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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
中学二年生
33/117

先輩の卒業式(取り残された俺)

 

 ついに先輩達の卒業式となった。

 俺は前日、先生から

 「その頭では絶対に参加させないからな!」

 と俺の金髪頭に対して、釘を刺してきた。

 保護者や教育委員会も来るから、そこは先生も譲れなかったようだ。

 その時は

「はあ?絶対に参加してやるからな!」

 と言ったが





「テーテテテン♪テンテンテン♪」


 から始まる音楽が永遠に流れる、お馴染みのテトリスを

「街のビデオ屋さん」

 でやりながら考えた。


 最初は、入れないから途中で入って自分の席に着く。

 それなら確実にに入れるだろう……。

 だが、果たして、それでいいのか?

 こないだのオーディションのように、自分の想像をはるかに越える出来事に面して、騒ぎになったら、卒業式をぶち壊しにしてしまう。

 俺が目立つのは違うんじゃないのか?

 最初は先輩達の事ばかり考えていた。

 やはり、ここは先輩の為にも……、先輩の為に我慢を……。

 その内、気付いてしまった。

 俺は二年間世話になった先輩達の卒業式を、最初から全て見届けたいだけだったのだ。

 そして一筋の涙を流してしまった……。


 そして、テトリスを終わらせようと、三分の二までわざと積み上げ、そこから粘るというゲームをしてた時、苦しくもこの感動的な変なタイミングで裏技に気付いてしまった……。

 粘りに粘って、一番上の段を消すと、バグって画面が消えてしまうのだ。

 左と右に積み上げ、最後の真ん中に何が来るか分からないから運なのだが、おそらく、一番上のラインを消せると思ってない制作者がプログラムしていないのだろう、画面がプツンと消えてしまうのだ(検証してもらえばわかる)。

 なんて、タイミングで裏技に気付いてしまったのか……。普段なら店員に言って、もう一回やらせてもらう所だが、今はそれどころではない。ちなみにこの現象、その後も何回か起きたので、確かなはず。

 

 だから、二重にこの日の事を覚えているのだ。


 

 先輩達の卒業式を、最初から見る為、俺は髪を一日スプレーで黒くし、学ランも標準のを着ていった。

 学ランまでは言われてないが、土壇場で、何の文句も言われたくなかったので、俺の覚悟の現れだったのかもしれない……。


 先輩達の卒業式は本当にせつなかった……。

 なんせ、卒業証書をもらった後、回るように、前に座ってる三年生と、その後ろにいる俺らである二年生の間を先輩達が通るのだが、無駄に学級委員だった俺は、一番前にいたので、声をかけたり足を伸ばしたりしてアピールしたのに、誰一人気付いてくれなかったからである(そこ?)。


 だからこの時、俺は決意した。

 俺の卒業式の時には、二年生の目の前、当たるか当たらないかのスレスレを歩いてやると……。



 巨漢の仁村先輩、中学時代は本当に無口で、俺ら同い年からは、体格のデカさもあって、かなり恐れられていた。

 だけど、俺には優しかったので、同い年のみんなからは、

「よく普通に話が出来るね!」

 と驚かれていたのが俺は自慢だった。


 イケメンの高先輩、この人も後輩からは、近よりがたい存在だったけど、俺の無茶ぶりには、出来る限り、なんだかんだ答えてくれた。

 中でも俺は、高さんが使っていた、黒いT時のハンドルの自転車に憧れていた。

 あえて使ってないけど、黄色いのチェーンの鍵がハンドルに巻いてあるのが特徴的で、先輩が学校にいるのか、いないのか、これを見ればいつでも分かった。

 俺はこれを真似して、派手な紫の自転車を親に買ってもらって、三年生になってからは学校に通い続ける事になる……。


 そして、太ってた面影が残る親友エバ、あなたがいなければ、俺はキックボクシングも習わなかったし、暴力的な行動ももっと控え目になったかもしれない。

 だけど、いざという時は頼りになる男で、出来れば一年遅く生まれて来て欲しかった……。



 吹奏楽部のかず先輩、よく授業をさぼって生活指導室のソファーで寝ていましたね。

 実は長ランを隠し持っていて、おしゃべり好きの山先輩が借りに行ったけど、付き合ってた彼女の名前+命と刺繍入ってたので、やめたというは有名ですが、実は兄に憧れてて、兄と全く同じ形の極ラン(裏地の色違い)を持っていたのは、あまり知られていない話でしたね。

 謎の多い先輩でした……。


 

 ラリポン先輩、シラフなのに、いつもラリってましたね、授業中、校舎内外を歩き回ってるのが特徴的でした。

 本当はとても優しい人でした。

 この人には色々面白いエピソードがあったけど、もう他界されてるので書きません。

 ご冥福をお祈りします。



 敵対グループの先輩達、兄の影響で、甘々の環境の中、厳しくしてくれたのは先輩達だけなので、俺にはきっと必要悪だったのでしょう。



 仁村グループの軟派担当、河童先輩……。


 バスケ部の阿部先輩……。

 


 そして、おしゃべり好きで行動派の山先輩、中学時代は、俺も先輩に負けないくらいの行動派だったので、俺的には一番気が合った。

 くだらない内容だけど、一番思い出に残ってる話がある。

 ベランダから行くと、五クラスくらい先の教室の窓際で、授業を受けてるエバをからかいに行こうとした時の話である。

 他のクラスの生徒や先生に見つからないように、五クラス分、ベランダを二人でハイハイしながら進んだ。

 あの時は、めちゃくちゃボンタンが汚れたから嫌だったけど、先輩の後ろ姿が忘れられない。

 そっちが印象的過ぎて、確かにからかったのは憶えてるんだけど、エバをどうやってからかったのかが記憶から抜けてしまってるくらいだ……。

 


 卒業式を終えて、写真撮影とかして、団地まで戻ってくると、先輩達は俺に

「焼きそば頭と相撲してみろ!」

 と言ってきた。

 焼きそば頭は、俺より少し背が高いが痩せているので、楽勝だと思い、

 「いいですよ!」

 とその話にノッた。焼きそば頭もノリノリだった。

 「はっけよい……のこった!」

 ガシッとお互い腰の辺りを掴んで、組み合った。

 あれ?こいつ、意外とガッシリしてるな!

 てっきり楽勝だと思っていたのに、結局勝負はつかず、

 「よし!もういい!」

 「……」

 「おまえら、頑張れよ!」


 この時は、全く意図が分からなかったけど、今なら何となく分かる。


 そして、イケメンの高先輩が、例のセミ短(モテたので全てのボタンがなかった)を脱ぎ

 「ほらよ!」

 と渡してきた。

 ありがとう高先輩、俺はこのセミ短を大切に……

 って、おい!

 これは元々俺が盗んできたし、俺のですから!

 と心の中でツッコミを入れたが嬉しかった。


 先輩達の後ろ姿を見送ってる時、俺も一緒に卒業したかったと思った。そしたら、先生達はどれだけ喜んだ事でしょうか(笑)


 心臓病で運動部に入れなかった俺にとって、周りからするとハタ迷惑な話だが、これが部活だったと言える。


 こうして、先輩達は卒業して行った……。

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