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底から出てもそこは底  作者: 三頭脳
中学一年生まで
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一年生の終わり

 

 一年の三学期の頃には、同じクラスの美人顔の舞とかなり仲良くなっていた……。


 学校に兄の写真を持っていった。

 兄が中学三年生の時に、校舎内で友達数名と撮った写真で、特に長ランを着た奥歯さんと極ランを着ている兄は気合いが入っていて、俺はこの写真が好きだったから誰かに見せたかったのだ。

 この時には閉鎖されていて行く事が出来なかった三階の渡り廊下にある猿山と呼ばれるバルコニー?みたいな場所で撮られたものだった。

 平なのになぜ猿山と呼ばれるのかは分からないが、テニスコートくらいの広さなのでけっこう広かった。

 周りを囲むフェンスがなく、確かに危ないので閉鎖された理由も頷ける。

 だが、俺らが二年生になった時に弁当から給食に変わり、給食のワゴンを運ぶ為にこの渡り廊下は解放されたので、結局閉鎖されていたのは一年間だけだった事になる……。


 クラスメイトに兄の写真を見せていると、舞が

「私にも見せて」

 と言ってきたので、俺は特に深い意味はなかったが

「惚れるなよ!」

 と言って舞に差し出した。

「えっ」

 と言って、舞は写真を受け取ると、俺から90度、体の向きを変えて写真を見た。

 五秒ほど見たが、体の向きも戻さずこっちも見ない……。

 何も言わず

「ハイ!」

 と言って写真を返してきた。

 俺は感想が聞きたかっのに残念だった……。

 怒らせてしまったのかもしれない、未だによく分からない……。


 俺と舞の仲は、軽く噂になっていたのかもしれない……。

 その可能性がある出来事が二つあったからだ……。

 一つ目は、放課後、学校から帰ろうと思って、下駄箱の靴に履き替えようと、靴を取ろうとしたら、片方の靴がきれいで小さいのだ。

 もう片方は、上履き同様に踵が潰れている少し汚れた俺の靴、明らかに片方は俺のではなかった。

 誰かのいたずらか!

 くそっ!

 放課後なので、当然他の生徒もすぐにやってくる。

 まずい……。

 俺はかなり焦った。

 少し下がって自分のクラスの全員の下駄箱を確認した。

 蓋の付いていないタイプなので、こうすれば全て見えるのだ。


 あった!

 俺の靴と誰かのきれいで小さな靴が、さっきとは左右逆になって置かれてる下駄箱を発見した。

 目立つので一瞬で見付けられたのだ。

 その下駄箱の名前を見て、俺はドキッとした。舞の下駄箱だった。


 俺は慌てて元に戻した。

 両手を使えば一回の動きで元に戻せる。

 五秒とかからなかった。


 元に戻して安堵した瞬間、後ろに気配を感じた。

 反射的に振り返ると、舞がすぐ俺の目の前にいた。

 握手出来るくらいの距離だ。

 俺は二つの意味でドキッとした。

 やばい、見られたかな!

 俺がやったわけでもないのに罪悪感にかられ、かなり焦った。

 こんないたずらされたのを、舞が知ったら嫌がるだろうと思った。


「…………」

 いきなり俺が振り返ったのだから舞は驚いた顔をしていたが、無言だった。

 俺はその表情から、舞が気付いたのかどうか読み取ろうとしたが、分からなかった。

 少なくとも五メートル前から、この下駄箱は見えてるのだから気付いて当然だが、舞は何も言わなかった。


 結局、俺は無言でその場を去った。

 踵が潰れた少し汚れた靴ときれいな小さな靴、まるで俺と舞そのものだと思った。

 俺達は釣り合ってないと思った。


 二つ目は、同じクラスの男子がいきなり俺に

「知ってるか?十秒間見つめて目が合ったら、その子とは両思いなんだよ」

 と俺に言ってきた。

 そんな話、聞いた事なかったので

「そうなの?」

 と一応返したが、そもそも見てれば、視線を感じて目が合う事なんかよくあるはずなので、なんとも胡散臭い話だと思った。

 だが、その男子は続けて

「あの子で試してみよう」

 と言って、教室の後ろにあるロッカーの上で、立ちながら何か書き物をしている女子を指差した。

 舞だった。

 俺はそう来るとは思わなかったので、この時もかなりドキッとした。

 舞なら試してみてもいいと思ったので、流れに任せる事にした。

「じゃあいくよ、スタート、一、二、三……」

 男子生徒が数え始めた。

「四、五、……」

 俺はドキドキしながら舞を見つめ続けた。

 この男子生徒の声は、やたらと大きかったので、舞に聞こえてる可能性は高かった。

 舞が気付かないふりをしてるのか、本当に書き物に集中していて気付いていないのか分からなかった。

 舞がこっちを向く気配はなかった。


「九」

 まで数えた時に男子生徒が、いきなりロッカーの上を叩いた。

「バン!」

 と教室中に鳴り響いた。

「な、なによ!」

 と言って舞はこっちを見た。

 確かに俺は舞と目が合ったが、

「いやいや、今のはずるいだろ!」

 と俺は男子生徒に言ってこの件は終わった。


 一年生ももうすぐ終わるという時の事だった。

 教室の前の廊下で、たまたま舞と二人だけになった時、舞が突然

「もしかして私の事好き?」

 と聞いてきた。

 舞はそれを言いながら真っ赤になっていて、とても可愛かった。

 だが、サラ毛の赤池と両思いだと信じていた俺は

「違うよ」

 と言った。


 すると舞は、

「え?」

 と驚きながら、さらに赤くなった。

 そんなはずはない、といった表情をしている。

 そんな舞が愛おしくなり、『嘘だよ』と言おうとした時だった。

 クラスに一人はいるであろう、強烈な個性を持った、女子が現れ

「何言ってんの?舞ぃ〜」

 と茶々を入れてきた。

 他にも教室から数人出てきたので俺は教室へ戻った。

 一応フォローしておくが、この女子、今回はお邪魔だったが、普段はムードメーカーで面白いので、俺はけっこう好きだった……。


 二年生では舞とは違うクラスになった……。

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