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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
一回目の少年院を出て
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十六歳の夏の思い出

 

 上尾祭りにイカつい顔の竜と二人で行ったら

 「こおら!悪ガキ!何してんだ?」

 といきなり誰かに声を掛けられたので見たら、一個上の元太平中のナンバー二の純先輩だった。

 純先輩は女の人と上尾を離れて暮らしているので、俺が出てきてから初めて久しぶりに会った。

 祭りも女の人と来ていて、俺らが挨拶するとどっかに行ってしまった。

 女の人はお腹が大きかったので、俺はそういう事か……と勝手に、純先輩が上尾から離れた理由を解釈した。

 俺らが何より驚いたのは、かなり太っていたからだ。

 これが幸せ太りってヤツなのかな?

 って俺は思った。


 適当に歩いていると、竜が突然、

 「あ!あれは!」

 と言い出した。

 祭りなので、人が沢山い過ぎてどこを見てそう言ったのかさっぱり分からなかった。


 竜に付いていくと、俺らと同じ年くらいの男二人の後についた。

 竜が

 「こいつ、あれだぜ!例の大島を襲った大宮連合の一人だぜ!」

 

 「え?何で知ってるの?」


 「橘高校(親友エバが通ってる高校)だからだよ」

 なるほど……、こいつは面白くなってきやがったぜ。


 ちなみにもう一人は元太平中で、俺が中学二年生の時に、太平中に遊びに行った時に給食を持ってきてくれた二人目のパシりの方だった。

 つまり、こいつらの戦力はほぼ一人しかなかった。


 俺と竜は二人の後ろに背後霊のごとくずっとついていった。

 声を掛けてこの場で絡んでもよかったが、ついていったらどうするのか、様子を見ている方が楽しくなってきたのだ。

 

 二人はとっくに気付いているだろう……。

 会話が全くないし、後ろを気にしている様子だからそう思った。

 というか、この二人、何でツルんでるんだ?

 まあこの元パシリ君も橘高校なんだろうけど、なんだか後ろから見てると、格好が合ってないし不自然な二人に感じた。

 

 不意に二人は華やかなメイン通りから外れ、裏通りに入って行った。

 もちろんついて行くと、どんどん人気のない方へと歩いて行った。

 俺はこいつはやる気だと思った。

 俺の個人的な考えだと、ビビっていたら絶対に人気のない方へは行かないはずだと思ったからだ。

 上尾の東口を歩いていたので、あまり地形が詳しくなかったが、ちょっとした広場に行くと、急に立ち止まって、そいつが振り返った。

 よし!竜!ここは俺に任せとけ!と思っていたら急にそいつは土下座しだした。

 「すみませんでした!十万円払うので勘弁してください」

 俺はなんて嘘臭い土下座と台詞なんだと思った。

 俺はやる気満々だったので、

 「おまえ!ふざけんなよ!タイマンでいいからかかってこいよ!」

 と言うと

 「いや、勘弁してください。十万円払います」

 話にならないと思った。

 こんな奴が大宮のどこぞの中学の頭なわけがない。

 興ざめした俺と竜は

 「じゃあ学校まで取りに行くから、今月中に用意しとけよ!」

 とだけ言って去った……。

 


 

 その日はクソ暑かったので、海岸先輩と上尾の東口にある水上公園に二人で行く事になった。

 一旦は俺のCBRで行こうとしたが、水上公園に行くには国道十七号を渡らなければならなかった。

 この国道十七号には白バイがよくいるので、危険だからやっぱりバスで行こうという事になり、CBRを上尾の東口のロータリーに置いてきた。

 バスで向かっていると、海岸先輩が

 「おい!見ろよ!三頭脳!」

 と指差してきたので、そっちを見ると白バイがいた。

 俺らは危なかったぜ〜!

 と思った。

 バスで来てよかったと思った。

 だが水上公園に着いた時に俺は、水着を海岸先輩の分も含めてCBRのシートの下に忘れてきた事に気付いた。

 海岸先輩は

 「何やってんだよ!」

 と言っていたが、

 「まあいいや!買うのも馬鹿らしいからトランクスで入ろうぜ!」

 と、言い出した。

 俺もそれはいい案だと乗って、まさかのトランクスで水上公園で泳いだ。

 二人とも派手なトランクスなので、そんなに違和感はなかった。

 水の中に入れば、ますます分かりはしない。

 今となってはいい思い出になった。


 だが、みんなで溜まってる時に、俺がその話をしたらみんな爆笑したので、海岸先輩が怒って俺の首を締めてきた。

 冗談かと思ったらずいぶん長い事やってきたので、苦しくて死ぬかと思った。

 

 そのままみんなでしゃべっていると、海岸先輩が突然俺に

 「おい!ストリートファイトしようぜ!」

 「バチーン!」

 といきなり俺の顔面を殴ってきた。

 ……マジでいってえなぁと思ってさすがにそれはないでしょ?

 と思っていたら

 「ごめん!」

 と謝ってきた。

 どうやら当てる気ではなかったらしい……。

 それを見ていたおしゃべり好きの山先輩は

 「そりゃあねえよな?」

 と言ってきた。


 実際、わざとなのか違うのかはっきりしなかったが、次の日、けっこう腫れて痛かった……。

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