3.旧友(オールド・フレンド)との再会(リーユニオン)
金髪青眼の悪敵と一緒に、電車に乗る。(当然ながら、2人分の運賃が掛かる。)
旧友に会う為に電車で近くの駅までいく。
電車を降りる。目的地の駅に着いた。そこから歩いて、10分くらいの図書館。
そこで、輪廻は、チラッチラッと人通りを見ながら、待つ。
サタンが少々うるさかったが
「図書館か。(現代の書物を)見たい!」、黙らせた「今は駄目!!!!!」。
しばらく待っていると、突然、後ろから気配がする。
そーっと、振り返ると、ベリアルがいた。
ベリアル。生粋の日本人である。黒い目に短い黒髪、体格は女として良い。そして、金のピアスをしている。しかし、不良の様な気配はない。大学生なのだし、こんなものなのだろう。
ベリアルは、同年代の19歳の少女で、輪廻の旧友である。
「こんにちは。ベリアル・トルーマン」
「始めまして、ベリアル・トルーマンです。知っていると思うけど・・・・、私の旧友!!私の主マモンの名によって、挨拶するわ。」
「挨拶と言えば、サタンだ。よろしく。」
「挨拶=(が)サタンって云うのは、どう云う事?」
「気にするな。サタンは挨拶なのだ。」
「寒いジョークね。ちなみに、サタンは信仰しない」
「そうなのか・・・・・。」
「ところで、ベリアル。ベリアルと云う名前だけど、呪いの名前だったよね?」
「その通り、呪われた少女、ベリアル・トルーマン。それが私。主マモンの名によって名乗るわ。」
「両親の呪い、両親の寵愛。対照的だな・・・・・。」
「お父さんの呪いがベリアル、お母さんの呪いがトルーマン。造られた名前だったわね。本当は、トルーマンなんて名前は、太平洋戦争のトルーマン大統領を最後に、この世にない。原子爆弾投下の罪を背負わされて、なくなった名前ね。主イエス・キリストではないけれど。」
「いえ、主マモンよ。ベリアルは、エノク書の堕落天使の名前。主マモンの名において、私が外道の知の子よ。」
「ところで。」
輪廻が切り出す。
「その、“主マモン”って云うのは、何?」
「主マモンは、主富よ。つまり、主マモン。」
マタイによる福音書6章24節に書いてある。
“だれも、ふたりの主人に仕えることはできません。一方を憎んで他方を愛したり、一方を重んじて他方を軽んじたりするからです。あなたがたは、神にも仕え、また富にも仕えるということはできません。”
新約聖書の1節である。
悪魔が福音書等から持ってきて良いものか?
聖書を持ちながら、サタンは言う。
ともかく、主マモンとは、悪魔マモンを崇拝していると云う事だろう。
「つまり、主をマモンにしているの?」
「そうよ。主マモンの名において答えるわ。」
「そう・・・・・・。」
輪廻は、失望した。会った旧友がこんな信仰を持っているとは・・・・。
「主マモンの名において元気付けるわ。元気出しなさい。」
「私は信仰に命を捧げた女だけれど、マモンに命を捧げる気はないわ。」
「そう?」
「もういいわ。」
怒った訳ではなく、開き直ったと云う処か。
信仰の対立と云うものは、見ていて面白い。それが、親友同士なら、なおさらだ。
「それから、主マモンの名において、私の命はあなたの手に、過去も未来も永劫にある事を忘れない。」
「それについては、別に気にしてない。」
「私は気にする。」
「そう。」
まあ、ベリアルの命の恩人、命よりも大切な人がリンネなのだろう。
しかし、この2人は面白い。なぜなら、信仰を超えた処にこの2人があるからだ。
サタン的には、この2人は神すらも凌駕するだろう。尊いからだ。
「私は、特にその件に関して、話す事はない。」
「なら、言わせてもらうけど、あなたの事は私が守る。主マモンの名に誓って」
「そう。よろしく」
「では又。後これ。連絡先メールアドレスね」
「確かに。私のよ」
「では。」
「また会おう。」
しかしちょっと、口調が安定していないな。この娘。
しかしまあ、この2人マークしておこう。マモンに頼んでおくか。あいつは悪魔そのものだからな。
輪廻は、踵を返して、駅へと歩き出す。
「何よ。」
「何でもない。」
私には、彼女の顔が妙に魅力的に見えた。まあ、元々魅力的なのだろうが。
まあ、悪の道に引きずり込んでやろう。そう、悪敵は誓うのだった。