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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
二回目の少年院を出て
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天職

 

 俺は金がないのでバイトをする事にした。

 通信制高校は週に一度通えばいいので、バイトはしたい放題だった。

 レポート作成はいつやってもいいので、半日バイトするのがちょうどよかった。

 約二年前と違って原付バイクを持っているのでバイト出来る範囲も広がっていた。

 人と関わるのが嫌だったので工場系のバイトを探した。

 求人募集のチラシを見ていると、宅配の荷物をピッキングして詰めるというバイトが目に付いた。

 少し遠いが、俺が通ってる高校よりは近いし、時給も悪くなかったのでさっそく履歴書を書いて面接に行った。

 人が足りないみたいで、すぐに採用された。

 

 仕事内容は、一個ずつ発泡スチロールの箱がベルトコンベアで流れてくるので、それに品物を入れていけばよかった。

 一エリア九品あって、縦に三品、横に三品ずつあった。

 その品物ごとに数字のランプが光るので、数通り入れてボタンを押せば消灯した。

 箱の隙間に品物を入れていくので、リアルテトリスみたいで楽しくて仕方なかった……。

 テトリスで金がもらえるなんて天職だと思った……。

 慣れてくると、人が足りない時は二エリア同時に担当となるがそれもレベルアップみたいで面白かった。

 牛乳類がエリアにあると、時々十本ずつとか頼む人がいて、すげえな!

 って思った。

 この仕事を二年前に知っていたら、きっと根は真面目なようじと一緒に続けられたんだろうな!

 って考えたりしてせつなかった……。

 通信制高校だって、あの時は存在を知らなかったし、知ると知らないとでは人生が変わってくると思った……。

 おばちゃん達と仲良くなって、俺は真面目に仕事を続けた……。

 

 通信制高校に通ってる事もそうだが、バイトしてる事も一緒に住んでる家族以外の誰にも言わなかった……。

 俺が真面目にやってると馬鹿にされるというよりは、みんなのイメージを崩したくなかったという見栄からなんだったと思う……。

 


 大島は都内に行った……。

 同じ歳の奴らがかなり揉めたらしく、どうやら頭だった大島が調子に乗り過ぎて、みんなから嫌われて責められたという話だった。

 秋森とイカつい顔の竜と連絡を取ると、元西中の男達と遊ぶというので俺もついていった。


 三人、四人と合流したが、あんなに西中を嫌っていた竜が、西中の連中と仲良くしてるのが気に入らなくて、俺は最初は一言も話さなかった。

 途中で何も言わずに一旦帰ったが、やはり気を取り直して戻った……。

 戻って急にフレンドリーになった俺に、みんな不思議がっていたが受け入れてくれた……。

 その中にいた元西中のとしが

 「少年院って正座するの?」

 って言ってきたので、

 「俺が行った二ヶ所ではほとんどしなかったよ」

 と言うと

 「そうなんだ、いや、うちは子供の頃から飯の時は正座って決まってたから正座には慣れてるからさ!」

 俺はそうなんだ!

 って思った。

 当たり前だが、各家庭によって違うんだなって思った。

 食事マナーにはうるさいうちの父だったが、正座しろとまでは言われなかった……。

 あと、としが今はギャングが流行ってると言っていたから驚いた。

 ギャングって、あの俺でも子供の頃から知ってるアメリカのあのギャング?

 って思って、正直日本でギャングなんて大した事ないと思って馬鹿にした。

 俺の中のギャングって言ったら、拳銃持って強盗したり人を殺したりのイメージしかなかったので、日本でやっても子供騙しにしか感じなかったのだ……。

 

 なんとか頑張って話してみたが、やなり同じ歳の人間にはもう話がついていけなかった。

 恋愛話もやったやらないの話ばかりだし、DJとかパチンコとか車とか俺が全く経験してないので同じくついていけなかった……。

 一年半近くテレビも見ていないので、共通の話題がほとんどなかったのだ……。




 今町とエバと遊んでいたら今町に、俺と同じ中学の同級生だった康恵から連絡があり、何やら助けて欲しいという話だったので、俺は康恵とは仲が良かったので付き合う事にした。

 康恵と一緒にいたのは、俺と同じ中学の一個下の二人の男で、一人は俺が中学時代にエバと駅前で絡んだ百八十センチ超えの加藤だった。

 もう一人は原田という知らない男だったが、どうやら揉め事の原因はこの男のようだった……。

 上尾の東口の俺の一個下の人間と揉めてるようだった。

 二人を助ける義理はなかったが、康恵の頼みなので、相手に電話するように言った。

 最初、今町が話したがまるで効果がなかった。

 逆に脅されて終わりだった。

 次にエバが話したら、口論になっていた。

 電話で話してても拉致があかないから、呼び出そうと思って、電話を変わって俺が話した。

 「三頭脳ってもんだけど……」

 というと、間があって

 「もしかして、昔、本山先輩んちで暴れたあの三頭脳さんですか?」

 って言われて、ああ、あん時にいた奴かってなった。

 以前、上尾の西口の大石中から東口の上尾中に移った本山先輩んちに行ったら、上尾中の当時の頭の石山先輩ってのがちょうど遊びに来てて、揉めた事があったので、その時の事を言っていると分かった。

 「失礼しました!」

 とすぐに切られた。


 何だったんだ!

 とは思ったが喧嘩もなるべくしたくなかったし、康恵に対する面子も保てたので、俺に取っては万々歳の展開になってよかった……。

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