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神様へのプレゼント  作者: 鈴月桜
第2章 恋愛の訪れ
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告白

玄関を開け、「ただいま」

妹も出掛けているのだろう、誰もいない家に入る。

結局、家に着いたのは12時

さっき電話で言っていた胃薬がテーブルの上に置いてあった。

それを一気に飲み干し、風呂場に向かう。

シャワーを浴び、冷蔵庫から冷やしてある麦茶をグラスに注ぎ飲み干すと、そのままソファーに横たわり寝てしまった。

2時間ぐらい寝たころ、テーブルの上で「ブブブブ・・・」と携帯音が鳴る。

その音に反応して寝ていたソファから体を起こし、携帯を手に取る。

携帯のディスプレイに大城さんと表示

?????

慌てて通話ボタンを押す。「もしもし岩崎です。」

すると電話の向こうから大城さんの声がした。

「今日、映画観にいく約束した事、覚えている?午後1時に有楽町で待ち合わせしたんだけど・・」

ちょっと怒ってる口調である。

時計を見る、針は2時を指している。

何の事か分からなかったが「ごめんなさい。今から急いで行きます。」

普通に行けば1時間以上掛かる。髪の毛を慌てて髪をとかし、家を出る。

駅まで全力で走り、有楽町を目指す。

電車に乗り、席に座ったが、落ちつかず席を立つ。

すると、ズボンのポケッドが震える。携帯の着信である。

電車の中だが、通話ボタンを押し、小声で話す

「もしもし」

「4:00からの映画を観るから、慌てないでいいよ。適当に時間を潰しているから、有楽町に着いたら電話頂戴」

電話は切れた。いくらか口調は和やかだった。

走る電車の外を眺めながら、映画の約束をした時の事を思い出そうとした。

しかし、全然思い出せない。

でも、これってデート? 僕が誘った?

大城さんから僕を誘う事なんて100%無い。

もしかしたら、他の人がいるのかも?そうだ、皆と一緒なんだ。と、ありとあらゆる事を妄想する。

そして時計を見ると時計の針は3時を過ぎていた。どうしてこうなったのか分からないが、大城さんに嫌われる事が怖かった。

電車内のアナウンスが流れる「有楽町 有楽町」

僕はドアの前に立つ。アナウンスから電車が止まるまで、こんなに長く感じたのは初めてである。

そしてドアが開く。急いで改札口に向かう。改札口が近づき電話を掛ける。

「もしもし 今有楽町駅の改札口に着いた。」

「知ってる」

えっ その回答にびっくりして前を見る。そこには彼女が私に向かって手を振っている姿が見えた。

大城さんの前に近づき「ごめん」

「いいよ 昨日は凄く酔っていたから忘れちゃったのかと思っちゃった。でも良かった、来てくれて」

辺りを見回すが、他に人の姿が無い事に気づく。

そして彼女の手には映画のチケットが2枚あり、その1枚を僕に差し出してきた。

「本当に貰ったチケットだから、お金は要らないよ」

「あっ ありがとう」

全く記憶が無い。更にチケットを見るとホラー映画の題名が目に入る。

日本映画史上1,2を争うほど怖いと講評されている映画である。

僕は、大のホラー映画嫌いである。大城さんといけるのは嬉しいが・・・・

時間も少し遅いせいか、客席は所々空席が目立っていた。

映画が始まり、最初から目を閉じるシーンが多かった。クライマックス近くになると、ほぼ目を閉じている状況であった。

映画が終わり、席を立とうとしたが、腰に力が入らない。

腰が抜けるとは、アニメ等ではよく見るが、体験したのは生まれて初めてである。それも、こんな大事な日に・・

彼女は微笑みながら、「岩崎くん大丈夫?」と話し掛けて来たが、恥ずかしくて、下を向く事しか出来ず声も出ない。

座席に捕まり立ち上がる。

ゆっくりゆっくりと出口に向かって歩き出す。

見兼ねたのか、彼女が僕の腕を持ち上げるように腕を組み、歩くのを支えてくれたのである。

僕は恥ずかしながら、小さい声でつぶやく

「ごめん」

「ホラー映画アレルギーは、本当だったんだね。無理に誘ってごめんね」

入場口を出て、近くのソファーに座った。

彼女も横に座る。

「ごめん。昨日の飲み会の事、全然覚えて無くて、今日の約束も全然覚えが無いんだ。」


彼女は笑顔を浮かべながら話す

「なんとなく、そうでは無いかと思った。練習時間の待ち合わせもいつも最初に来ている岩崎君が、待ち合わせ時間に来なかったから、具合が悪いのか覚えて無いのか、どっちかなと思いながら待ってたんだ」

顔を近づけ、下を向く私を見上げる様に

「迷惑だった?」

慌てて返答をする

「迷惑だなんて、とんでも無い。嬉しかったよ」

「良かった。でも、ホラー映画は迷惑だったでしょ」

ここは苦笑いするしか無かった。

私は、いじめられてたせいか、すぐに下を向く癖がある。

今も苦笑いして下を向いた。

その瞬間

「ダメだよ!下向いたら好運が逃げちゃうよ。

「ごめん」

と顔を上げて返答して、目のやり場に困り、また下を向こうとした

「また」

彼女が笑いながら指摘する

僕も、つられて笑った。

席を立ち、映画館を出る。

街並みを歩き、駅の方に向かっていると、

「そこの喫茶店に寄って帰る?」

「うん」

喫茶店に入るのは嬉しいが、何を話せばいいのか、喫茶店に向かいなから考える。余りに急な出来事で頭の整理が出来ない。中学校の時に想いを寄せていた事。中学校で起こった様々な誤解、何を話せばいいのだろう。果たして口から、その言葉が出せるのか不安である。妙な緊張感がはしり、心拍数があがる。学校等で順番に意見を述べる時の様な気分である。

喫茶店に入り、空いてる席に座りコーヒーを注文する。

席に着いたが、何を喋ればいいのか分からず、案の定、口から言葉が出ない。

「ごめんね。俺、女性と二人で街を歩くのも喫茶店に入るのも初めてで、つまらないでしょう?」

「ううん。楽しかった。私も男性と街を二人で歩くのも初めて。映画も男性と二人で観るのも初めて。今日は、初めてづくし。」

彼女が笑顔で喋る。

その言葉を聞き、心臓の鼓動が激しく動き始める。彼女の初めてと言う言葉に反応している事が分かる。

彼女が席を立つ「ごめんね。トイレ行って来るね」

席を離れている間

何とか、また会ってもらいたい事を伝えたい。どの様に話せばいいのか?全く分からない。

今日の約束は、どの様にしたか覚えておらず、お酒も入っていない今、次の約束をとる事等出来るのであろうか?

日常は皆がいるため、なかなかゆっくり大城さんと話す事は出来ないのは、分かっている。

ここで、何とか次の約束をとりたい。

自分で自分を奮い立たせ、大げさかもしれないが、ありったけの勇気を絞り決心を固めた。

彼女がトイレから、席に戻って来た。

「ごめんね。」

と言って席に座る

彼女の目に涙が溜まっているのが確認出来た。彼女が話し始める。

「私、中学校の時も、岩崎君ともっと話したかったの。岩崎君は覚えているか分からないけど、中学に入る前の春休みでの出来事、お祭り、合唱コンクール、いつも私を助けてくれた。私がいじめられそうになった時も自分を犠牲にして私を守ろうとしてくれた。いつか岩崎君にありがとうと伝えたかった。その言葉を伝える事が出来ないまま九州に引っ越して、岩崎君への気持ちが・・・・」

大城さんは、涙を流しハンカチで目を覆う。言葉が出ない様子が見てわかる。

彼女の言葉は、僕が彼女に抱いていた想いと重なった。僕も大城さんともっと話したかった。僕なんかが話しかける事が出来るような女の子では無い事を理解していたが、それでも話しかけたかった。いじめられて心が折れそうになった時も彼女の笑顔が直してくれる。そんな時が何度も何度もあり、僕は彼女の事が好きになっていったのである。高値の花である彼女が僕と話したかったと、今、目の前で泣いている。

今まで閉じてた口が、ごく自然に動き言葉を発する。

「僕のほうこそ、大城さんと話したくて話したくてしょうがなかった。僕みたいなのが大城さんに話しかけると、大城さんが迷惑するのでは無いかと思い、話しかけれなかった。大学に入って大城さんを見た時、そして同じサークルに入った時、心の底から嬉しくて嬉しくて・・・・・」

僕は話していくうちに、告白みたいな話になっている事に気づき言葉が止まった。

ずーと好きだった人が目の前にいて、おかしな気分になってしまったのか。ただ僕も話したかったと相槌するはずが、こんな事になるなんて、どう修復したらいいか言葉が見つからない。

すると大城さんが話しかけてくる

「岩崎君は私の事、どう思っていたの?」

「ずーと、好きだった。」

僕は本当にごく自然に回答して言葉を発した後、事の重大さに気づき、慌てて言葉を修正しようと

「あっ、いや・・その・・・・」

「私も」

僕の耳にとんでもない言葉が聞こえた気がした。

「ん?何て・・・」

「私も・・・・私も好きだった」

今度ははっきりと聞こえた。

「あ・・・・ありがとう」

僕はつい感謝を伝えたのだが、その言葉は適切な言葉で無い事を、発した後に気づく。中学校の時にお互い好きだったと伝え合った時に、その様な言葉を発した事でその会話は遮断されてしまった。肝心な今の気持ちを話す前に使う言葉では無い。

その後、どう話していいか分からず、沈黙したままコーヒーを何度も何度も口にしていた。今の気持ちを伝えたいが、言葉が出せない。

彼女も同じように、顔を赤らめながらコーヒーを何度も何度も口にしていた。

そして二人共、会話も無くコーヒーを飲み干したのであった。

この状態が続くのはまずいと感じ、伝票に手を伸ばす。

すると沈黙を破り彼女が言葉を発する

「今も・・・・・」

彼女の言葉は小さく、聞き取れない

「今も・・今も同じ気持ち」

今度は、はっきりと聞こえた。僕は彼女の顔を見ると、先程より更に赤みを増した彼女の顔が目に飛び込んできた。

僕は彼女の言葉を返そうとした時、頬を暖かい物が毀れ落ちるのが分かった。それは涙であった。こんな事は初めてで涙が止まらない。

中学校の合唱コンクールの時、彼女の歌声を初めて聞いた時の様に、自然と涙が流れた。

しかし今回は、その涙が止まらない。

涙を流しながら「僕も・・・・大城さんの事が、今も好き・・・」

すると彼女も涙が流れ始め、二人で涙を流した。そして二人で涙を拭う。

そんな二人をみて、店員が恐る恐る話しかけてくる。

「コーヒーのおかわりは?」

僕は店員に顔を向け

「お願いします。」

店員は、二人にコーヒーを注ぐ

先程まで気づかなかったが、コーヒーの香ばしい匂いが二人を包みこむ。

大城さんは、極度の緊張感から開放されたのか、微笑みながら話しかけてくる。

大城「岩崎君、もう一度言って?」

岩崎「えっ」

大城「ダメ?」

岩崎「うん」

大城「岩崎君のその返事久々に聞いた」

岩崎「えっ うん」

大城「中学校のときも、私が話しかけると「うん」しか言わなかったもんね」

岩崎「うん」

大城「ほら」

大城さんは僕の顔を見つめながら

大城「でも、それでも岩崎君が好き」

僕は大城さんの言葉に翻弄されたてはいたが、言葉に出来ない程の嬉しさが込み上げてくる。今この場所で彼女から出てくる言葉が、未だに信じられない。これは夢なのかと思うほど、自分の気持ちも整理出来ない。もしこれが夢であっても、この最高な幸せを味わえているのだから、夢でもいいとまで思ってしまう。

今度は僕から、きちんと交際の申し込みをしようと大きく息をして呼吸を整え、大城さんの顔を真っ直ぐみる。

そして、話そうとした瞬間

この限りなく大事な時に、上着のポケットに入っていた携帯のバイブ音が響く。

携帯の音が鳴りながら交際の申し込みをするなんて、雰囲気が台無しである。

僕は携帯を手に取り、着信相手を見ると着信相手が高崎だと知り電話に出た。


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