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プロフェッショナルズ!!!〜世界最強の弟子が英雄になる話〜  作者: 向野ソーリュー
第一章 旅立ち編
10/35

10 初戦闘

 ーー廃都モトノキーー


「「朝焼けの団」の皆様、モトノキに到着しました」


 トキヨウを出て二時間後くらい、運転手の女性が後ろを振り返り到着を知らせる。


「おおーもう着いたか、やっぱり会話が弾むと時間が流れるのは早いなぁ」


「じゃあ降りよっか! 早く外の空気吸いたい」


 そう言うとミチルさんは一番乗りで車を降りていった。


 全く、凄い元気のある人だ。


 そう思いつつ俺も座席から腰を上げてタクシーから降りた。


「うわぁ、これは……」


 目の前に広がる景色に俺はあっけにとられて息を飲む。

 タクシー内で聞いていた通りモトノキはゴーストタウンだった。


 目に入る住宅やマンションのほとんどが植物に覆われて廃れているのがすぐに分かる。

 更に建物の壁に所々、亀裂が入っているのが分かる。

 道路は所々荒れていて車では通れそうになく、道端には乗り捨てられた錆びた車が寂しげに佇む。

 もちろん人の影などなく、住み着いた野生の動物の鳴き声がこだましている。


「ようこそユウイチ、ここが廃都モトノキだ。数十年前まで人が居たんだが、災害、伝染病、極め付けには強力な怪物の出現で今は誰一人として寄り付こうとしない」


「不運ですね……」


「まあ、仕方ないよ。ここまで色々重なればこの街は呪われているって思っちゃうもんね」


「まあ、人が寄り付かないお陰で今は動物達の楽園と化しているのですが」


 ハヤトさんは自分の大盾と剣を背中に装備しながら言う。


 確かに言われてみればこの場所からも色んな生き物が見える。

 鳥類は空高く飛び、野生の犬が動物の死骸に群がる。

 なるほど人間がいなくなった街はこうなるのか……。


「まあ、そんなモトノキが今回の舞台だ。老朽化が進んでるから頭上、足元に注意しながら危険猪を探す、目標は二日くらいだ」


「了解です」

「オッケー」

「分かりました」


「それと運転手さん」


 ケイヤさんがくるりと振り返りタクシーの運転手に何か言おうとするが運転手の女性は先にそれを言い当てる。


「はい、解体班の手配ですね」


「話が早くて助かるよ、明日ぐらいから配置を頼んどいて」


「かしこまりました。ではお気を付けて」


 運転手の女性はそれだけ言い残してタクシーに乗り込みモトノキを離れていった。


「ところでケイヤさん、解体班って何ですか」


「プロフェッショナル協会が雇っている怪物の素材を解体して買い取ってくれる人たち」


「へぇ、そこまで手回ししてくれるんですね!」


「そういうところはしっかりとしてくれるんだよな。協会が雇っているから利用するのも無料だ」


 さすが日の国で一番デカイ組織なだけあってそう言うサービスはしっかりしてるな。

 サヤカちゃんが言っていた通り稼げるからなんだろうな。


「それじゃあユウイチにとっての初クエスト張り切って行こうか!」


「「「応!」」」


 そうして「朝焼けの団」は生命が渦巻く廃都モトノキの探索を始めた。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ーー廃都モトノキの南区ーー


 甲高い鳥の鳴き声が人の居ない建物の間をこだまして響き渡る。


「ところでユウイチ?」


 先頭を歩くケイヤさんが俺に向き直る。

「朝焼けの団」は今、モトノキの南区(ちなみに地図は車の中で運転手がくれた)の大通りを探索していた。何か獲物の痕跡がないか探してはいるがなかなか見つからないと言った状況だ。


「はい?」


怪物(モンスター)はどうやって生まれるか知ってるか?」


「えーと、それは…………あれ?」


 俺はこれまで培ってきた知識をフル回転させて怪物についての情報を引っ張り出そうとする。しかしーー


「ワカリマセン」


 眉をひそめて考え込んだけど正直、全く知らなかった。

 そういえば怪物は怪物と決め付けてどうやって生まれてくるなんて考えもしなかった。爺ちゃんに聞けば多分教えてくれたと思うけど。


「はははっ、まあそうだろうな! なかなか知られてない事だし。それじゃあ先輩らしく詳しく教えて上げよう。ミチル、ハヤト少し早いけど休憩にしよう」


「「了解」」


 すると探索していたミチルさん達も切り上げて古くなったベンチに腰掛けて休憩に入った。


 ケイヤさんは壊れた大きな壁の上に腰掛けて手のひらでチョイチョイっと俺を手招きする。


 俺はそのままケイヤさんの隣に腰掛けた。


「じゃあ怪物はどうやって生まれるかだがユウイチ。例えばあの木にとまっているあの鳥あれは怪物になると思うか?」


 ケイヤさんは指で木にとまっている小鳥を指す。


 うーん、流石にあんなに小さい小鳥は怪物にはならないだろう。


「なりません」


「ブッブー不正解。正解はあれも怪物になります」


「マジですか」


「マジなのです。それじゃあどうやってなるかだが、それは大きく分けて二つ『暴走』と『器の大きさ』だ」


「『暴走』と『器の大きさ』?」


 なんのこっちゃ?


「そうそう、その二つ。じゃあまず暴走からだ。

 これは生物が本来持っているソウルが突然暴走する事から怪物となるんだ。

 ソウルは暴走するとその生物の骨格を元から変形させてしまう。

 だからあの木にとまっている鳥も、もしソウルが暴走したら六メートル級の怪鳥になる話なんてザラにある」


 そんな事がザラにあるんかい!

 昔はよく怪物を「全部殺せば世界からいなくなるんじゃね」とか考えていた。

 それがそこら辺にいる生物が普通に変化して怪物になっていたのか……通りで怪物がいなくならないわけだ。

 だけど一つ引っかかる事がある。


「……人間はソウルの暴走を起こさないんですか?」


 そこら辺の生物がソウルの暴走を起こすなら人間も起こしかね無いのではないのか?


「いい質問だな、答えは()()()()()。詳しくはまだ分かって無いらしいが、どうやら人間は他の生物よりもソウルコントロールがしっかりしているらしい。

 アサミさん曰く、「多分、野生の動物と違って理性が強いからだよ!」と言う事だそうだ」


「あははっ、以外とモノマネ上手いですね」


「だろ? 結構練習したんだ」


 そう言うとケイヤさんは楽しげに笑った。


「そんでもう一つは『器の大きさ』。

 これは許容出来るソウルの量が多過ぎた場合だな。

 ユウイチはソウルの大きさが極大だったろ?それと同じように動物にも器の大きさがあってな。

 怪物は食事などをすることによってソウルを溜めるらしくてな。普通は器が小さいと変化は起きないんだけど、これが大きい場合ソウルを大量に溜め込む。

 そして溜め込まれたソウルは次第に肉体を変化させるんだ。

 それでこの場合が一番厄介で、許容出来るソウルの量が多いから大体、それらは強力な個体へと進化してしまうんだ」


「ソウルって意外と危険な物何ですか?」


 話を聞いている限りでは俺はそうとしか思えなかった。


 質問されたケイヤさんは首をひねって少し考え込んで答えた。


「んー、危険な物と言われるとなんとも言えないな。確かに使い方を間違えたら人を容易に殺す事だってできる。だから使い方次第だと思うなぁ俺は。

 例えば敵意を剥き出しにしている怪物に対して身を守る為に使うとかな」


「!」


 そこで俺はようやく気付いた。俺たちに注がれる剥き出しの敵意に。そして素早くその敵意を注ぐ生物に視線を向ける。

 するとそこには一匹の毛皮に覆われた大きな四足獣がいた。


 あれは……狼か?


 だが、その狼が体の大きさとは他に大きく違う点が一つある。

 その狼は体から黒いモヤを発していた。


「体長が二メートル強ぐらいの狼。まあ、普通の個体ではないな、そして人の肉など簡単に裂けそうな鋭利な爪と牙。そして怪物を怪物と足らしめる決定的証拠の黒いモヤ。

 狼の怪物、上位狼(ハイウルフ)ってとこか? 推定ランクはBだな」


 ケイヤさんは敵意を注ぐ生物の力量を的確に把握する。どうやらあれは上位狼と言う怪物らしい。


「ユウイチ、もう一つ勉強だ。怪物と普通の生物との決定的な違い、それは体が黒いソウルで覆われているかいないかだ。ちなみにあの黒いモヤは暴走したソウルが溢れて出てたものらしい」


 なるほど、ソウルは暴走するとああなるのか……凄く禍々しいな。


「ユウイチとりあえずハヤトの後ろにいろ、万が一があったら大変だからな」


「わかりました!」


「ミチルは俺のサポートよろしく」


「りょーかーい」


「ユウイチしっかりと見てろよ。これから見せるのがプロフェッショナルの入り口になるからな」


 これから始まる戦闘がプロフェッショナルの入り口……しっかり見て学べ俺!


「それじゃあ始めようか、上位狼。お前が俺の命を取る気なら俺もお前の命を取る気で行かせてもらう」


 背中から太刀を抜きはなったケイヤさんは上位狼に静かにそう告げた。









十話を読んでいただきありがとうございます。


いやー、やっと十話分書くことができました。

そしてタイトルが初戦闘なのに戦闘してないですね。

戦闘は次の回にたっぷり書いているので楽しみにして下さい。


次回の戦闘が気になった方はブックマーク登録もよろしくお願いします。


それでは次話もよろしくお願いします!

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