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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
一回目の少年院を出て
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すみませんでした。

 

 とも先輩が工具を持っていたので借りて、CBRのマフラーを外して直菅にしてみた。

 二百五十CCだが

 「オン!オン!オン!」

 とけっこういい音がした。

 しばらく俺は直菅で乗っていた。

 

 竜とカツアゲに行った。

 鴨川沿いでフスマ軍団の一人に会った時に、ちょうど高校生が通ったので、声を掛けた。

 すると自転車で真っ直ぐ逃げ出したのだ。

 俺はなぜかCBRから降りて

 「待てや!コラア!」

 と走って追いかけながら、とも先輩に借りたレンチをそいつの背中に向かって思いっきり投げた。

 見事に命中したのだが、コケなかったので諦めた。

 だが、俺がよそ見している時に竜とフスマ軍団の一人が

 「あっ!」

 と言ったので

 「どうした?」

 と聞くと、竜が

 「いや、さっきの奴、靴が脱げて止まったから、あのまま追いかけてれば捕まえられたよ。」

 と言われ、なんだよぉ!

 と思った。




 親友エバはNS-1に乗っていた。

 一緒に走りに行こうという事になり、親友エバの友達のキクりんがいたので、俺のCBRの後ろに乗せて走ろうとしたのだが、直菅なので乗ったかどうか分からなくて、置いていってしまった事があった。

 もちろん途中で気付いて戻って謝って乗せたのだが、後でようじからこの件でキクりんが文句を言っていた事を聞いた。

 気付かない訳がない。わざとだとか危うく怪我しそうになったとかだった。

 頭に来た俺はキクりんの所に行き

 「わざとじゃねえよ!」

 一応、今まではエバの友達だから気を使ってただけで、文句を言ってきたのなら話は別だった。

 「バキ!」

 殴ったらすぐ倒れて

 「悪かった!俺が悪かったよ!」

 と謝り続けてきたが、蹴っ飛ばして続けた。


 その時、どこからともなく同じ中学の一つ上の阿部先輩が現れ止めに入ってきた。

 「やめろ!」


 キクりんは運がいい奴だと思った。


 これを見ていたようじとエバの友達がこの時から明らかにこのキクりんを馬鹿にするようになった。

 一個下相手に情けないって事だったのだが、弱者って可哀想だなって思ったし、やったのは俺でおまえらがやったわけではないだろ!

 って思った。

 

 そのまま直菅で乗り続けていたら、親から苦情の電話があちこちからかかってきたからやめてくれ!と言われた。

 それと同時に、同じ団地内に住む「やっちまーズ」のケツもちの人からも直接、直菅はやめるように言われたので、渋々やめた……。

 


 夜中、みんなで団地内の商店街に溜まっていて、トイレに行った時に、トイレのドアを殴って破壊してやろうと思い、俺は助走して思いっきり右拳で殴った。

 中学生の時は学校のトイレのドアをよく殴って穴を開けていたので、今回は貫通させるくらいのつもりで殴った。

 「ガン!」

 いってえ〜〜〜!

 おそらく鉄板が入っていたんじゃないかと思うほど固くてビクともしなかった。

 俺の拳は割れてしまった。

 もちろん今でも割れたままになってる。

 あまりの痛さにしばらく右手は使えないと思った。



 俺は「やっちまーズ」の会費?を二ヶ月滞納していたので、巨漢の仁村先輩から払うように言われた。

 海岸先輩の支払いもまだまだ残っていたし、カツアゲしなければならないが右拳がイカれてしまっていたので、どうしたもんかと思っていた。

 そんな中、上尾市内と走っていると、かつて俺がぶっ飛ばしたタリが女と歩いてるのを見かけた。

 俺はもうなりふりかまっていられねえと思ってタリに

 「おい!」

 と声をかけた。

 「やあ」


 「やあ、じゃねえよ!おまえ悪いけど二万用意しろよ!」

 というと

 「二万は無理だよ。一万はなんとかするよ」

 と言ってきたが

 「はあ?二万じゃなきゃ駄目だ!」


 「二万は無理だよ」

 俺はムカついたので右手でぶん殴った。

 「ガン!」

 いってえ〜〜〜〜〜〜!

 マジで痛かった。

 タリがやり返してきたら負けると思った。

 幸いやり返して来なかったが、次の瞬間、

 「あんた!うちの息子に何してんの?」

 と、まさかのタリの母親が近くにいたのだ。

 「は?うるせえよ!ババア!知らねえよ!」

 とその場を去ったが色々やばかった。


 

 タリと元太平中の頭の大島の家は近いみたいで、大島の母ちゃんから呼び出された。

 「謝りに行くから親呼んできな!じゃないと、あんたまた捕まるよ!」

 と言われたので仕方なく母を連れてタリのうちに行った。

 大島の母ちゃんと大島も来た。

 例の五人から金を取った時に一万円大島が受け取った事をなぜか自白したみたいで大島も謝りにきたようだった。

 その時、大島の母ちゃんが

 「最近、うちに遊びに来ないけど、まったく何やってんだよ!」

 みたいに言われて、笑いが込み上げてきた……。

 おかしくて仕方がなかった。

 俺が笑いだしたので、大島も気まずくなったのか大島も笑いだした。

 これから謝るって時になぜ笑いだしたのか全く理解出来なかった大島の母ちゃんが

 「何がおかしんだよ!」

 とマジギレした。

 当たり前である。

 

 まず大島がタリとタリの母になぜか土下座した。

 「すみませんでした。一万円はお返しします」

 おい!何やってんだ!大島!一万円分けてもらっただけのおまえが土下座したなら、ぶん殴った俺は切腹でもしないといけないのか?


 大島が謝ったので、当然だが次は俺の番だという雰囲気になった。


 謝りたくなかったので、動かないでいると、大島の母ちゃんが

 「男だろ!早くしな!」

 と言ってきたので仕方なかった……。

 さすがにまた捕まりたくはなかった……。


 「すみませんでした」

 俺は生まれて初めて土下座した。

 その瞬間、悔しくて悔しくて涙が溢れて止まらなかった……。

 野球部の曽明の時もそうだが、なんで強い人間が謝らなくてはならないのだ……。

 

 海岸先輩に土下座の話は言ってないが、謝った話をしたら

 「馬鹿だな!一万円くれるって言うなら、とりあえず一万円もらっとけばよかったじゃん!」

 と言ってきた。

 全くもって正論である。


 そして本当はその金ではないが、俺が捕まってる時に大島が全て使い込んだって言えばよかったと後悔した……。


 後日、タリ以外の殴った二人の親もやってきたので、仕方なくその時も謝った。

 デブの母は

 「本当にあなたがやったの?うちの子は体が大きくて、とてもあなたがやったとは思えないんだけど!」

 とずっと言っていた……。

 

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