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未来の嫁を最強にしてみた  作者: 寺田 秋
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第1章-8話 あやかし纏身

「「あやかし纏身!!」」


 そう唱えた瞬間、雷のような爆音が鳴り響き、閃光が俺たちを包み込んだ。


 そして俺たちは、あやかし乙女へと変身した。


 あやかし乙女となった未来ちゃんは、半透明な紫のリボンを着け、白を基調としたピンクと紫のラインが入った魔法少女のような可愛らしい姿になっていた。


 突然変身した俺たちに驚いた鬼童丸は、おもむろに大剣を頭上に掲げ、俺たちの方へ勢いよく振り下ろした。

 だが未来ちゃんはその大剣を軽々と片手で受け止める。


 未来ちゃんは大剣から手を離し、軽く跳んで大剣の腹に後ろ回し蹴りを入れる。

 ドゴッ!という大きな音とともに、大剣は森の奥へと吹き飛んでいった。

 鬼童丸はその反動により、よろけてその場で尻餅をついた。


「何だよ、変身できるじゃねぇか」


 鬼が嬉しそうに呟いた。

 俺たちは鬼の方を睨みつけ、拳に力を込める。


「あ?」


 その瞬間、俺たちは地面を強く蹴り、バチバチと紫電をその身に纏いながら鬼の目の前まで一瞬で移動した。


「なっ⁉」


 稲妻のような速さの拳を一発、鬼の腹に叩き込む。


「ぐふぉっ!!」


 その一撃により、鬼は音速を超え衝撃波を生み出しながら壁に叩きつけられた。

 鬼は口から血を噴き出して地面に片膝をつく。


「がっ……ゴボッ……くっ、鬼童丸っ!」


 腹を片手で押さえ脂汗をかく鬼が、鬼童丸に向かって叫んだ。

 俺たちはスッと振り返り、鬼童丸の方を見る。

 鬼童丸は唸り声を上げながらその巨体を揺らし、地響きを立ててこちらへと走ってきた。

 俺たちは片手を前に出し、ポツリと呟く。


「「迅雷(じんらい)」」


 その言葉とともに、手の平から巨大な雷の光線が放たれた。

 その光線は鬼童丸の上半身を一撃で跡形もなく吹き飛ばす。

 残った下半身はゆっくりと地面に倒れた後、黒い粒子となり霧散した。


 鬼童丸が消滅すると同時に、骨の檻に囚われていた爺ちゃんは解放された。

 木の幹に寄りかからせ寝かせるように、俺たちは爺ちゃんを抱きかかえ運んだ。


「はぁ……はぁ……、今回は……俺の負けだ……。だが、覚えていろ……。この酒呑童子(しゅてんどうじ)、再びお前の前に現れる……!」


 そう言い残し、鬼は闇の中へと消えていった。

 俺たちは変身を解き、元の二人の姿へと戻った。


「変身……できました……」

「うん」


 未来ちゃんはその事実を噛みしめるように両手を前でグッと握りしめていた。


「ありがとう与正くん。あんな時に不思議なおとぎ話で私を勇気付けてくれて、やっぱり与正くんは凄いですね」

「えっ、おとぎ話……?」

「はい。与正くんは私が元気を無くしているとき、いつもそうやっておとぎ話をして楽しませてくれるんです。記憶を無くしてしまっても、そこは変わらないんですね」


(おとぎ話じゃないんだけどなぁ……)


 未来ちゃんは微笑みながらこちらの顔を見つめてきた。

 そして突然、俺に抱きついてきた。それを支える体力も残っていない俺は、そのまま地面に倒れてしまう。


「えっ⁉ あああああ……」


 女の子に抱きつかれるという経験がなかったためパニックを起こした俺は、ロボットが故障したかのようにブルブルと震えている。


「与正くん……私、少しは変われたかな?」

「…………」

「あれっ⁉」


 疲労とパニックが重なった俺は、あろうことか気を失ってしまっていた……。

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