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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
中学一年生まで
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噂の二人

 

 同い年で、やたらと噂で名前を聞く上尾西中の生徒が二人いた。

 西中というのは、俺の通う大石南中学校と同じ上尾市の西側にあり、駅に近いので上尾市全体から見ると中央辺りの位置に存在する。

 その西中を囲むように西側には、大石中、大石南中、大谷中、太平中、南中と計六校の中学校がある。

 上尾市には南北を走るJR高崎線があり、駅の改札が西口と東口にある。

 さらにそれに平行するように国道十七号があるので、西と東ではっきり分かれていた。

 その為、西側の端のエリアに住む俺達には東側の情報はほとんど入って来なかった……。


 噂の一人目はスキンヘッドの黒田、この男は俺と同じ小学校なので知っていた。

 なかなか体格のいい生徒だった。

 小学校時代は、そんなに悪ガキというイメージはなかったが、中学生になって突然グレだしたらしい。

 スキンヘッドにして普通に学校でタバコを吸ってるとか……。

 このスキンヘッドの黒田には、三つ上の兄がいた為、その噂は俺の兄の世代にも響いていた。

 なので、団地内に溜まっている兄の友達に会うと

 「おまえ、西中の黒田の弟に負けてるぞ!もっと気合い入れろ!」

 とよく言われていた。

 正直言って、俺にとっては迷惑な話だった。

 人にはそれぞれペースというものがあるのだ……。


 もう一人の噂はもっと凄かった。

 銀林という名前なのだが、上尾の全中学の一年生で、一番強いと言われていた。

 入学式で二年生、五人に絡まれたが返り討ちにしただの、西中の頭の三年生とタイマン張って、引き分けただの、

 「ろくでなしブルース」

 に出てくる

 「鬼塚」

 みたいな政権を一年に作り上げてるだの、

 「本当かよ!」

 と言いたくなるような内容ばかりだった。


 ある日、俺は駅前のキンカ堂というスーパー内にある、ゲームセンターで

 「ストリートファイターⅡ」

 をやっていた。

 対戦ゲームなので、向かい側にもう一つゲームが置いてあって、金を入れればいつでも対戦出来る。


 地元の団地内の、安いゲームセンターで鍛えた俺はこのゲームが得意だったので、駅前まで遠征に来たのだ。

 この日は何人も対戦してきたが、まだ一度も負けてなかった。


 だが、やたらと強い奴が参戦してきて、俺はあっさり二連敗して負けてしまった。

 悔しくて、もう一回戦うか座ったまま考えてると、たった今、対戦し終えたばかりの対戦相手の男が、勝ったから続きが出来るのに、席を離れて俺の所にまでやってきた。


 俺が座ったまま見上げたその男は、茶髪で推定身長百七十五センチくらい、体格も骨太そうで強そうだ。

 その男はどう見ても高校生にしか見えなかった。


「三頭脳だよね?俺、西中の銀林って言うんだ、よろしくな!」

 と言ってきた。


 俺は驚いて声が出なかった。

 え?

こいつが西中の銀林?

なんで俺の事知ってるんだ?

というか、一年でこのガタイ、反則だろ!

 そんな事を思っていると、銀林はゲームの続きをやりに席に戻って行った。


 これはあながち、噂は嘘ではないかもしれない……。

 結局、俺は何も答えなかったので無視した形になったが、ゲームの対戦で負けてムカついていたので、そのまま声をかける事なく、その場を後にした……。

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