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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
二回目の少年院を出て
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恋愛年齢

 

 親友エバが通っていた橘高校に、俺の二個下の後輩の河童先輩の弟と俵が進学した。

 二人は百八十センチ近い身長になっていたが、中学入学の時に百七十センチを超えていた事を考えると、思ったより伸びなかったと言えた……。

 二人は世間についていけない俺を以前と変わらず慕ってくれたので嬉しかった……。

 橘高校の三年生の俺の友達の今町を俵は気に入らないらしく

 「あいつ、やっちゃっていいですか?」

 と言ってきたので、一応止めといた。

 俵は早くも橘高校の一年生を牛耳っていた……。

 るーぱんで会った一つ年下の中田の妹も橘高校に進学しており、河童先輩の弟と俵と仲良かった事もあって、俺も彼女を中心としたグループと仲良くなった。

 少年院に合計二年ちょっと入ってた上に童顔の俺は、同じ歳についていけない代わりに、二個下の男女問わず話があった。

 今思えば、少年院で特化した能力を身につけたとはいえ、二年間隔離されていたので恋愛年齢も含めた精神年齢が二個下と一緒だったから気が合うのは当たり前だった……。

 


 この頃、きれいめファッションというのも同時に流行っており、ワイシャツにスラックス姿の若者が多くいた。

 スーツ系ってのもあったらしいが、どっちみち高そうだし動きにくそうなので、俺はこれには便乗しなかった……。




 上尾に

 「青ギャング」

 というギャングが出来た……。

 俺の知る限り、青ギャング以外の名称はなかった。

 ピーク時は百人近い人間が水色の服を来て駅前に溜まっており、当時は異様な光景だった……。

 俺の知ってる先輩や同級生がこぞって参加していた。

 俺は真面目に生きていた上に兄から

 「あんな、数だけのチームには絶対に入るな!」

 と俺が入るのを全力で止めてきた。

 ……というのも

 「やっちまーズ」

 時代から頭をやってた俺の四つ年上の守さんが、この青ギャングの頭を努めており、兄とは犬猿の中だったのだ。

 街中で会うと、兄がこの守さんに鬼ガン飛ばして喧嘩を売るので、後輩達はヒヤヒヤもんだったと、巨漢の仁村先輩から俺が直接聞いたから間違いなかった。

 その割に兄と来たら、なぜか青ギャングの服を上下持っており、今いちこの人は何がしたいのか俺的にはよく分からなかった……。

 俺はその兄の青ギャングの服を、兄が仕事している間にこっそり着ていた……。


 上尾の駅前に行った時に、その青ギャングの中心にいた人物を見て、俺は心底驚いた……。

 ……俺が中学時代にぶっ飛ばして金を回したタリだった。

 イケイケで怖いもの知らず、体格も俺と似ていて、そこにいたのは、まさに捕まる前の俺そのものだった……。

 どういう事なんだって思った。

 俺が捕まっていなければ、間違いなく俺がいたであろう位置だ。

 俺がいたら秋森やタリはいなかったと思う。

 仕事と一緒で誰かが代わりにその位置に繰り上がって来るのかなって思ったり、色々とこれには考えてしまった……。



 今町が、俺が可愛がってる橘高校の一年生の女子グループの一人をヤリ逃げしたと聞き、俺とエバは激怒した……。

 今町は少し前に、自分の彼女を俺の知らない誰かに寝取られたらしいが、そんな事は関係なかった……。

 今までの付き合いも関係ないくらいムカついた……。

 さっそく今町を、上尾の地下公園と呼ばれる公園に呼び出した!

 ここは文字通り、住宅街にあるのに地下に公園が作られているので、外からは見づらいのだ……。

 たまたま会ったタリとイカつい顔の竜も付いてきた。

 今町は高校の友達と二人でやってきた。

 エバが今町に事情を説明し、俺が

 「この四人の中から一人選べ!タイマンでケリにしてやるからよ!」

 と言った。

 これは俺の今町への精一杯の優しさのつもりだった……。

 俺は何の関係もないタリと竜も勝手に巻き込んだが、二人ともやる気満々だった……。

 

 今町はあまりに長い事考え込んだので、俺ら四人のイラ立ちはピークに達していた。

 特に竜はこの後、何やら用事があったみたいで

 今町に直接

 「おめえ!いい加減にしろよな!こっちはイライラしてんだよ!」

 とキレていた。

 

 それでも決められない今町に、業を煮やした俺は

 「おまえ!あと一分以内で決めなかったら俺が相手だからな!」

 と伝えた。

 

 そう伝えた癖に、俺は馬鹿なのか少し離れた端の木に立ち小便しに行った。


 少し遠くからエバの声が聞こえてきた。

 「ああ!俺だと?この野郎!」

 ぶちギレたエバの声の後、

 「ドカッ!ゴスッ!ゴガッ!」

 と鈍く重い音が聞こえたが、小便していたので振り返る事が出来なかった……。

 

 小便が終わった後、みんなの場所に戻ると今町が倒れていてもう終わっていた。

 見たかったので、つまらなかったと思ったが、そういう目的の喧嘩でもないので仕方ないかなって思った……。

 同じ歳の人間にはやられたくないという今町の精一杯のプライドだったのだが、エバを選ぶなんて馬鹿な奴だなって思った。

 なんとか立ち上がった今町は前歯が折れてしまっていた。

 もう一人の友達に連れられて帰っていってので、俺らも解散した。


 数日後、今町の父親から俺とエバに手紙が届いた。

 内容を簡単に説明すると

 「三頭脳君とうちの子は仲がいいと聞いていたのにどうしたのですか?…………次は警察に被害届を出します!」

 という内容だった。

 今町にはちゃんとヤリ逃げの事を説明したのに、親にはその事は言ってなく、汚い奴だと思った。

 今町はそれ以来、俺らから離れていった……。

 いなくなった人間の親に説明しても仕方がないし、被害届も今回は出さないって言ってるので俺とエバは手紙を無視した……。

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