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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
一回目の少年院を出て
73/117

CBR

 

 保護司の所には一応ちゃんと決められた日に言っていた。

 仕事をやめた事は言っておらず、そのまま仕事を続けていると嘘をついた。

 じゃないと金髪にしている事を言われると思ったし、色々面倒だったからだ。

 保護司は無口な人だったので、俺から話し掛けなければすぐに終わった。

 早い時は玄関で少し話して終わりなので楽だった。



 この頃、電話の番号で文字が打てるポケベルが浸透しており、俺も親に買ってもらった。

 黄色もポケベルを買って持っていたので、これで黄色といつでも連絡が取れるようになった。

 付き合っているわけではないので、

 「おやすみ」

 とか挨拶がほとんどだったけど毎日連絡して楽しかった。

 黄色だけでなく、「やっちまーズ」のメンバーとも簡単に連絡がつくようになって、便利な世の中になったと思った。

 


 イカつい顔の竜と茶坊主が来週から仕事を始めると言い出した。

 なんで茶坊主と竜が一緒なんだと不思議に思ったが、仕事内容を聞くと、まさかの俺がやってた解体の仕事だった。

 会社は違うが現場が一緒だったのだ。

 そういえば、何の偶然か知らないが、俺がやる少し前に海岸先輩も同じ現場で働いていたそうだ……。

 拘束時間が長いから絶対に続かないだろう……と俺は思った。

 だが案の定、竜は一週間くらいしか続かなかったが、茶坊主はやめなかった。

 俺は茶坊主の事をすげえ!

 などとはいっさい思わず、むしろ馬鹿な奴だと思った。

 うっとうしい奴だったので、これでほとんど出現しなくなると思うと、むしろそっちの方が嬉しかった。

 

 駅前でたまたまフスマに会った。

 「み、み、み、三頭脳!」

 となんだか以前にも増してドモりがひどくなっていたので心配になった。

 フスマは上尾南高校に通っており、黄色と同じ高校だった。

 元西中のナンバー二の

  「デラマン」

 も同じ高校みたいで

 「デラマンと△△が付き合ったんだよ」

 と俺に言ってきたが、俺はその子を知らなかったので

 「誰?」

 と言った。

 「い、い、いや、同じ中学だった△△だよ!」

 って言われたけど、彼女には失礼だが真面目に存在自体知らなかったので、話はそれで終わった……。



 駅前の大型ゲームセンターの前に、俺とおしゃべり好きの山先山輩と海岸先輩の三人だけでいた時、ゲームセンター内にあり、地下へと続くエスカレーターの方を見ながら海岸先輩が

 「ジャンケンで負けた奴があのババアのバッグを盗って逃げるってのはどう?」

 と言い出した。


 地下はパチンコ屋になっており、端の何台かは一階から見えたのだ。

 俺も覗いてみると、一番端の台に座ってる女の人が、確かにバッグを横の床に置いていた。

 だけど、ババアというのはあまりに可哀想だった。

 俺らよりは全然年上だが、三十歳前後できれいな人だったからだ……。

 

 俺はさすがに、これをやったら捕まると分かったので乗り気じゃなかったが、俺もおしゃべり好きの山先輩も断れずジャンケンした。

 「ジャンケン!……ポン!」

 俺が一発であっけなく負けたが、保険をかけといたので、負けた瞬間、近くにいた若い男二人組に向かって走って行き、一人を思いっきりぶん殴った!

 「バキャ!」

  ところが、近くに警備員がいて

 「おまえら、何してんだ〜!」

 と言って走ってきた。

 傷害罪は罰金いくらだの、最高何年懲役になるだの大人の刑罰の説明してきた……。

 

その時、俺が殴った奴に俺の横の髪の毛を捕まれた……。

 だが俺は警備員がいたから何もしなかった。

 もう一人の方が止めに入って、二人とも去って行き、警備員もやる事がなくなったので去っていった。

 すると、おしゃべり好きの山先輩に

 「おまえ!さっきのは茶坊主に髪の毛捕まれたのと一緒だぞ!」

 と言われ、さらに海岸先輩には

 「俺だったら警備員がいようがやっちまうけどな!」

 とか馬鹿にされた……。

 女の人のバッグをひったくる事は、どさくさに紛れて流せたけど、散々だった。

 実際、俺と同じ状況だったらやれるのかよ!

 って思った。

 海岸先輩は本当にやりそうだったけど……。



 どういう経緯かは知らないけど、今まで今いち誰の所有物なのかはっきりしなかったCBRを海岸先輩が所有する事になった。

 海岸先輩はすでにXJRに乗っていたので、俺に十万円でCBRを売ってくれると言い出した。

 すでに海岸先輩から五万円くらい借りていたのだが、金は後払いでいいというのだ。

 つまり、俺は何の前触れもなく、いきなりCBRが俺の物になったので、嬉しくて仕方がなかった……。

 これには太平中の頭の大島が羨ましがったが、四万円返さない大島が嫌いだったので、ざまあみろ!と思った。



 

 おしゃべり好きの山先輩が、思い出したように刺繍入りの学ラン代一万円返せと言ってきた。

 いつか言われるかなって思ったけど、正当な要求なので文句はなかった。

 俺は大島にいい加減四万円返すように言った。

 「分かってるよ……」

 と大島は相変わらずのらりくらりだった。

 その時、たまたま日曜日で一緒にいた茶坊主が

 「じゃあ四万円の内、一万円は俺が払うよ!」

 って言い出したので

 「じゃあ今すぐ寄越せよ!」

 と俺が言った。

 「今はないからちょっと待って!」

 と言ってきたが、俺はこの時、いい案が浮かんだ。

 「じゃあ、おまえ!山先輩に一万円払っとけよ!」

 

 「分かった」


 後日、おしゃべり好きの山先輩に確認したら、茶坊主から一万円ちゃんと受け取ったと言っていた。

 これで大島は何もしていないが、残り三万円になった。


 それで味をしめた俺は、閃いて茶坊主にまた会った時に

 「おまえ!海岸先輩がムカつくから五万寄越せ!って言ってたぞ!」

 と伝えた!茶坊主は驚いていたが海岸先輩にはビビっていたので

 「分かった!なんとか用意するよ!」

 と言ってきた。


 俺は話がややこしくなると困るので、ちゃんとこの事を海岸先輩に伝えた。

 海岸先輩は、金が返ってくるならそんな雑魚に嫌われようが一向にかまわねえよ!と言ってくれたので、後は話が早かった。

 最初はこの話を疑っていたっぽい太平中の頭の大島と茶坊主だったが、俺は嘘を真実に塗り替えていたので、問題なかった。

 海岸先輩と一緒に金を受け取りに行ったので疑いようなどなくしてやった。

 四万五千円しか用意出来なかったと、本当なのか何かの作戦なのかは知らないが、俺としてはただ海岸先輩への借金がその分減るだけなので別に構わなかった。


 茶坊主はこの後すぐ

 「姉ちゃんが帰ってきたからもう当分顔を出せない」

 とわけの分からない事を言ってきたが全然よかった。

 しょせん、元野球部の曽明と同じで一度は俺を警察に売った人間なのでいなくなってせいせいした。

 というより、元石南なのに、元太平中の頭の大島にべったりなのが気に入らなかっただけなのかもしれなかったが……。

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