君に、花束を
よく泣いていた君に、ある日僕は、花束を送った。
そしたら君は、太陽なような笑顔を見せてくれた。
僕たちは、短い命だ。
ここの施設の中ではそれが普通。
長くはいきられないが、その代わり最低限の生活を送れる。
この世界しか僕らは知らない。
外から来たって管理者から聞かされた。
なんで、外から来たかはわからなかったけど……
何でも、お母さん、お父さんが“ツミ“を犯して引き取り手がいなかったって言ってたけど、難しいことはわからなかった……
そんなことは、どうでもいい。
僕の大切なルームメイトが笑顔になる方法を見つけた。
それが嬉しかった。
その日から、僕らは仲良しになった。
外の世界の話はとても面白かった。
まるで異世界のようなおとぎ話。
そんな風に君に言ったら、悲しげな表情をさせてしまった。
だから、笑いながら相づちをうつようになった。
ある日、君が言った。
「逃げよう。遠いところで二人だけで」
僕は、首をふった。
前に逃げた子がいたけれど、その時に聞かされたことを話した。
ーお前たちには、どこに隠れても逃げ場はない。身体に埋め込まれた機械が居場所を特定するー
襟元を少しずらして見せた。
そこには小さな機械が埋め込まれていた。
君は、その瞬間涙を流した。
僕は、どうして泣くのかわからず泣き止むまで待った。
泣き止んだ君は、こう言った。
「きっと、外につれていくからまっていて」
僕は、コクンと頷いた。
でも、心の中ではその約束は守れないなと“ごめんね“と謝った。
翌日君の姿はなかった。
大人たちの話では、どうやら“引き取り手“が見つかったらしい。
あの子は、どうやらそれが見つかる間ここに預けられていたそうだ。
それからどれくらい季節が過ぎたのだろうか?
とうとう、僕の命のリミットが来たらしい。
大人たちが呼びに来た。
「予備品、お前の主のために命を差し出すときが来た」
黙ってついて行く。
(もう一度君に会いたいな)
手術台に横たわり目を閉じる。
チクり
麻酔を打たれる。
徐々に眠くなり眠りについた。
意識が戻ってくると、暖かな感触が身体の下にあった。
瞳を開いた。
「おはよう」
そこには、会いたかった人がいた。
その子はポロポロと涙を流していた。
でも、その涙はなぜか嬉しそうだった。
「?」
どうやら膝枕してくれていたみたいだ。
あの子は、僕が眠っていた間の話を聞かせてくれた。
僕がいた施設は、“人権団体“って言うものに制圧され中にいた僕とおんなじ境遇の子どもたちは、全員保護されたらしい。
あんまり理解は出来なかったけど、
「また、君に会えるようになったってこと?」
と聞いたら、“うん“と抱き締められた。
その後、僕は、“慰謝料“って言うものをもらった。
でも使い方がわからないから、あの子の保護者って言う人に管理をしてもらった。
住む所は、色々“保証“っていうものがあって困らなかった。
食べ物も困らない。
その代わり前までと変わったことは、“学校“というところに通うことや、見たこともない世界が今は広がっているということだ。
それからいろんなことが変わった。
僕のいた施設についても、徐々に理解していった。
外の生活にもなれていった。
そして、月日は流れ無事大人になることが出来た。
仕事もついて、生活の基盤を築くことが出来た。
今日は、あの子に花束を久しぶりにプレゼントする。
笑顔になってくれるといいな。