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未来の嫁を最強にしてみた  作者: 寺田 秋
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第1章-3話 四ツ目家

 俺は今、大きな屋敷の前に立っている。

 どこぞの神社かと言わんばかりの大きな武家屋敷だ。

 『四ツ目(よつめ)』と表札が掛けられているこの屋敷が未来ちゃんのお家らしい。


「良いとこのお嬢様だったのか……」


 ちなみに、村の端にあるこの家は俺の家から徒歩数十歩のお隣さんだった。爺ちゃんからこの話を聞いたとき「幼馴染ってそういうことね」と、俺は未来ちゃんとこの身体の持ち主の関係性を理解した。


 そういえばこの身体の持ち主について、ある程度は爺ちゃんに聞くことができた。

 名前は『笛有(ふえあり)与正(よせい)』。現代では無いような古めかしい名前だった。


 与正くんはあの家で育った16歳の男の子で、家に併設された道場で毎日爺ちゃんにしごかれているらしい。しかし、身体が弱くてよく倒れてしまい、その度に未来ちゃんに介抱されているのだとか。

 可愛い幼馴染がいて毎日のようにイチャついていたのかと考えると、与正くんのことが少し憎らしくなってきた。

 

 だからといって、俺がこの二人の関係に傷を付けるわけにはいかない。


「ここで逃げたら男がすたるよ!」


 心の中の大空あおいちゃんがそう語りかけてくる。

 俺は拳をグッと握りしめ、屋敷の門をくぐった。



────未来ちゃんは居なかった。


「おらんのかい!」とツッコミたくなったが、家の人に話を聞くと、どうやら彼女は村の老人たちのお手伝いなどをするために日中は大体外に出ているらしい。


 見返りのない奉仕活動。ボランティアを日常的に行っている未来ちゃんのその姿勢に、俺はプリピュアを見た時と同じ感覚を覚えた。

 彼女は俺に無いものを持っている人だ。

 謝罪や状況説明のためでなく、ただ純粋に未来ちゃんと話がしたくなった。

 何を考えているのか、何が好きなのか、何が嫌いなのか。アニメキャラを知っていくように、彼女のことも知りたくなった。

 気付けば俺は、村の中心へと向かって走り出した。



 深い深い森の奥。

 暗闇の中に3つの人のような影が見える。

 が、人にしてはあまりに異形な特徴を持っていた。

 一人は角を、一人は翼を、一人は尻尾を有している。


「やっと動ける身体を取り戻したぜ……」


 角持ちが拳を握り、動きの確認をしながら呟いた。


「随分と遅かったわね。私たちはとっくに戻っていたけれど」

「うるせぇ! 必要な獲物の数が違ったんだろうが!」

「あら、本当にそうかしら?」


 角持ちと尻尾持ちが言い争いを始めた。


「復活して早々に喧嘩とは、元気そうでなによりです」


 翼持ちが扇で口元を隠しながら、冷静な顔で語りかける。


「で、復活したあなたはどうするつもりですか?」

「へっ、身体が戻ったんだ。まずは肩慣らしにそこら辺の雑魚をやっちまうか」

「ふ〜ん、力が戻ったのに雑魚狩りねぇ」

「……なんて俺様が言うと思ったか?」

「え?」


 角持ちは自信ありげに尻尾持ちの方を見る。


「やるからには最初から強敵に挑む」

「強敵?」

「四ツ目家を落とす」


 そう言いながら、角持ちは大剣を肩に担いだ。


「あら、四天王の一角をいきなり潰そうだなんて……。まぁ、あなたらしいわね」

「ほう、四ツ目家を攻めるのですか。是非見てみたいですね、四ツ目が沈むところを」

「フンッ、俺様が人間どもを恐怖のどん底に叩き落としてやる。……生きるためにな」


 そう言って角持ちは森の闇の中へと消えていった。

 翼持ちと尻尾持ちは何を期待しているのか、ニヤリと笑いながら角持ちを見送った。

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