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神様へのプレゼント  作者: 鈴月桜
第11章 永遠
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神様へのプレゼント

会場からは「アンコール」の嵐が会場に響きわたる。

すると、フォークギターを肩に掛け、パイプ椅子を持った荒井がステージ中央に向かい

中央に椅子を置いた。そして、マイクを座った時に声が拾える場所に調整し、BGM調にやさしいタッチで弾き始める。


「これから、俊が書いた、理佳さんに送る手紙を読ませていただきます。これは、俊のパソコンから勝手に取った文書です。俊ごめんな」

「俊の本当の願い、想いをこれから語らせてもらいます。

自分が俊と同じ状況だったら、こんな風に考える事は出来ない。

本当に最高の友達です。ここまで愛とは、すばらしい事なんだと、この映像を見ている方、会場に来られている方にも分かってもらいたく、文章を読ませていただきます。」


そして僕が書いた文書を読み始めた

(暗い暗い道を歩いて来た僕が、君と出会って道に灯火がつく。

この灯火は君と愛し合い、強い炎に変わる。

君との愛を育み、道は明るくなった。

君と結婚し、この道を永遠に歩く事になった。

僕が暗い道に行きかけても、いつも君は明るい道に戻してくれる。

君と出逢えて本当に幸せだ。

それまでは、僕の願いを叶えてくれなかった神様。


この出逢いを作るためだったんだね。


でも神様

後1回だけ、わがままを言わせて下さい。

これから先、生きていればお願いする予定だった、願いの分を込めて、

最後のお願いを言います。


僕が彼女と歩けなくなった時、彼女が暗い道に行かないように力を貸してください。

彼女の灯りを消さない様にして下さい。

これが僕の最後のお願いです。

もし聞いてくれなかったら、天国で直接お願いするでしょう。


理佳

君と出逢えて、僕は世界一の幸せ者です。

本当に本当に君の事を愛してるよ

いつも禁じられているけれど、一言言わせて下さい。


最後まで同じ道を歩んで行けなくて

ごめんなさい。


荒井の眼から涙が毀れ落ちる。

会場の殆どがハンカチを拭う。

会場からは、「俊さん・・」「なんで・・・」等の声が漏れる。


すると、ステージ脇から理佳がステージの中央に歩いてくる。

いつも泣きくずれる理佳が、笑顔でステージの中央に立った。

マイクスタンドからマイクを取り、ネット放映用のカメラに向かって

「俊、観てる」

「会場の皆様も、私たちの事で涙してくれて、ありがとうございます。


でも、私達は終わりません。いつまでもいつまでもお互いの手を取り合って生きていきます。もし肉体が無くとも、いつまでも愛し合っていきます。

では最後にアカペラで「翼を下さい」を歌いたいと思います。


この歌は俊との思い出の歌、私と俊がいつまでも飛んでいられるように、自由になれるように歌います。

みなさんも一緒に歌ってください。」


理佳は、大きく息を吸い込み歌い始めた


いま私の願いごとが

かなうならば 翼がほしい

この背中に 鳥のように

白い翼 つけてください


この大空に 翼をひろげ

飛んで行きたいよ

悲しみのない 自由な空へ

翼 はためかせ 行きたい


いま富とか名誉ならば

いらないけど 翼がほしい

子供のとき 夢見たこと

今も同じ夢に 見ている


この大空に 翼をひろげ

飛んで行きたいよ

悲しみのない 自由な空へ

翼 はためかせ 行きたい


この大空に 翼をひろげ

飛んで行きたいよ

悲しみのない 自由な空へ

翼 はためかせ 行きたい


理佳に翼が生えたように、自由と希望に満ちた声であった。

中学の時、大学の時の彼女の姿が蘇る。僕の目にも涙が溜まる。

理佳と共に、会場の客も涙を流しながら歌い、メンバーも中央に集まり泣きながら歌いきった。

映像を見ていた、院長、師長、途中から遠目で見ていた看護師も涙が止まらない。


僕は、本当に幸せ者だ。こんな幸せな人生になるとは思わなかった。

溜まっていた涙が頬を伝う。


呼吸が苦しい、僕は死が近づいている事を感じる。

会場に繋がっている、カメラとマイクに身体を向ける。

そして、酸素マスクを取り、会場に向かって


僕は話始めた

「みんな、ありがとう。僕は本当に幸せでした。HOPEのみんな、加藤、大河内さん、そして理佳、本当にありがとう」口が渇いているせいか、むせてしまう。

看護師が背中をさすり、酸素を口にあてようとしてきたが、僕は手で要らないと酸素を拒んだ。

看護師が、再度、酸素をあてようとしたが、中島先生が看護師の手をとり、無言で首を横に振った。


僕は、再度、話始める

「理佳、本当に僕なんか好きになってくれて、ありがとう。もっともっと一緒にいたいけど、ごめんね。でも、僕は病気に負けなかったよ、君を最後の最後まで愛する事が出来た。僕は君の声、想いを持って天国に行きます。

最高の人生と最高の妻を贈ってくれた神様には、今歌ってくれた君の歌をプレゼントするね。」そして、また、むせてしまう。

気が遠くなる。息が出来ない

僕は、最高の笑顔で理佳に最後の言葉を贈る。


「理佳、君に合えて良かった。君と結婚出来て良かった。」

最後に力を込め

「理佳、愛してるよ」

僕は笑顔のまま、意識を失った。



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