この時、学習していれば……
団地内の商店街で開催される、秋祭りの日、俺は小太りの親友エバと、二人で行っていたのだが、商店街の真ん中らへんに、ちょっとした広場がある。
そこの端に、五個くらい、色々な自動販売機があったのだが、そこに同級生の背の高い細身の吉町がいた。
何やら、お好み焼きかたこ焼きを食っている。
この男、俺の悪口を言っていたという情報があり、すでに前日に、休み時間中に、こいつのクラスまで赴き、四、五発殴っている。
だが、気が済んだので、自分の教室に戻ろうと廊下に出た時だった。
「いきなり、何すんだよ、てめえ!」
と言いながら追いかけてきたのだ。
それには俺もキレて
「あ?」
と言って再び殴ろうとしたのだが、周りの女子達に止められたかして、出来なかったのだ。
今思えば、なかなか根性のあるヤツだったので、仲良くしとけばよかったと思う。
そんなわけで、ムカついていたこの男を祭りで見かけたので、見逃す手はない。
俺はかけ寄って行って、思いっきりこの男の腹らへんに前蹴りを入れた。
「ドカッ!」
当たりどころがよかったのか、少なくとも、三メートルくらい離れたゴミ箱まで吹っ飛んだ。
俺は細身とはいえ、こんなに吹っ飛ぶとは思ってなかったので、かなりびっくりした。
一緒にいた親友エバもこれには驚いたらしい。
吹っ飛んで、ゴミ箱に当たった細身の吉町は、なぜか食べてる途中だった、お好み焼きだか、タコ焼をゴミ箱に捨てた。
すかさず、近寄ってって、左手で胸ぐらを掴み、右手で殴ろうとすると、
「待ってくれ!俺は何も言ってない!」
「悪口なんか言ってない、太田(俺に情報をくれた男)が勝手に言ったんだ」
普通なら、こんな戯言は無視して殴るのだが、さっきの前蹴りで吹っ飛ばしたのが、あまりに爽快で気分が良かったので
「…………」
バッと、胸ぐらを掴んでいた左手を離すと
「行こうぜ!」
と小太りのエバに促し、その場を去った。
後日、俺に情報をくれた、やたら背の高い男子太田に確認したが、確かに吉町の言うとおり太田の勘違いだった。
だが俺と吉町がもし仲が良かったなら、太田にキレて吉町に謝りに行っただろうが、吉町などどうでもよかったので、謝りには行かなかった。
吉町が納得出来なければ、勝手に太田からケジメをつければいいだけの事なので。
それに俺と、このやたらと背の高い太田はゲーマー仲間(格闘ゲームの方)で仲がよかったのだ。
思えばこの時に、次からはちゃんと確認してからやる、若しくは人の話を鵜呑みにしないと、学習出来ていれば、あんな事にならずに済んだのだろう……。




