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未来の嫁を最強にしてみた  作者: 寺田 秋
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第1章-5話 妖怪

 魔法少女に変身した玲さんは、果敢に巨人の妖怪と闘っている。

 薙ぎ払い、突き。

 地面や家の屋根、木などを上手く足場にして跳び回り、巨人を撹乱しながら的確に一撃を決め続けている。


「すげぇ……」


 アニメで見たことがあるような戦闘が目の前で繰り広げられている。俺の心は昂ぶっていた。


「こいつ、しぶといわね……」

「デカいのかましとく?」

「そうね」

「おっしゃいくで!」


 玲さんは頭上で棍を回転させる。


「「焼き尽くせ! 獅子(しし)炎陣(えんじん)!!」」


 棍の先端から炎の虎が飛び出し、巨人にまとわりつくように炎の渦を形成する。

 炎の渦は巨人の身体をジリジリと燃やした。


「これがあやかし乙女……」


 激しく燃える炎の渦の熱がこちらにまで伝わってきた。


「そう、これがあやかし乙女の力。妖怪に対抗するために変身し、言霊(ことだま)の力で妖術を放ち戦うんです」


 隣にいた未来ちゃんが解説を始めてくれた。

 あの必殺技みたいな掛け声は言霊を扱い、妖術を放つためなのか。


「あやかし乙女に変身するには男女がつがいとなり、男の子は鎧や衣服、武器などの神器(じんき)に姿を変え、女の子の力を増幅するんです」

「なるほど。つまり、あの二人は今一心同体ってことなのか」


 相高さんの姿が見えないのに声だけが聞こえると思ったが、そういうことなのか。


「はい。二人で……戦うんです」

「ってことは未来ちゃんがあやかし乙女だから、その相手は……俺?」

「……はい」


 俺が、変身して戦える……! なんだか思っていたよりも凄い展開になってきた。

 胸の高鳴りが止まらない。

 だが、未来ちゃんの表情は明るくなかった。


「じゃあ、俺たちも変身して一緒に戦おう!」

「できません」

「……えっ、何で?」

「そもそも私たち……一度も変身、できたことがないんです」


 俺は衝撃を受けた。

 だからか。落ちこぼれだと罵られたり、奉仕活動をする時間があれば強くなる努力しろと言われていた理由は……。


「ごめんなさい。私の心が弱いせいです……」

「そんなこと────」


 突然、背後の家が衝撃で吹き飛んだ。

 何事かと振り返ると、崩れた家の中で倒れる玲さんの姿が見えた。


「ぐっ……うぅ……」


 巨人の攻撃により吹き飛ばされてきたようだ。


「玲さん!」

「こいつ……強い……」


 力を入れて瓦礫の中から立ち上がろうとしているが、負傷してしまったため上手くいかないようだ。

 巨人が一歩ずつ玲さんたちの方に近寄ってくる。


「ハッハッハッ! 今回のは出来が良いみたいだ。なぁ、お前も楽しいだろう? 鬼童丸(きどうまる)!」


 突然、木の上から男の声が響いてきた。

 俺は声のした方を見上げる。

 大木の枝の上には、大きな角を生やした鎧を纏う赤鬼のような男が立っていた。


「せっかく俺の剣を貸してやってるんだ。そいつでさっさとトドメをさせ。 俺たちの目的はそいつらじゃなく、四ツ目家だからな!」


(四ツ目家って、未来ちゃんのことか⁉)


 未来ちゃんの方に目をやると、彼女は怯え震えていた。


「それにしても、このジジイを媒介にして正解だったぜ。ここまでの妖怪を生み出してくれるなんてな」


 俺は再び鬼の方に目をやる。

 目を凝らすと、鬼の横には骨の檻に閉じ込められた人間がいた。


「爺ちゃん……!」


 檻に閉じ込められていたのは、与正くんの祖父、俺に拳骨を喰らわせたあの爺ちゃんだった。


「あぁ、何だ? お前の爺ちゃんだったのか? 礼を言ってやる。コイツのおかげでなかなか強いのが生み出せたぜ!」


 鬼が嘲笑(あざわら)うようにして骨の檻を叩く。


「その人を返せ!」

「人間風情が、俺様に命令できる立場じゃないのが理解できていないのか? いや、人間は馬鹿だから理解できなくて当然か。このジジイも自分一人で俺を倒そうとしてきたしなぁ。フッ、実力の差が分からないのは愚かだって、馬鹿な人間のお前でも分かるだろ?」


 爺ちゃんは俺の本当の家族じゃない。だが、例え仮りそめの家族でも、祖父を馬鹿にされて怒りを抑えられる訳がない。


「今、爺ちゃんのこと馬鹿って言いました?」

「はぁ? だったらどうする?」

「堪忍袋の緒が……切れました!」


 と心の中の大空あおいちゃんが俺の魂を燃やし、言葉を紡がせる。


 その直後、鬼がフッと俺の前に瞬間移動してきた。


「だから、お前らが勝てる状況じゃないって言ってるだろ?」

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