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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
中学三年生(逮捕まで)
38/117

家庭裁判所

 

 「み、み、三頭脳、い、いつも午前中は何してんだよ?」

 フスマ(小学生時代のガキ大将)が話し掛けてきた。

 テニス部の顧問と闘った後くらいから、たまに大した理由もなく話し掛けてくるようになった。

 ちなみに、どもってるのはビビってるわけではなく、彼の癖である。


 「ん?午前中はだいたい寝てるよ」


 「そ、そうか」

 いつもだいたい一言二言でいなくなる。

 何なんだ?あいつ?

 それにしてもデカい図体なのに、ドモリ癖、なんともチグハグである。




 俺は茶坊主をいじめていた。

 例の俺が短ランを買ってくるように、紙に書いて脅したら、警察に被害届けを出した男である。

 とはいえ、また警察に言われたら困るので、廊下とかで会うと

 「てめえ、俺の視界に入るんじゃねえ!今すぐ消えろ!」

 と脅すくらいである。


 この茶坊主のいる、一組に遊びに行った時、たまたま視界に茶坊主の姿が映り、イラッとして我慢出来なくなり、席に座ってたこいつの顔面を思いっきり蹴っ飛ばしてやった。

 茶坊主は顔を押さえながら、どこかに走っていった。

 密告したければ、密告すればいい、一発くらいではどうせ捕まらないと思った。

 だが、警察には言わず、先生に言ったらしい。

 生活指導の先生が俺の所にやってきて

 「今後、おまえがあいつの半径五メートル以内に近付いたら、あいつは家に帰っていい事にしたから近づくなよ!」

 と、わけの分からない事を言ってきた。

 「診断書取ったから、今後、半径五メートル以内に近付いたら警察に被害届けを出す」

 というなら、まだ脅しになるが、視界から消えて欲しい俺としては却って好都合な話だった。

 勝手に帰れよ!

 と思った。


 こうして石南では、俺と茶坊主の二人だけに、謎の校則が出来たのだった……。




 「カメレオン」

 という漫画に

 「学生証狩り」

 というエピソードがあるのだが、俺は真似してみたくなったので、さっそく一人で、大谷中があるエリアの市民体育館付近に赴いた。

 本当は大谷中の頭かナンバー二と言いたい所だが、サッカー部の今町(動物園に一緒に行った奴)と同じ小学校で、俺に紹介し知り合いなので、適当な奴に狙いを定めた。


 「おい!おまえら三年か?」

 さすがに一、二年生はやりたくなかった……。


 「ハイ?そうですけど!」

 二人組の男子生徒がそう答えた。


 「悪いけど、学生証出せや!」

 すると、その内の一人がびっくりするくらい簡単にバッグから出して渡してきた。

 受け取って、すぐ立ち去った。

 なんだ、つまらねえの……


 少し歩いて確認すると、二年生と書いてある。

 これには

 「カチン」

 と来て、すぐさま引き返した。


 走って行って、学生証を渡した方の男子の鼻っ面をぶん殴ると、ぶっ倒れて鼻血を出した。


 「てめえ、なめてんのか?今の学生証を出せよ!」


 すると、鼻を押さえながら渋々、再びバッグから取り出して差し出した。

 俺は受け取ってその場を立ち去った。


 持って帰った二種類の学生証を、太平中の頭の大島に見せると

 「誰だよこれ?あんまりカッコよくないから、これは(学生証狩り)やめた方がいいよ」

 とまさかの駄目出ししてきたので、俺は大いに傷付いたし、恥ずかしくなった。


 次の日、学年指導の先生に

 「おまえ昨日、大谷中の生徒の学生証取ったろ?別に訴えたりしないから、学生証だけ返してくれって保護者から連絡あったぞ!」

 と言われたが

 なんでバレてんだ!

 すでに学生証は捨ててしまったので

「俺じゃねえよ!」

 と言うと、なぜかこの件はこれ以上問題にはならなかった。



 この時代は原付バイクが簡単に盗めた。

 先輩に教わったのだが、前のカバーを手が入るくらい外して、エンジンキーの鍵穴から延びてる線を切るか外せば、あとはキックでエンジンがかかる。

 ハンドルロックは一人でも無理やり曲げられるのもあったが、大体、二、三人で力を入れれば曲げられる。

 その時に、タイヤだけ向きが変わらない失敗作もあったが、大体うまくいった。

 ただ、ガソリンを給油する事が出来ないので、ガソリンがなくなったら捨てるしかない。

 頑張ってガソリンを塞ぐ、鍵付きの蓋を取ってる物もいたが、なかなか難しい。


 盗んだ原付バイクを、学校付近に隠しておいて、帰りもそれに乗って帰っていたら、狭い道で二年生が横に広がってるので通れない。

 「ビ・ビ〜〜〜」

 とホーンを鳴らしても、どかない。

 近付けばどくと思ったが、それでも全然どかない。

 仕方なく、さらに前に行ったら、少し轢いてしまった。二年生は驚いて振り返った。

 あとに引けず、

 「邪魔なんだよ!どけよ!」

 というと、その二年生は渋々やっとどいたので通過した。

 

  次の日、またも生活指導の先生が

 「三頭脳、昨日、二年生をバイクで轢いただろ?」

 と言って来たので

 「俺じゃねえよ!」

 と言ったら、なぜかこの件もこれ以上問題にならなかった。





 コンビニの駐車場で、盗んだ原付バイクにまたがってボケっとしていたら、いつの間にか後ろから来た警察に捕まった。


 原付バイクにまたがっていたので、言い訳は聞かず、いつも通り、犬顔の黒海に取り調べを受け、写真や指紋を取って書類送検となった。


 だが今回はこれで終わらなかった。

 家庭裁判所から出頭命令が出たのだ。

 何回も書類送検されてるので、当たり前と言えば当たり前、むしろ呼ばれるのが遅いくらいである。


 出頭日に両親と浦和の家庭裁判所に行くと、審判が行われた。

 すごく簡易的なもので、俺と両親と裁判官と調査官しかいなかった。

 この裁判官は、滑舌が悪くて何を言ってるのかよく分からなかった。

 裁判官が事件内容等を読み上げてる中、今回はさすがに、何らかの処分を受けるんだろうと思って、覚悟してたら、いつの間にか終わっていた。


 ポカンとしてる俺ら三人に、調査官が

 「今回は裁判官から直接、注意されたという事で審判を終わります」

みたいな事を言われ、この時ばかりは

 甘い……甘すぎる……じゅうま…………少年法!

 と思った。

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