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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
一回目の少年院を出て
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バレバレ

 

 昼間、駅前にいつものようにみんなで溜まっていると、少し離れた場所に黄色達がいるのが見えた。

 俺はCBRに乗って、黄色がいる方に行き手を振った。

 黄色も手を振り替えしてきた。

 その瞬間、何の拍子かハンドルがカクッと九十度に曲がって、ものの見事にステン!

 と転んだ。

 ゆっくり走ってたので衝撃はそうでもなかったが、めちゃくちゃ恥ずかしかった。

 恥ずかし過ぎて、海岸先輩とおしゃべり好きの山先輩に

 「早く!早く(助けて)!」

 と手招きすると走って起こしに来てくれたから嬉しかった……。

 

 CBRを手に入れてからカツアゲが楽になった。

 だいたい、ようじかイカつい顔の竜を後ろに乗せて走っていた。

 

 ようじを後ろに乗せて走っていると、見覚えのある赤いレジェンドが走っていた。

 八個上の上松さんの車だった。

 あまり会いたくないが、多分俺に気付いているので無視するわけにもいかない……。

 近付くと運転していたのは上松さんではなく、巨漢の仁村さんで助手席には海岸先輩が乗っていた。

 巨漢の仁村先輩はまだ十七歳なので、もちろん無免許であった。

 車を運転出来るなんてすげえな!

 と思っていたら、パトカーが現れた。

 「ウ〜〜〜〜〜〜!」

 とサイレンを鳴らした。

 もちろん、ノーヘルで走ってる俺の方が狙いだ。

 だけど巨漢の仁村先輩は焦っただろう……。

 俺らがツルんで走ってるのを見られてるから俺が逃げてしまえば、自分達が追われるかもしれないからだ。

 パトカーや警察のカブに追いかけられるのはしょっちゅうだったので、俺だけ方向を変えた。

 パトカーが俺の方についてきてくれたのでよかった。

 俺の方に誘導して、レジェンドが見えなくなるまでパトカーをこっちに引き付けといて逃げ出した……。


 俺とようじは、喉が乾いたので市民体育館に行き自動販売機のジュースを盗んで飲んだ。

 取り出し口から手を突っ込んで取る事が出来る自動販売機がいくつかあったのだ。

 団地内の商店街の自動販売機には酒も盗める所があり、俺らはあまり酒は飲まなかったが、兄の代の人達や八個上の上松さんがよく飲んでいた。

 

 その何日か後、ようじに会ったら、ようじの顔に、赤く擦ったような傷があったので、俺がどうしたのかと訪ねると、


 「いや、大島にやられてさ……」

 と言い出した。

 石で殴られたから、こんな傷になったとの事だった。

 理由は忘れてしまったが、忘れるくらいに全然大した内容ではなかったのだ。

 最近俺がようじとツルんでる事を知ってて、大島の野郎!ふざけやがって!と思った。

 だがそれ以上に、やり返さなかったようじに腹が立った……。



 だんだん元太平中の頭の大島への怒りが溜まってきていたが、まだなぜか我慢出来た。

 大島をやってしまうと、よく分からないが何かを失ってしまうような気がしてならなかったのだ。

 

 イカつい顔の竜に呼ばれて俺達は久しぶりにチーム「ブラッツ」のメンバーで集まった。

 誰が言い出したのかは知らないが茶坊主がもうすぐ給料日だから四人で奪おうという計画だった。

 竜が一緒に働いていたから知っていたのだ。

 なので計画したのは、珍しく竜かもしれない……。

 フルフェイスを各時入手してきて被り、車で送ってもらった茶坊主を家に入るまでに襲うという、なかなか無茶な計画だったが、面白そうなのでこの計画に乗る事にした。


 俺と竜は、上尾市の日産通り沿いをCBRで走りながらフルフェイスを探した。

 この辺は会社が多いから、バイクで通勤して停まってるバイクのフルフェイスを狙おうというわけだ。

 思ったより簡単に見つかった。

 バイクにくくりつけてあるのは想定済みだったので、予め用意してきたナイフで紐を切って二つ盗んだ……。

 二つとも、目の部分にカバーが付いてないタイプだった。

 

 そして七月十五日、俺らは再び集まった。

 焼きそば頭の大島はフルフェイスを用意していなかったが、バンダナで顔を隠すから平気だと言い出した。

 まだ茶坊主が帰ってくるには早かったので、近場の少し隠れた所で話し込んでいた。

 竜が、給料日で浮かれて帰って来るだろうから襲われたら茶坊主はどんな顔するだろう……って面白がってた。

 どうやら一緒に働いてた割には、竜も茶坊主がかなり嫌いなようだった。

 

 大島が

 「この計画に名前を付けよう!」

 と言い出した。

 俺は名前なんかどうだっていいと思って、考えてるフリして何も考えないでいると、竜が

 「一九九五七一五計画にしよう!」

 それを聞いた俺は、深読みし過ぎて意味が分からなかった。

 ポケベルの文字にも変換出来ないし……、どう読んでも言葉に変換出来なかった。


 気を取り直して、盗んだフルフェイスを竜に被らせた。

 確かにこれなら目の部分しか見えないから誰だか分からない。

 続いて俺がフルフェイスを被ると、なぜかそれを見た三人が大笑いし出した。

 意味が分からなかった。

 笑われる要素が全くなかったからだ。

 三人はツボに入ったみたいで笑い転げていた。

 は?ふざけんなよ!何だよ?

 って思っていたら、大島がなんとかしゃべり出して

 「だっておまえの目、特徴あり過ぎておまえだってバレバレなんだもん!」

 と言い出した。

 そういう事かよ!って思い、鏡が見たかったがなかった。

 結局、これじゃバレるって事になって中止になった……。

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