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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
中学二年生
22/117

太平中の二人

 

 学校をサボって、最近ヤンキー化した、同級生の焼きそば頭に連れられて太平中の裏側に行くと、デコの広い前髪金髪の大島と塾で一緒だったイカつい顔した竜が待っていた。


兄に借りたロングコートを着ていた俺に、塾の時とは別人のように、目を輝かせながら

「カッコいいね、そのコート!」

 と竜が俺に話しかけてきた。話した事がなかったので、驚いたが

「そう?兄に借りたんだよ」

 と答えた。竜は続けて

「大石中の奴とやった(喧嘩を)んだって?俺も見たかったよ!」

 と言ってきた。


 そんな友好的な竜に悪い気がしなかった俺は、元々前髪金髪の大島が、引っ越さなければ石南だったので、石南と太平中のハーフみたいな存在なのもあり、すんなり受け入れる事が出来た。


 それに石南の同い年には、他にヤンキーがいなかったので、ヤンキーの友達が増えて純粋に嬉しいという気持ちもあった。

 それだけに、あの闘いにもし破れていたらと思うと、考えただけで恐ろしくなった。


 四人は意気投合して、会話に花を咲かせた。


 太平中の前髪金髪の大島は、昼になると

 「パシリっぽい同級生」

 を呼び出し、

「おい、給食を四つ持ってこい!」

「はい!」

 同じ年なのに、なぜか敬語で走っていった。


 しばらくすると、さすがに一人では四つは持てないので、

 「パシリっぽいヤツその2」

 と両手に一つずつ、二人で四つのお盆を持ってきた。

 俺は、俺らの分はいったい誰の分何だろう?

おそらく、この二人の分だと思った。


 さすがにメニューまでは覚えていないが、大盛りだった。

 お盆にプリンを確認した前髪金髪の大島は

「おい!このプリン、クラス分、まるごと持って来い!」

 と怒鳴った。

「ハイ!」

 と返事したパシリその一は、また駆け足で戻った。


 しばらくして、本当にプリンをクラス分、約三十個をトレーごと持ってきたので驚いた。

 こいつら、半端じゃねぇ!

 と思った。


 大島は俺らに向かってニコッと笑うと

 「好きなだけ食っていいよ」

 と普通に言った。

 「じゃあ、有り難く頂くよ」

 と言ったが、俺も焼きそば頭も、大盛りの給食を食った後なので、三個くらいが限界だった。

 残りをどうしたのかは知らないが給食をご馳走になった俺らはお礼を言って、自分の中学校(石南)へと戻って行った……。




 それからしばらくして、俺と戦った大石中の鹿口の傷も癒えた頃、俺ら、石南、太平中の四人は上尾市内にある、安く食べられるイタリアンの店、るーぱんに集まった。


 太平中のイカつい顔した竜は、大石中の鹿口に会った事がないので、見て見たいという事もあり、大石中の鹿口を呼び出して、パシリに使おうと目論んだ。店内にある有料の電話機から、教えてもらったあの特効服の女の家に電話を掛けた。


「プルル……」

 何コールかして

「はい◯◯ですけど」

 と女の人が出た。

 おそらく、あの特効服の女だと思った。

 おそらくというのは、この人の名前を聞いていないので、合ってるか確信がなかったというマイナスの意味と、母親の声ではなく、若い声だったというプラスの意味の両方が含まれる。



「三頭脳ですけど」

 と俺が名乗ると、

 「あっ」

 と小さく声をあげたので、あの特効服の女だと確信した。


 あの時の勢いはなく、

「鹿口を呼び出して欲しいんですけど」

 言い忘れていたが、この人は桶川の中学の一つ年上だと、あの後知ったので、一応敬語を使った


「……鹿口に何の用?」

 と聞いてきたので、さすがにこれには俺はムカついて、

 「は?あいつは俺の下に付くんですよね?だったら呼び出して話さないと意味ないでしょうが!」

 これには傍らで聞いていた焼きそば頭達も 「おぉ、すげぇ」

 と小さく称賛の声をあげた。


 畳み込むように、俺は

 「あんた、逆だったら絶対俺を呼び出したでしょうが!」


 あの時の勢いなら、あんたって誰に向かって口聞いてんだ!とか言い出しそうだったが、


 「…………」

 これには特効服の女はなかなか答えず、返答を待っていると、


 苦し紛れに

 「他の中学潰しに行く時、参加させるからよ。」

 と言ってきたので、俺はもうこの人と話しても無駄だと思って

 「わかりました、じゃあまたその時に連絡します」

 と言って電話を切った。


 電話を切った後、内容を説明すると(だいたい分かってたと思うが……)三人も俺と同じように

「なんだよ!ふざけんなよ!」

 となった。


 この時、だったら後日、俺は大石中まで行って鹿口を呼び出そうぜ!

 という案と、大谷中の頭とやらせようぜ!

 という案も出たのだが、面倒だったか忘れたかして、結局、大石中に行く事はなかった。

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