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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
中学三年生(逮捕まで)
58/117

動けなかった……。

 

 その二日後(次の日は学校に行かなかった為)、フスマは俺に、曽明が最初は黙ってたけど、怪我の事を姉ちゃんに問い詰められて答えたら親に言われて、親が警察に被害届けを出したと聞いた。

 そんな事は最初から分かっていた。

 警察に言いそうな顔をしていたからだ。


 それと曽明はフスマに謝って来たから許したと言い出した。

 おまえ、何もしてねえじゃん!

 って思ったけど、元々フスマは関係なかったので、どうでもよかった……。

 

 だけど、想定外の事があった。

 「曽明が腕を骨折した」

 と聞いた事だ!

 え?あれで!いつ?

 

 あの時しかない!

 と思った。

 前蹴りで吹っ飛ばして、縁石まで飛ばして時だ。

 あの時に右腕から縁石に落ちて折れたのだ。

 それ以外に考えられなかった……。


 さすがにそれはやり過ぎたと思った。

 それに、このままでは逮捕されると思った。

 まあ鑑別所で出てこれるだろうが、卒業前のこの時期、貴重な一ヶ月を使いたくなかった。

 

 

 俺は、一人で謝りに行っても何の意味もない事を分かっていたので、両親に詳細を言って一緒に曽明の家に謝りに行くのを付き合って欲しいと頼んだ。

 俺の両親は普通に応じてくれた。


 その日の夕方、三人で野球部の曽明の家に謝りに行った。


 骨折させられたので、曽明の両親はめちゃくちゃ怒っていたが、曽明が和解の方向に話を進めてくれたおかげで、徐々に曽明の両親の怒りは収まっていき(仕方なくだと思うけど……)

 「今回は大目に見るが、次は告訴するからな!」

 と言われたが、その時はその意味はよく分かっていなかった……。

 

 

 最後は曽明と握手して、和解して終わった。


 

 次の日の給食後の休み時間に、昨日和解したばかりなので、本来はまた言う必要などなかったのだが、俺は生徒会長と蛍に、俺と野球部の曽明が和解した事を伝える為に、わざと二人の前で


 「悪かったな!曽明!」

 と再び謝った。

 すると

 「こちらこそ、なんか三頭脳をムカつかせたみたいですまない」

 そう言われて、骨折させたのに、この人は何て心の広い奴なんだと思った。

 その時、あきらかに生徒会長と蛍がこのやりとりに耳を傾けてる事に気付いた……。

 本当はこのタイミングで、生徒会長にも謝りたかったのだが、彼氏をここまでやられて許してくれるはずがないと思い、謝る事が出来なかった……。



 その休みの残りの時間、俺は四組のベランダで四組の方を向いて、ボケッとしていた。


 そうしたら、休み時間を終えるチャイムが鳴った時に、こっちに向かって来る、生徒会長と蛍が見えた……。

 

 不意な事だったので、俺は蛍に緊張して動く事すら出来なかった……。

 とりあえず、動く事が出来ないので、蛍を間近に見るチャンスだと思い、俺はそこに固まった(というか、それしか出来なかった)。

 てっきり怒ってる顔をしているのかと思っていたら、二人は、物凄く気まずい顔をしていた。

 気まずいなら、何でここをわざわざ通ったんだよ……。

 二人共、廊下側の席だから遠回りなのに……。

 とは思ったが、俺は幸せだった。

 ベランダはそんなに幅があるわけではない、

 神は蛍を間近に見せてくれたのだと思った……。


 この時の二人の顔を、俺は生涯忘れられなくなった……。

 

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