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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
中学三年生(逮捕まで)
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劇団スクール

 

 毎週日曜日に行われる劇団スクールのレッスンに、初めて通った日、金髪状態でオーディションに受かったので、てっきり金髪でいいのかと思っていたら、受付の人に

 

「中学生は金髪にしたら駄目よ」


 「え?そうなんですか?」


 この会話自体がおかしいんだけど、今日はいいけど、次回からは黒髪にしないと受けさせないと言われた……。


 レッスンを受ける前に、一時間、心身を鍛えるという名目で、男だけだが、空手を習わなければならい。

 キックボクシングをやっていた俺は、応用で、ある程度出来たので楽しかった。

 やりたい人は女の人でも出来るらしく、黒帯の女の人が何人かいた。

 部屋はテニスコートより、一回りくらい狭いくらいだろうか、長方形の部屋で、長い辺に当たる部分の一面が全て鏡張りになっていた。

 空手を終えると、この場所でレッスンを受けた。

 男が二十人くらいなのに対して、女はざっと三倍の六十人くらいいたと思う。


 発声練習から始まるのは毎回同じだが、レッスン内容は毎回違った。

 台本を読んでみたり、テーマを決めて次回までに考えてきて、体と言葉を使ってみんなの前で表現したり

 例えば

 「ディズニーランドの宣伝」

 というテーマだったら、ディズニーランドの売りを考えてきて、みんなの前で全身で宣伝する。

 など、様々な事をやったので、何かも新鮮で楽しかった。

 なので、この芸能スクールだけは、捕まるまで毎週(たまにサボってたけど)行っていた。


 

 金髪をやめるのは嫌だったが、親に多額のお金を払ってもらってるので、芸能スクールをやめるわけには行かず、仕方なく黒髪に戻した。

 しかし、これが思わぬ幸運となり、身長が伸びたのもあってか、急に女子達にモテるようになった。

 話した事もない同級生や後輩の女子から、急に話し掛けられたり、挨拶されたりするようになったので、勘違いではないと思う。


 キックボクシングも、最初は平日に通っていたが、さすがに両方はきつかったのと、空手も習うという事でキックボクシングはやめてしまった。

 だけど、筋トレとネリチャギの練習だけは毎日欠かさずやっていた。

 学校はいつも、だいたい昼前に登校していたので、夜中は起きていたから、夜やっていた。

 なので、両親は俺が筋トレしていたのは知らないと思う。

 筋トレ内容は、主に拳立てと腹筋、マラソンだけだが。

 拳立てとは、単に腕立てを拳でやるだけなんだが、なるべく床が硬い所で行っていた。

 なぜなら、ムエタイが脛を鍛えてるのをテレビで見て、骨も鍛えられる事を知っていたからだ。

 こうすれば、拳の骨も鍛えられるし、筋力もつくし、一石二鳥だと考えていた。

 強くなりたかったので、筋トレだけは自分に厳しかった。

 ゆっくりやって、床すれすれまで顔を降ろしてから、腕を完全に伸ばすまで一回とはカウントしなかった。

 最初は二十回くらいしか出来なかったが、捕まる頃には百回出来るようになっていた。

 CDラジカセを隣に置いて

「ZARDの負けないで」

 をかけながらやった。

 腹筋はおまけ程度で、二十回から五十回くらいで適当だった。

 マラソンもマラソンというか、ランニング程度で、五百メートルから一キロくらいしか走っていない。

 

 

 卒業していった先輩達は、それぞれ学校に行ったり、専門学校に行ったり、働いたりして、新しい生活をしているので、この頃はほとんど会わなかった。親友エバも同じである。


 その為、石南の焼そば頭、太平中の頭の大島、イカつい顔の竜の四人でツルむ事が多くなった。

 太平中の頭の大島に、長く付き合ってる年上の彼女がいる事は知っていたが、イカつい顔の竜にもこの頃、彼女が出来た。

 竜は

 「ブスだよ」

 と言ってたけど、一回だけ会ったがけっこう可愛かったので

 「竜の嘘つき!」

 とからかったものである。

 この竜という男、イカつい顔の割には、ギャグセンスが高く、なぜか博多弁の真似をして語尾に

 「ばい」

 と付けるので、いつの間にか、みんなうつり、博多の人が聞いたら怒るかもしれない、下手くそな博多弁が、太平中と俺らの中で流行った。


 焼そば頭は、少し変わった男で、給食の時間になると、そんなに近くないのに、わざわざ家に帰ってインスタントラーメンを食べたりしていた。

 俺もけっこうついてってご馳走になった。

 焼きそば頭の父も母も、いかにも元ヤンという感じで、不良の俺にも普通に接してくれた。


 太平中の頭の大島は、頭というだけの事あって、不思議な魅力のある男だった。

 喧嘩は竜の方が強そうだし、俺も負ける気はしないが、この男が頭なのは頷ける。

 仮にこの四人の中で頭を決めるとするなら、俺はこの男しかないと思った。

 




 「ズーン」


 上まで積み上がると、全てのテトリスのブロックが灰色になって、こういった音がしてゲームオーバーとなる(確か)。

 時々、落下速度が最高速度になる前の、遅い時に死んでしまう時がある。

 遅すぎて、逆にタイミングが合わないというか、油断し過ぎなのか、はっきり理由は分からないが起こってしまう。

 「チッ」

 駄菓子屋や商店街のゲームは三十円〜五十円で出来るのに、この

 「街のビデオ屋さん」

 は百円なので痛い。

 駅前に行けば、五十円で出来る店があるが、近所にテトリスがあるのは、ここだけなので仕方がなかった。

 百円をポケットから出し、気を取り直してゲームをやり直した。

 俺は、俺達石南、太平中の四人のチーム名を考えていた。

 色々考えたが、なかなか思いつかない。

 どうせなら意味のあるものにしたかったので、それぞれの中学校の名前を思い浮かべた。

 太平中の頭文字は

 「T」

 大石南中の略称の石南の頭文字が

 「I」

 ここまで来て俺は閃いた。

 「T」

 と

 「I」

 をローマ字で読むと

 「ち」

  つまり

 「血」

 血は確か英語で

 「ブラッド」

 チーム名なので複数形にすると

 「ブラッツ」

 おお、これはいいんじゃないかと思った。

 一つだけ気に入らないとすると、これだと太平中の頭文字が先に来るという点だったが。

 俺はそれ以来、心の中で俺達四人の事を

「ブラッツ」

 と呼んでいた。

 何度も言おうとしたが、苦労したので、馬鹿にされたり、嫌がられたりするのが嫌だったので結局言った事はなかったが……。

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