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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
中学二年生
15/117

森口博子のホイッスル

 俺は相変わらず、ゲームソフトを盗んで売ったりしていた。

 この頃は未成年でも買ってくれる個人店の店が沢山あったのだ。

 漫画も同様である。


 小太りのエバと駅前で遊んでいると、腹が減ったのでサンドイッチをデパートで万引きしようとなり、エバには外で待たせておいて、俺がサンドイッチを二つ持って、隠しもしないで外に出ようとした瞬間だった。

 五十歳前後の太った万引きGメンに後ろからガシッと手を捕まれたのだ。


 事務所に連れていかれたが、まだ店から出てないし、隠さなかったのが幸いした。

 外にいるエバに、このサンドイッチでいいか、確認しようとしただけだと言い張ったので渋々解放された。




 次の日学校に行くと、蛍と同じクラスの男子から、どうやら蛍は

「森口博子のホイッスル」

 という曲のCDを欲しがっている、という情報を手に入れた。

 なので俺はさっそく一人で、駅前の昨日と同じデパートの三階にあるCDショップへと向かった。


 CDはそのまま盗むと、出入り口にセンサーがついていて、警報音が鳴ってしまうので、防犯タグを外さなくてはならない。

 俺は目当てのCDを見付けると、奥の方へ行ってタグを外した。

 ポケットに商品を入れてCDショップの出入り口を通過、もちろん、鳴らなかった。

 追ってくる様子もない。


 エスカレーターで二階に降りた時だった。後ろから四十から五十歳くらいのおばさんが

「ちょっと通してもらっていいですか?」

 と言ってきたので俺は道を譲った。

 しかし、俺の前に出た瞬間に、振り返って俺の両腕を掴んできた。

 またも万引きGメンだったのだ。

 俺は

 昨日の今日でこれはやばい!

 と思った。

 しかも今回は、防犯タグも外してるし、ポケットに隠してるので言い訳も出来ない。


 俺は暴れて振り払おうとした。

 すると、万引きGメンのオバさんは、近くにいた若い男の店員に助けを求めて叫んだ。

 怪我をしたくなかったのか、おばさんからは簡単に抜け出せた。

 まるで自分から放したかのように感じた。

 近くの店員を呼んだ事で安心したのかもしれない。


 ここのエスカレーターは、人一人しか通れない幅しかなく、一階に向かうエスカレーターを走り降りようとしたが、まだ三人ほど途中にいた。

 俺は仕方がないのでエスカレーターの真ん中ら辺から一階のフロアへ飛び降り、出口へとダッシュした。


 外に出ると三人の若い男が追いかけてきた。

 走って行くと、道と花壇の間に若いカップルが歩いていて通れない。

 俺は仕方がないので、女の方を思いっきり後ろから吹っ飛ばした。

 女は吹っ飛んだが、転ぶ事なく前によろけただけで済んだのでよかった。


 隙間をすり抜けて進んで行くと、一人が待ち伏せしていた。

 さっきの三人の内の一人に違いない。

 俺は右に行くと見せかけたフェイントをかまして左へと逃げた。

 後は駅前通りまで走ってひたすらまっすぐ走り、裏路地へと逃げ込んだ。

 一応、ここの草影にCDを隠した。

 裏路地は袋小路だったが、越えられない高さではなかったので、よじ登って乗り越えた。

 その時に何かに引っ掛かったみたいで、来ていたアロハシャツがビリビリと破けてしまった。兄からもらった物だがかなり気にいっていたし、CDより高いので本末転倒だと悲しんだ。


 CDを隠したので俺は安心して歩いて一旦家に帰って着替えてから、自転車でCDを取りに戻った。


 俺から蛍に貸すのはおかしいので、情報をくれた男子生徒からという事にして蛍に貸した。

 俺はかなり苦労した上に手柄も取られて馬鹿馬鹿しいと思った。

 一週間後、蛍からCDが帰って来たがあまり嬉しくなかった。

 そっち系の趣味はなかったのである。

 俺から直接貸せていれば大いに意味があったのに、もったいない事をしたと思った……。

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