帰還
祝勝会は国をあげて盛大に行われた。
遥は救世の勇者として銅像になるらしい。
「二人には本当に世話になった」
ジークが頬笑む。
「私は何も…」
そう言うと「マールがさみしがるな」と笑った。
遥が国王陛下に呼ばれる。
遥がいなくなるとジークは「番犬がいなくなった」とウインクした。
「あなたのやさしさ、おだやかさに私も救われた。私を友と言ってくれるか?」
私はうなずいた。
「私もジークが好きです。立派な王様になってくださいね」
ジークは「最後に一度くらいなら許されるだろう」と私をふわっと、やさしく抱き締めた。
そして、ジークも呼ばれて行った。
遥が戻ってくる。
「浮気はだめだよ」
私は笑う。「そんなんちゃう」
「蒼子は隙がありすぎるから…」
遥がため息をつく。
私は遥の手を握った。
「いらん心配せんでよろし」
「僕、尻にひかれちゃうなあ」遥がぼやく。
私たちは顔を見合わせて笑った。
◇◇◇
翌日、はじめにこの国に呼ばれた部屋に私たちはいた。
「今から帰還術を行う」
ジークが宣言すると、黒いローブ姿のおじいさんたちが竜の心臓石を持ってやってくる。
私たちは握手する。
「さらばだ、友よ」
ジークの言葉に胸が熱くなる。
「さよなら」
「ありがとう、またね!」
次の瞬間、私は意識を手放した。