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神様へのプレゼント  作者: 鈴月桜
第7章 新婚
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新婚旅行

皆を見送り家に入る。朱莉が洗い物等をしてくれたおかげで、ソファーで落ち着く。

俊「本当に大学に入って良かった。hopeの仲間も出来たし、そして何より理佳と再会出来た。こんな病気になって、理佳には本当に申し訳ないと思ってる。ただ、残り少ない人生を理佳と共に生きて行けるのは、本当に俺は幸せだなと思う。

理佳、愛してるよ」

「俊、私も愛してる」

そして、二人は床に就く。


次の日の朝、昨日は何だかんだと忙しく、疲れていたのか遅く起きた。

理佳「あっ!今日伊豆に行くんだ。」と言って、慌てて起きる。

そして俊も起き上がり、理佳を後ろから抱擁して、「おはよう」と理佳の体を反転させ、軽くキスをする。

理佳「おはよう。俊も用意しないと」

と言って旅行の準備をする。

慌てて準備をしてアパートを出る。

二人の新婚旅行が始まった。


今日は、ホテルまでのんびりと電車に揺られて行く事にした。

朝ご飯も食べていなかったが、駅弁を食べて行きたかったので、我慢して電車に乗り込む。

熱海まではJRで行き、熱海からは踊り子号に乗って下田まで向かう事にした。

俊「以外と早く行けるんだね」

理佳「半日くらい掛かるのかと思ったけど、早いね。」

俊「熱海で駅弁買おうか?」

理佳「うん」

二人は熱海まで向う。途中から座れたので、景色を眺めながら電車に揺られる。

昨日の事等を話していると、あっという間に熱海に着く。

踊り子号が出発するまで、駅弁を買いに売店に行く。

金目鯛の入った弁当が目に入り、二人とも同じ弁当を購入した。

踊り子号のホームのベンチで、電車が来るのを待つことにした。

まだ10分程あるので、俊がトイレに行く。理佳はベンチに座り俊を待つ。


携帯を取り出すと、朱莉からLINEが入っていた。

[緊急速報!理佳が望めば子作り考えるって、岩崎君が言ってたみたいだよ。理佳には内緒だって言ってたみたいだから、知らない振りしてね。

では良い旅を]

エッ本当に、理佳は心の中で聞き返した。

何度もLINEの内容を読み返す。

自然と笑みが溢れる。

すると、俊が戻って来て

「どうしたの?」

理佳「何が」

俊「何か顔がニヤついているみたいだから」

理佳「朱莉から旅行を楽しんでとLINEが来たから」

俊「なんだって?」

理佳「ナイショ」

と笑みを浮かべた。


電車が到着し、座席に座り買ってきた弁当を開ける。

理佳「美味しい」

俊「本当だ美味しい。電車で景色を観ながら食べると余計美味しさが増すね。」

理佳が何かを言わそうと

「景色だけ?」

と聞いてきた。

何の事か分からず「うん」と答えると、理佳が

「私は景色もそうだけど、俊と食べると美味しさが増すよ」

と、ちょっと不機嫌そうに話す。

慌てて「俺も」と修正した。

理佳「じゃあ許してあげる。」

と和気藹々と会話が弾む。


駅弁も食べ終わり景色を観ながら、行く時に買った伊豆の情報誌を2人で見て、明日の予定を考える。

まだ、予定が決まる前に電車が下田の駅に到着した。

チェックインは、3時なので、まだ1時間以上ある。下田駅周辺で観光出来る場所を探す。

駅を降りると時計台が目に入り、街の景観を際立たせる、下田の街を歩いて行くとレトロ調の街並みが続き、何処か懐かしい雰囲気の街並みに旅行に来た実感を感じる。


街の中に足湯があり、2人で足湯につかる。

理佳「この街並みを観ながら足湯につかると、なんか旅行に来たって感じでいいね。」

俊「うん」

時間に追われる都会と違い、ここでの時間は、ゆっくり流れている錯覚を起こす程、心も癒される。

あっという間に1時間が過ぎ、駅に戻り、泊まるホテルの送迎バスに乗る。

ホテルに着き、ロビーでチェックインをして、部屋に案内される。

部屋に着くと荷物を降ろし、海が一望出来るベランダに出る。

理佳「うわー綺麗」

と、その景色を観てはしゃぐ。

駅のレトロな景観、そして自然が作り出す景色と、普段感じない美しさに感動さえ覚える。

しばらく海を眺めて、二人は浴衣に着替え、早速温泉に入りに行く。


お風呂は男女共同じ階にある。先に出たら、近くにあるゲームセンターで待ち合わせをする事にした。

俊「俺、温泉は長風呂だから、待たせたらごめんね。」

と理佳に伝える。


理佳は女風呂に入ると、大浴場、露天風呂、打たせ湯、サウナと色々な種類のお風呂があり、俊も長湯と言っていたので、全種類のお風呂を満喫した。

お風呂を出て、浴衣に着替え、備え付けてある、ドライヤーで髪の毛を乾かす。

ちょっと長過ぎたかなと思いながら、女風呂を後にし、ゲームセンターに向う。

ゲームセンターに俊は来ておらず、ゲームセンター近くの椅子に座り俊を待とうとした瞬間、辺りが騒がしくなる。

ゲームセンターの前を担架を持った救急隊が横切って、ホテルの従業員の指示を受け、男子風呂の中に入って行った。

エッ俊?

ゲームセンターを飛び出し、男子風呂の入口に向う。

駆けつけた客が

「なんか意識が無く、危ないらしいよ。」と噂をする。

しばらくすると、救急隊が男子風呂から、患者を担架に乗せ出て来た。

理佳「俊」

と救急隊に向かって駆け寄った。


救急隊の担架に乗っている患者を覗き込む。

俊では無かった。

ホッと胸を撫で下ろす。

すると、浴衣に帯を体に回しながら、いかにも慌てて出て来たのが分かる客が男子風呂から出て来た。

俊である

俊を見つけ、極度の不安から開放され、涙が自然と溢れ出す。

俊が理佳の元に駆け寄り、涙を流す理佳を近くのベンチに座らせる。

俊「多分理佳が心配してるんじゃ無いかと思って、急いで出て来ちゃった。」

理佳「頭が真っ白になっちゃって、足はガタガタ震えるし、どうしたらいいか分からなくて、震える足で担架で運ばれている人を覗きこんで、俊では無かった事を確認した時に、俊を見た途端、涙が止まらなくなっちゃった。ごめんね。」

俊は理佳の肩を引き寄せ、胸に顔を埋めさせ、しばらくその体制で落ち着くまで時を過ごした。


大分落ち着いて来たので、部屋に戻る。

部屋に戻り、夕食までのんびり部屋で過ごす。そして指定した夕食の時間となり、指定された場所に足を運ぶ。

夕食はバイキング形式となっており、大きな会場も賑わい、家族連れが多いせいか子供の声が会場に響きわたる。

二人は料理を取りに向い、海産物を中心に料理を乗せ、テーブルに戻ろうとした時、俊に子供がぶつかって来た。その子供の母親であろう女性が、「すいません。」と謝罪して、子供を叱る。

この姿を見た理佳は、思わず笑う。


テーブルに着き

俊「何、笑ってるの?」

理佳「昨日のコンビニで朱莉の子供が同じ事してた。あまりにも同じシチュエーションだったから、笑っちゃった。」

俊「昨日、飲み物買いに行った時か」

理佳「うん。それにしても子供って可愛いね。」

俊「うん」

理佳は持ってきた料理を食べ終え、デザートを取りに席を立つ。

料理を残している俊に向かって

理佳「俊、もう食べ無いの?」

俊「なんか、ちょっと疲れてお腹が空かないんだ。理佳、遠慮しないで、デザート持ってくれば」

理佳「うん」

理佳がデザートを食べ終わり、賑やかな会場を後にする。

ホテルの庭には、噴水があり、そこを囲む様にベンチがあり二人は腰を下ろした。


夜になるといくらか冷えるが、食事を食べて暖かくなった身体には調度いい気温であった。

理佳「俊?」

俊「何?」

少し間を置き

理佳「私、子供が欲しい。」

俊「俺が死んでからの理佳と子供が心配」

理佳「私の愛する男性は今もこれからも俊ただ一人。俊と私の子供が生まれれば、どんな事が起ころうとも大変とは思わない。それに私達が共に生きた証になるんだから。」

理佳の熱意に押され

俊「分かった。俺は子供を見れないけど、絶対に近くで理佳達を見守ってるから。」

理佳「うん」

俊「ちょっと冷えて来たから、もう一風呂浴びて来ようか?」

理佳「あまり長湯しないでね。」

俊「分かった」

二人は一度部屋に戻り、再度温泉に浸かりに行った。

そして、温泉で暖かくなった二人は部屋に入り、電気を消す。

俊「本当にいいの?」

理佳「うん」

二人の間には何も遮るものが無く、体が一つになる。

愛の育みが終わると、二人は眠りについた。


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