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神様へのプレゼント  作者: 鈴月桜
第9章 大河内沙耶
36/43

(過去)大河内沙世とは(中学時代の理佳との出会い)

小学校6年生になると、受験勉強に励む時間が増えてきた。横浜にある名門女子中高一貫校の受験である。小学校3年から週2日で家庭教師を招いていたが、今では週4日で家庭教師が訪れる。事前の模擬試験の結果では、A判定が続いていたので私も余程の事が無ければ、受かる事を確信していた。

しかし、その余程の事が起きてしまったのである。受験当日、試験時間より前に着こうと早めに父の車で受験会場に向かう。車の後部座席に私と母が座り、私は道路側の席で母は中央車線側の席に座る。左ハンドルのため、私の前は運転する父がいる。

国道16号線は、そんなに混んでいなかったので、充分時間にも余裕があった。車は中央車線を進み、私達の後ろには車がおらず、父も快適に車を進めていた。そして信号で止まる。バックミラーを見る父が後ろの異変に気づく。「伏せろ!」大きな声を出す事等なかった父の声に驚き後ろを見る。するとすぐ近くに2トントラックがスピードを落とさず車に接近している。すると母は「沙世」と私の頭を床に押し込めるように両手で車の床に寝かせる。その上に母が私をかばうように重なる。

2トントラックは私達の車に躊躇なくぶつかり。激しい振動が伝わる。後部ガラスが割れる音、鉄と鉄がぶつかる音、あまりの出来事にまるで映画のワンシーンが走馬灯の様に頭をよぎる。不思議と恐怖とかでは無かった。そして意識が通常に戻ると足の痛みに襲われる。それと同時に私をかばった母のうめき声が聞こえる。上になっている母を見るとどこから流れているのだろう母の血が私に落ちてくる。私は体位を入れ替え母の上になり、必至に母を呼ぶ「お母さん、お母さん」

流れていた血は頭であった。髪で何処かは分からなかったが、出血がひどい。

「お母さん、お母さん」呼んでも反応が無い。

私はパニックになり、大きな声で叫んだ

「神様、私からお母さんを奪わないで」私はありったけの声を出して神様に訴えた。

すると「沙世ちゃん・・・・・」母の声がする。前座席の父も起き上がり、ドアが開かないので車の中で後部座席に来て母の頭部を見た。

「大丈夫だ」

すると、パトカー、救急車が到着して私達は全員救急車に乗り込む。

母は2週間入院したが、命に別状はなかった。

そして私の受験は終わったのである。


しかし、この事故を受け、更に強い絆が家族で生まれたのであった。

そして、小学校の卒業式を終えて、私の小学校生活も終わった。

私立中学校に行く予定だったので、制服も2月に頼んだので、春休みに制服が出来上がった。制服を取りに母が運転して横浜のデパートに車を走らせた。

そして制服を買った帰り道の車の中で

「沙世ちゃん、中学校でも見に行く?」

「別にいいよ」

「そんな事言わないで行きましょう?」

「じゃあ、いいよ」

そんな会話から中学校を通って帰る事になった。

そして中学校まで、2,3分の所で携帯が鳴る。父からであった。

「診察が早く終わったから、ご飯食べ行こうか?」

そんな父の言葉を母に伝える。

母は急にスピードを出し、「じゃあ急いで家に戻ろう」といって車を走らせる。

中学校が見えてきて、中学校の前に差し掛かったところでボールが道路に転がってきたのが見えた。

それを追う小学生だろうか、女の子がボールを拾おうと道路に出そうになる

「あぶない」と心で叫ぶが少女は足を止めて私達の車に視線を向ける。

私はその子を見て

「お母さん、あの子、凄く可愛かったね」

「そうだね」と母が返事をして、家に帰った。

そして春休みが終わり、中学校の入学式を迎える。

私立で同じ価値観のある子と学校生活を楽しもうと考えていた私は、市立中学校には期待もしなかった。また、くだらない日常に戻る事だけは確かである。

友達でも作れば変わるのだが、きっかけが必要だと考えていた。受験した学校には弦楽部があり、小さい頃から習っていたバイオリンで友達と演奏をして楽しめるのではないかと考えていたのだ。今まで個人レッスンしか受けておらず、やっと演奏が楽しめると期待していた。しかし、この市立中学校には弦楽部は存在しない。

吹奏楽しか無いので、取り敢えず吹奏楽でもやろうか悩んでいた。

スポーツは、どうもやる気は無く、とは言え何も部活に入らないと内申点に響く。そんな理由で部活には席を置こうと考えていた。

そんな事を考えているうちに入学式も終わり、教室へ戻る。

同じ小学校の子が教室に入ると声をかけてきた。そして別の小学校の子も挨拶をしてくる。

社交辞令的に話し掛けてくる子の会話には、殆ど意味が含まれない。私は、気分を害さぬよう、適当に会話を済ませ、席に向かった。

そして席に座ると後ろの子が私の横に寄って来る。また社交辞令かとため息をつく。

横に立っていた子が私に向かって話し始めたので、私はその子の顔を見た。

「私 大城理佳よろしくね」

と満面の笑みで私に挨拶をしてきた。

私は、すぐにこの前の子だと分かったが、あの時も感じていたが真近で見る彼女の笑みに言葉を失う。

「あっ 私 大河内沙耶。よろしくね」

感情を抑えて話したせいか、愛想の無い返事をしてしまった。でも何故か頬が緩んでいる私がいる事に気づく。こんな事は始めてである。

彼女はわたしとの挨拶が終わると大城さんの後ろの子にも挨拶をしている。私は聞き耳をたて彼女の会話を聞いている。

今まで他人の言動が気になる事なんか無かったのだが、妙に気になる。自分から他の子の席に歩み寄る事などしたことなかったが、初めて彼女ともう少し話をしようと、椅子を引き立ち上がろうとしたとき、担任の先生が教室に入ってきて、席を立たずそのまま椅子に座った。

そしてHRが終わると今日の授業は終わる。

一緒に帰ろうと思ったが、誘ったことが無い私は、そのまま教室を後にした。

彼女が来るのではと、普段よりゆっくり歩いて下駄箱まで行く。彼女はまだ教室なのかと思い、諦めて家に向かって歩き出す。

学校の校門を出て7,8分歩くと神社が見えて来た。ふと、大城さんの事を思い出した。すると後ろから走ってくる足音が私に近づく。その音は私の後ろで止まった。

「大河内さん、一緒に帰ろう」

その声は大城さんだと、すぐに分かった。

私は振り返り「いいよ」と笑顔で話す。

彼女は私の家の場所を聞いてきたので、診療所を説明する。彼女はその途中のマンションに住んでいるので、そこまで一緒に帰ろうと言ってきた。

なんか一生懸命話す彼女を見るだけで顔が緩み、心が和んでくるのが分かった。

私は「そうだね。そこまで一緒に帰ろう」と言うと

大城「中学校に入る時に博多から横浜に引っ越したから、まだ、この辺よく分からないから教えてね」

「そういえば春休み、学校の門の所にいたでしょ?」

「うん。何で知ってるの?」

「私の母が、大城さんをひきそうだったから」

「あ~、あの時の車に乗ってたの?」

「うん」

「でもよく私だって分かったね」と彼女は笑顔で話し掛けた。

(可愛かったから)と言いそうになり、口を塞ぐ

「どうしたの?」

と彼女が覗き込む様に顔を近づけ、話しかけてきた。あまりにも顔が近く、私はくしゃみをして誤魔化した。

「それで口を塞いでいたんだ」

と笑顔で私に話しかけてきた。何故だろう、彼女に見つめられると照れてしまう。自分でも顔が赤くなっているのが分かる程、熱をおびている。私は彼女の問いに

「うん」とだけ答えたのであった。

それから、彼女の父が東京に支社を作るため、横浜に来た事を聞くと

「じゃあ 博多に戻るの?」

大城「まだ分からないんだ」と返答が返ってくる。

沙世「東京のどこに支社を作ったの?」

大城「新宿って言っていたけど、まだ行った事がないんだ」

私は思わず住んでいた事を言おうとしたが、言えなかった。

私は過去の事は誰にも話していない。勿論、母の事も含めて誰にも話していなかった。

幼稚園の時に母が居なかった私に対する冷ややかな目線、同情するような目線を味わっていたので、過去の事は誰にも話してはいけないと感じていた。

他人は人の事を知りたがる。ましては不幸な話であれば、なおさら知りたがる。人の不幸な話を聞く事による優越感を楽しむ。それを聞いた人が自分も優越感に浸ろうと他人に話す。まるでウィルスの様に感染していき、あっと言う間に不幸な話は広まる。

幼稚園の時、友達のお母さんが私より前に母親が出来るのを知っていた。

私は母を知らずに生きていたので、何を言っているのか分からなかったが、翌週

祖母の家にお母さんが来た事があった。

その時は不思議だったが、今では分かる気がする。

その時も、父とお母さんが一緒に歩いている所を誰かがみて、感染していったのだと。

そんな事で、今の幸せな家庭を壊したくなかった。

二人はマンションの前に着く。

大城「このマンションの15階に住んでいるんだ。」

沙世「このマンション何階建なの?」

大城「15階建だから、一番上の階だよ」

大城さんが覗き込むように

「大河内さん、朝も一緒に行きたいんだけど、ヤダ?」

「いいよ、じゃあ7:50にここで待ち合わせ」と自然と話した。

そして二人はマンションの前で別れる。

マンションから家までの5分程度の距離を歩きながら、明日からの学校生活に期待を膨らませていた。

家について玄関をあける

「ただいま」

奥からお母さんの声が聞こえた。

自然と微笑んでいたのか、

母「何かいい事あったの?」

沙世「えっ 何で?」

母「にやにやしていたから」

沙世「うん。本当の友達が出来そう」

母が近づいてきて笑顔で話しかけてくる。

母「どんな子?」

沙世」「小さくてお人形のように可愛い子で、あそこのマンションの15階に住んでるんだって」と窓から見えるマンションを指さして話した。

母「今度紹介してね?」

沙世「うん」

そしてそのまま部屋に行き、そのままベッドに横たわった。

そして明日からの事を考えながら、自問自答していた。

(理佳ちゃんって呼ぼうかな?すぐに言ったらなれなれしいから、もう少し後にしよう)

(毎日、一緒に通学しようかな?でも毎日では迷惑かな?帰りは理佳ちゃんが誘ってきたら一緒に帰ろう)

そんな事を考えるのが、こんなに楽しいとは思いもしなかった。


そして翌日の朝、マンションの前に少し早く着き、理佳ちゃんを待つ。

マンションから出てきた理佳ちゃんを見て心が躍る。

あっという間に学校に着いた。

その日の授業が終わり、理佳ちゃんの所にクラスの子が話に来ていたので、一人で教室を出る。いつでも追いかけて来れるように、ゆっくりと歩き下駄箱に着く。そして、いつもよりゆっくりと帰り道を歩き始めた。今まで一人で帰っていて何の違和感も孤独感も無かったが、物凄く寂しい。やはり理佳ちゃんが誘ってこなくても一緒に帰ろうかな?と思いながら帰ったのであった。

翌朝、マンションの前に立っていると、理佳ちゃんがマンションから走って私の所にやってきた。

もしかしたら、来ないのでは?と少し思っていたので、彼女が見えた瞬間に安堵感を得る。

心を落ち着かせ冷静に「おはよう」と挨拶をした。

それからは、朝の通学は一緒に行くようになり、2,3日後には、帰りも一緒に帰る様になっていた。

入学して1週間が過ぎる頃、明日から仮入部週間がり、希望の部活を体験入部出来る制度が始まる。その間に気に入った部活に入部届をだすのだ。帰り道

大河内「大城さんは部活決めたの?」

大城「まだ決めてないよ」

大城「私、運動が苦手だから文化部に入ろうかなと思って」

私は吹奏楽部に決めていたので、大城さんを勧誘する。

大河内「じゃあ、一緒に吹奏楽部に入らない?」

すると即答で「うん。入る」と笑顔で回答が返って来た、

あまりの即答と嬉しさから、言葉が詰まる「あっ うん。じゃあ一緒に入ろうか?」

すると

「本当に一緒でいいの?」と伺う様に質問してくる。

「当たり前だよ。大城さんが入らなければ私も入らない」

私は思っていた事をそのまま伝える。

翌日、入部届を持って吹奏楽部が練習している視聴覚室にいったが、そこで仮入部の開始日を1日間違えた事に気づいた。顧問の先生の配慮で特例で2人だけの仮入部を受ける事になった。

部長が私達に話しかける

「では1人づつ1時間半廻って下さい。気になるパートに声を掛ければ15分間の楽器体験が出来るので、それぞれのパート担当者に声を掛けて下さい。」

私たちは返事をしてそれぞれ各パートに向かった。

私は吹奏楽の弦楽器である、コントラバスを訪れる。そしてクラリネット、サックス、パーカッション、フルートの順にパートを廻った。

そして時間が終了して、正式に入部届を提出した。

すると、第三希望まで記載する、希望楽器申請書を渡される。

顧問の先生が私達に話しかける。

「希望楽器を第三希望まで書いてね。仮入部期間が終わる日までに私の所に持って来て。ただし、希望パートになれるか分からないので、楽器は買わないでね。」

顧問の話を聞き、吹奏楽部を後にした。

「私は第一希望の楽器をアルトサックスで2番目がクラリネット、そして3番目にパーカッションと書こうと思うんだけど、大城さんは?」

「私はフルート、クラリネット、オーボエの順にしようかなと思ってるんだ。」

「うん。私も賛成」

「それにしても、大河内さんって、どれも上手くて私感動しちゃった。」

「そんな事ないよ。大城さんこそ、直ぐに楽器に溶け込めている様な感じがしたよ」

「え~そんな事ないよ。ただ、楽器を覚えるのって楽しいなと思いながら吹いていた。」

「だから音が綺麗になるんだね。たった1小節だけなのに音が変わっていくのが、分かったよ」

「大河内さんって、すごいね。自分でさえ音の変化なんか分からなかったのに」

「私は一人で音楽を聴いている事が多いから」

「もしかして、音楽ってクラシック?」

当たり前の様に大河内さんは答える。

「うん」

「えー私なんか歌謡曲ばっかりだよ」

「勿論、たまには聴くよ。でもクラシックを聴いてる方が心が落ち着くんだ。」

「そうか。なんか凄いね。大人みたい。」

なんか遠い距離を思わせる大城さんの言葉を聞き、心が曇る

「ごめんね。絡みづらいよね。」

「ちっ違うよ。かっこいいって意味だよ」

慌てて弁解する大城さんの言葉を復唱する。

「かっこいい?」

「うん。大河内さんって女の私から見てもかっこいいもん」

その言葉を聞き、曇った心が解き放たれる。そして笑顔を向ける大城さんの顔をみて、つい頭を撫でたくなったと同時に自然と頭を撫でていた。そして

「ありがとう」と伝える。

無意識に行った行為に気づき慌てて

「あっごめん。つい頭を撫でっちゃった」

「全然気にしないで。よくそうされているから」

「よく?」

「うん。親にね」

「それで大河内さんは何でアルトサックスにしたの?」

「うん。クラリネット、フルート、サックスは、吹奏楽では結構メインだから、それのどれかにしようかなって思っていて、クラリネット、フルートは大城さんの方が似合うかなって、勝手に想像して、アルトサックスにしたんだ。もし楽器選定で被るのも嫌だったから」

「それで、賛成って言ったんだ。」

「うん」

すると、大城さんが私の腕に両腕を絡ませ、私の顔を見上げながら

「ありがとう」と言ってきた。

あまりに急な行動に、顔が赤くなる事が伝わってくる。私は動揺して、

「ありがとう」と答えてしまった。

すぐにその言葉が今までの会話からずれている事に気づき、訂正しようと思った時

「ありがとうって」と大城さんが笑って言った。

私は苦笑したのであった。

そして2日後の授業が終わり、帰ろうとした時、後ろの大城さんが、

「先生に提出物出すの忘れちゃったから、ちょっと先生にお渡してくるから待ってて」

と言われ、席で待つ

(一緒に行ったのに)と心でつぶやく

すると大城さんの隣の席の岩崎君の所に、他の組の男子が声を掛ける

「岩崎、何にするんだよ楽器」

「実は母親がアルトサックス買ってきちゃって」

「えっ!まじで?」

「うん」

「でもお前上手かったし、大丈夫だろ」

「そうかな?」

「俺はトランペットにする事にしたよ」

「何で?」

「かっこいいじゃん」

「そうだね」

そんな会話が聞こえてきた。

私は、岩崎と大城さんの会話をたまに聞こえてきて、話しかける大城さんの言葉に、いつも「うん」しか言わない岩崎が、どうも好きになれない。

大城さんは何やら助けられた事があるみたいで、岩崎の事を気に掛けているのが分かる。せっかく出来た友達をとられるような感覚を感じる。

相手はいくらおとなしそうな奴でも男だからだ。

なんとか接触する機会を少なくしたい。

(岩崎も吹奏楽部か)と物凄く嫌な気分になった。アルトサックスを買ったと言っていたが、もしアルトサックスのパートが外れたらどうなるんだろう?と考える。

そんな事を考えていると大城さんが教室に戻ってきて、「大河内さん、お待たせ」

と天使の笑顔で話し掛けてきて、今まで考えていた事を忘れる。

「じゃあ帰ろう」

それから本入部まで、私達は吹奏楽部に行かなかった。

そして、本入部の初日

吹奏楽部にきた1年生は15人。その中に男子が2名いた。

男子の中に隣の席の岩崎の姿もあった。

そして吹奏楽の顧問から各パートが発表された。

大城さんはフルートに選ばれた。

そしてサックスパートの発表である。

「今年は2年生のアルトサックスパートをやっていた子が退部してしまったので、2名になります。

「大河内さんと岩崎君」

(えっ)予想外の発表に困惑する。

大城さんは「おめでとう」と笑顔で私に話しかける。

複雑な気持ちで「ありがとう」と返答した。

その帰り道では、ついつい愚痴を爆発してしまった

「ありえないよね」

「うん」

「なんで岩崎もアルトサックスなんだろう。本当に意味が分からないよね」

「うん」

怒りが抑えられなくなるのが分かり、しばらく愚痴をやめると、大城さんから

「二人で仲良く出来るといいね?」と信じられない言葉が聞こえた。

私の怒りが再燃した。

「私、岩崎が死ぬほど嫌い」

「死ぬほどって?」

「とにかく嫌い。ああいう奴は」

「そんなに嫌いなの?」

「うん。大っ嫌い」

「そっか」

「どう考えても、私一人でいいよね?」

「うん」

「あの顧問って、見る目が無いのかな?」

「うん」とだけ答える。

大城さんは私の愚痴を黙って聞いてくれた。マンションが近づき、今まで愚痴っていた事を反省し大城さんに話しかける

「ごめんね。愚痴っちゃって」

「うん。大丈夫だよ。大河内さんの愚痴を聞いてあげられてよかった。」

私の嫌なところも、大城さんは受け止めてくれる大城さんの優しさを感じた瞬間であった。

私は絶対にこの子を岩崎に近づけないと決心した瞬間でもあった。

そして、いつまでも一緒にいたいと思った瞬間でもあった。

「理佳ちゃん」

「なあに?」

「いつまでも友達でいようね」

「うん。沙世ちゃんも嫌わないでね」と笑顔で答えてきた。

「約束だよ」

「うん、約束」と満面の笑みをして、家に帰っていった。


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