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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
中学二年生
19/117

運動会

 

 中二の運動会の日、俺はあまりやる気がなかったが、クラスの女子に、障害物競争だけ出てくれ、と頼まれていたので、仕方なく参加する事にした。

 俺らの学年は七組まであるので、各組一人ずつ出て、七人ずつ走る。

 そのメンバーの中に、野球部の曽明という生徒がいた。

 俺はこいつと同じ小学校だったが、調子がよくて、裏表が激しい人間だと認識していたので、嫌いだった。


 俺は一組で、この野球部の曽明は二組だったので隣同士だった。


 もうすぐ自分らの番という時に、突然、曽明が話しかけてきた。

「三頭脳、わざと手を抜いて走るんでしょ?」

 と笑いながら言ってきたのだ。これにはカチンときた。

 俺には、本当は本気で走るけど、そう言い訳するんだろ?

 という風に聞こえたからだ。


 確かに適当に走るつもりではいた。

 さすがにビリは恥ずかしいので、真ん中くらいの順位に適当につけるつもりでいた。


 リアル障害物競争で鍛えてる俺をなめんなよ!

 そう、俺は中一で捕まって以来、万引きで見付かる度に、全て逃げ切っているのだ(自慢にはならんが……)。


 メラメラと怒りの炎が燃え盛り、俺は本気を出す決心をした。

 一位にはなれなかったとしても、少なくともこいつには絶対勝つと誓った。

 そして勝ったら

「手を抜いた俺より遅いのかよ!」

 と嫌味を言ってやるつもりだった。


 とはいえ、この障害物競争、不公平極まりない。

 というのも、スタートして最初の障害物が網をくぐるヤツなので、どうしたって真ん中の走者が有利だ。

 一組で一番左のレーンの俺は圧倒的に不利だった。


 考えてる暇などなく、俺らの番になった。


 「用意……バン!」

 俺はギリギリ、フライングにならない限界くらいの、神懸かったタイミングでロケットスタートして、一瞬で真ん中まで移動して先頭に立った。


 真ん中の先頭は網がくぐり安いし、他の走者にも邪魔されないので、網をくぐり抜けた時点で大分差をつけた。

 もうこの時点で、この競技は順位がほぼ決まるのだろう。

 はっきり言って後は楽勝だった。

 一位でゴールした。爽快だった。


 ゴール付近には誘導係を行っている聖美がいた。

 聖美は運動好きだし、同じクラスなので、一位になれば得点も増えるので祝福してくれた。それになんと

「蛍がすごく尊敬してたよ」

 と、蛍と近くで見ていた男子生徒が、この後教えてくれたので、めちゃくちゃ嬉しかった。

 野球部の曽明には感謝した。

 嬉しくて、曽明に嫌味を言うのも忘れていた。

 というか、曽明が何位だったのかも見ていない。

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