折れちゃった!」

 って笑ってたけど、俺のじゃないのにどうすんだよ!

 って思った……。

 弁償させられたら嫌だったので、エバには兄が喧嘩で使って折った!

 と嘘をついたら信じていたので未だにそういう事になっている……。




 別の日、ピンク頭とモヒカンのもつにまた団地内で会った。

 もう一人、細身だが百八十センチくらいの緑頭の男も一緒にいて、その男もピンク頭と同じ中学の同級生で、俺に挨拶してきた。

 俺は、俺の代より全然悪いなって思った。


 もつが

 「三頭脳さんの喧嘩が見てみたいです!」

 と言い出した……。

 正直あまり喧嘩はしたくなかったが、威厳を保ちたかったのと、ちょうど一人説教したい奴がいたので

 「いいぜ!」

 と言った。


 相変わらず同じ歳の人達の話にはついていけなかったが、外の生活自体にはだんだんと慣れて来ていた……。


 

 説教したい奴というのは、俺と元同じ中学の一つ年下の加藤という百八十センチ以上ある男だった。

 康恵に頼まれて助けに行った時に原田と一緒にいた男である。

 加藤は、確かに関係ないと言えば関係なかったが、その後、街中でしょっちゅう見かけても俺に挨拶して来なかったので気に入らなかったのだ。

 以前の俺と違って、ぶっ飛ばす程でもなかったのだが、つねが俺の喧嘩が見たいというので、やる事にした。

 ピンク頭、モヒカン、緑頭に加藤を探すように頼んだ。

 加藤は近くのコンビニで仲間と溜まっていたらしく、三人は驚く程簡単に見付けてきて俺の前に連れてきた……。



 俺はやると決めていたので、話す事なくツカツカと歩みより、加藤の顔面に右ストレートを放った。

 「ガン!」

 加藤は俺の両肩に両手を乗っけてきて抱き込むようにして押してきた。

 やれやれ、相変わらず喧嘩慣れしてない奴はこの動きをしてくるんだなって思った。

 だが喜連川少年院で鍛えあげた俺の足腰はビクともしなかった。


 左手で加藤の首の後ろを大きく掴むと、デカい図体を下に押し、体勢を低くさせた。

 加藤の背中に右の肘鉄を二回

 「ガン!ガン!」

 と思いっきり食らわせると加藤は崩れ落ちて倒れた。

 「正座しろ!」

 その場に加藤を正座させると俺はピンク頭達の所に戻った。

 なぜか、三人とも俺にビビっていた。

 でも、これで後輩に面子が保てたと思って俺は安心した……。

 

 ピンク頭に

 「加藤に次から俺に会ったらちゃんと挨拶するように言っとけ!」

 と言うと、ピンク頭は加藤に伝えに行った。

 

 それを聞いた加藤は立ち上がり、俺の所まで来て

 「次からちゃんと挨拶しますので、すみませんでした!」

 と謝って来て、この件は終わった……。



 その数日後にピンク頭と俵が捕まった……。

 ピンク頭が、コンビニでカゴいっぱいに商品を入れて逃げようとしたが失敗したらしい……。


 俵がコンビニの外で原付バイクで待っていたらしいのだが、俵もまさかピンク頭がそんなに盗んでくるとは思わなかった上に、長い事待ってて待ちくたびれてボケーっとしていた為に逃げ遅れたとの事だった……。

 

 俵はピンク頭に巻き込まれた形となったが、なんだか俺が中学の時にジッポライターを三十個盗んだ時に似てるなって思った。

 あの時も、もし捕まっていたら二人とも逮捕されていたのかもしれない……と思った。


 俵は鑑別所で出てこれたが、ピンク頭は赤城少年院(長期)に送られた……。

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