一個上のグループ争いの決着
この頃から、一つ年上のヤンキーグループ同士の争いが激化していく。
俺は兄がいたので、巨体の仁村先輩グループにつくのは必然だったので、相手グループのリーダー(トド)もその点は俺には何も言ってこなかった。
だが、俺以外の俺の同級生達はどっちつかずの状態になり、ヤンキーになりそうな生徒は数名いたのに、俺以外は目立つ事が出来ずにいた。目立てばどっちかのグループ(下手すれば両方)に目をつけられるからだ。
二年生の俺らがそんな状態だったので、一年生はさらにであった。
二年生と三年生のクラスがあるエリアは、コの字型の校舎に、向かい合うようにあるのだが、二年生の俺は、特に三年生の事は考えず、ただ単に非常階段を使ってみたいという衝動にかられた時の事。
非常階段は、二年生エリアと三年生エリアで挟むような位置の、二年生側の中庭にあるので、三年生エリアの上に位置する一年生エリアも含めて、全校生徒から丸見えになる。
別に目立ちたかったわけではなく、本当に単に非常階段を使ってみたかっただけなので、四階の内側から鍵を開けて、非常階段に出た。
出た瞬間に、やっちまったと思った。
トドグループは、向かい側の三階のベランダにほとんどの時間、溜まっていたので、トドグループの数名と目が合ってしまった。
しかも、非常階段と内側を繋ぐドアは鉄製だったので、勢いよく閉めたわけでもないのに
「バアン!」
と、もの凄い音が鳴り響いた。
さすがにこれは、トドグループから罵声でも掛けられるかと、下に降りるまでずっとヒヤヒヤしたが、何も聴こえなかった(最初以外、そっちを見てないので様子は分からない)。
降りきると、慌てた様子の、俺と話せる同級生の男子生徒が現れ
「三頭脳!どうした?何したの?」
と聞いてきた事から、やはり注目された事が分かった。
それにしても、この件でトドグループが何も言って来なかったのは不思議だった。
おしゃべり好きのヤンチャな山先輩と、学校内を歩いていると、トドグループに遭遇してしまった。
十名くらいフルメンバーと見られる。巨体の仁村先輩かイケメンの高先輩ならまだしも、小柄な山先輩では不安だった。
案の上、トドグループのナンバー二、筋肉マッチョの坂上が、持っていたカバンを仲間に預けると
「雑魚がいきがりやがって!」
と一人でこっちに向かってきた。山先輩も負けじと向かって行ったが、顔面に一発もらうとよろけて倒れそうになった。
倒れる前にすかさずマッチョの坂上が、山先輩の胸ぐらを両腕で掴むと、ハンマー投げのように回しながら簡単に投げ飛ばした。
俺はそれを見て思った。マー坊、いや、せめてあっちゃんがいてくれたら、と……。
マッチョの坂上は俺の前まで来ると
「てめえもあんまりいきがってるとやっちまうからな!」
と言って、グループへと戻っていった。俺一人ではどうする事も出来なかった。
殴られなくてよかったと思った。
これに怒ったのかは知らないが、巨体の仁村先輩とイケメンの高先輩を筆頭に仁村先輩のグループは、相手グループのリーダートドを襲撃、俺はその場にいなかったので詳しくは知らないが、校長室に逃げ込んだトドを先生達がかくまったとの事。
鍵をかけられたドアをみんなでバンバン蹴っていると、全ての男の先生が止めに入り、大騒動になったらしい。
警察も介入しそうになったので、結局、お互い卒業までもう関与しないという事で話は解決したみたいだ。
俺の知ってるこの情報だけだと、巨体の仁村先輩グループの勝ちに終わったと言える。
読んでいってもらえば、後で理由は分かってもらえると思うが、先輩達はこの件をあまり語りたがらないので聞く事が出来ず、詳しく書けないのが残念だ。




