蝕み
翌朝、体調が優れない
布団から出ようとするが、力が入らない。
その姿を見た理佳が
「俊、大丈夫?」
「うん」
「ねえ、病院行こう?」
「うん。行って来ようかな?痛み止めくれるかな?理佳は会社行っていいよ。一人で行けるから」
「ダメ、一緒に行く」
多分その回答が来るかなと思っていたので、
「分かった、ごめんね」
会話が終わり、少しの間眠りに入る。
しばらく寝て目を開けると、時計が9時を指していた。
たまたま休みだった、理佳の父が車で送ってくれる事になっていた、
玄関のチャイムが鳴る。理佳の父である。
「大丈夫か?迎えに来たぞ」
急いで玄関に向かい家を出た。
病院に到着し院長の診察を待つ。
30分程待ち名前を呼ばれ診察室に入る。
通常、こんなに早く呼ばれる事は無いのだが、これも伊豆で出会った中島先生のおかげであった。
診察室に入ると林先生が深刻な顔をして話し始めた。
「痛みが強くなってきたので、検査兼ねて入院しますか?」
「入院はどのくらいの期間になりますか?」
「う~ん、1,2週間ぐらいかな」
「実は2か月後に結婚式があって、演奏しないといけなんです。」
「何を演奏するの?」
「サックスを吹くんですが・・・」
「サックス?この状態で吹ける?」
「何とか1曲だけなら」
林先生が困った顔をして考える。
「医者として決していいとは言えないが・・・」
また考え込む
横にいた理佳が話し始める
「先生。本当にすいません。1曲だけですので、お願いします。」
「実は、胸水も貯まり、呼吸が苦しくなっている状態。今の医療では抜かないのが主流なのだが・・・・」
さらに考えた後
「では、今回の検査入院が終わったら、一旦家に帰って、結婚式の前にもう一度入院して、状態をみて胸水を抜きましょう。それでも決して楽にはならないけど、今の状態でサックスを吹くよりはいいでしょう」
俊「ありがとうございます。」
「それと食事は取れていますか?」
「あまり食欲が進まなくて、食べてはいるのですが、たまに嘔吐してしまいます。」
「では栄養のコントロールも、この入院でしましょう」
理佳「ありがとうございます」
「なんだか君たちを見ていると、中島がどうにかしたい気持ちが分からなくも無いな」
と困った顔をして言った。
理佳の父「まったくです」
皆が笑う。
そして入院となった、
入院時検査を一通り終え、病室に入る
理佳の父「じゃあ帰るよ。」
「ありがとうございました。」
理佳「駐車場まで一緒に行くよ。水買いに行くから」
と言い二人は病室を出た。
駐車場の車まで父と一緒に歩く、父が車に乗り理佳に話しかける
「今日、帰り家に来るか?夕ご飯でも一緒に食べよう」
理佳「そうだね、たまには帰り寄っていくね」
と話し、家に帰って行った。
そして病院の売店につくと、水と雑誌を買い病室に向う。
そして病棟に行くエレベーターを待っていると後ろから声がする。
「理佳ちゃん」
振り向くと加藤がそこにいた。
理佳は、今回の入院した事だけ告げると、エレベーターの到着した事を伝えるチャイムが鳴る。
細かい話をする前に慌ててエレベーターに乗り込む。
エレベーターの扉が閉まる直前。
「時間みて病室に遊びに行くよ。言っといて!」
そう言って仕事に戻る。
病室に戻り、加藤に会ったことを伝える。
入院時の検査は、体を動かす事が多く、どうしても疲れが出てしまう。
理佳の話も、上の空で聞いてしまう。
理佳も察したのか
「今日は疲れたでしょうから、早めに帰るね」
と笑顔で言った。
「ごめん、今日はちょっと疲れちゃったから、俺も寝るね」
「わかった、じゃあね」
理佳は、病室を後にした。
疲れが溜まっていたのか、理佳が病室を出てから数分で寝てしまった。




